お風呂上りには赤ちゃんに湯冷ましを飲ませてあげなさい。おばあちゃんにそういわれたことのあるお母さんはいっぱいいいらっしゃるのではないでしょうか。
一方、最近の助産院では、湯冷ましは飲ませる必要はないという指導が主流です。夏場、いっぱい汗をかく赤ちゃんを見て、喉が渇いていないかと心配になることがあります。
いったい、湯冷ましは赤ちゃんにとって必要なのでしょうか?今回は、一昔前の「湯冷まし必要説」と、最近の「湯冷まし不要説」の根拠を整理し、また、体に優しい水の作り方についてもご紹介します。
赤ちゃんに湯冷ましって必要なの?
一昔前の「湯冷まし必要説」
1970年代は、粉ミルクでの育児が広がって、母乳育児が減った時期でした。この頃、湯上りや暑い時期などには、ミルクのほかに湯冷ましを飲ませるよう保健指導されていました。それには昔ならではの事情がありました。
昔のミルクは、タンパク質やミネラルが濃かったために、それを薄める必要があると考えられました。そのためお風呂上りなど喉の渇きそうなタイミングで、湯冷ましを飲ませるよう指導されたのです。
これは粉ミルクの栄養が偏っているために行われていたのですが、母乳の場合でも混同されて行われることもありました。
おばあちゃんの世代は、この指導に従って、毎日赤ちゃんに湯冷ましを飲ませていました。そんなおばあちゃんから見ると、ミルク以外に水分を摂るのは自然なことで、湯冷ましを飲まない赤ちゃんは水分が不足していないかと心配になるかもしれません。
最近の「湯冷まし不要説」
一方、現在は、湯冷ましは特に必要がないと指導されています。その理由は、ミルクの進歩です。
現在のミルクには昔と違いタンパク質やミネラルの濃度は母乳に近くなっており、消化もよくなっていて、湯冷ましをあげて薄める必要はなくなりました。
また、赤ちゃんの1日に必要な水分は、体重1kgあたりに150ml程度で、母乳やミルクだけで摂取が可能と言われています。かえって、余分な水分を摂ることで、ミルクや母乳などを飲めなくなることも懸念されています。
湯冷ましはいつ飲ませるの?
乳児期には、基本的に湯冷ましは必要ありませんが、赤ちゃんが汗をかきすぎて水分不足が心配な時もあります。
そんな時は、母乳の赤ちゃんなら、母乳をあげてよいと思います。ミルクの赤ちゃんなら、ミルクの間隔が短すぎると消化器官に負担になってしまいますので、その間に喉が渇くようなことがあれば、湯冷ましをあげてもよいでしょう。
ただ、水の摂り過ぎは、胃液が薄まって消化を妨げたり、腎臓にも負担がかかります。目安としては、一回に月齢×10ml程度にしましょう。
スプーンでも哺乳瓶でも、赤ちゃんが飲みやすい形で与えてあげます。赤ちゃんが飲まないようであれば、無理に与える必要はありません。
湯冷ましの正しい作り方~塩素を除去する方法~
乳児期に飲ませるためでなくても、離乳期に飲む水や、ミルクや麦茶を作る際、体に優しい水を使ってあげたいものです。
湯冷ましとは、水をいったん沸騰させて冷ましたものです。体に優しいイメージがありますが、作り方によってはかえって体に害を及ぼすおそれもあるため注意が必要です。
水道水で作る湯冷ましの注意点
井戸水を使用していた時代は、生水には雑菌がいるので、煮沸によって殺菌した湯冷ましが体に優しいとされていました。
現代は、水道水を使っています。水道水には殺菌作用のある塩素が入っているので、殺菌のために煮沸する必要はありません。
ただし、塩素そのものが人体に有害で、皮膚アレルギーやぜんそく、血管障害などを引き起こす危険性があるといわれています。
日本の水道水の塩素濃度は高めで、外国の数倍~数10倍になることがあります。水道水においては、この塩素を除去することが体に優しい水づくりと言えます。
水道水の塩素を抜くために、煮沸するのも一つの手段ですが、その場合、10分以上は沸騰させなくてはなりません。水道水を沸騰させて5分くらいの間は、中の塩素がトリハロメタンという有害物質に変わってしまいかえって危険です。
このトリハロメタンを気化させるためには長時間の沸騰が必要なのです。電気ポットは、繰り返し煮沸をすることで、トリハロメタンが除去されます。
水道水の塩素の除去方法
水道水の塩素は、煮沸以外でも除去することができます。
- 汲み置きする(室内では2日間、屋外で日光に当てる場合は6時間)
- ビタミンCを微量加える
- 活性炭に通す (浄水器)
水道水を汲み置いて空気にさらすだけで、塩素は自然に気化します。この時、日光に当てることで気化を早めることができます。
また、水道水1リットルにつき、ビタミンCを2~3滴加えると、すぐに塩素が中和されます。ビタミンCはみかん果汁や、市販されているレモン濃縮果汁などでOKです。
家庭用浄水器では、活性炭に通すことで、水中の塩素やトリハロメタンなどを吸着し、除去しています。ただし、吸着量には限界があるため、交換時期を超えて使用していると、吸着したトリハロメタンが流れ出て、通常より高い濃度となることもあるのでご注意ください。
塩素が除去された水は雑菌が繁殖してきますので、早めに使い切るか、一度沸騰させて湯冷ましにすれば安心です。飲み水以外でも、お風呂の水の塩素も、赤ちゃんの皮膚に影響が心配されるなら、ビタミンCなどを加えて中和するのがお勧めです。
まとめ
お風呂上りなどに湯冷ましを飲ませることは、現在のミルクの品質からいって特に必要はありません。赤ちゃんの摂取する水分は、母乳やミルクに含まれる水分で基本的には足りています。
水分不足が心配な時には、一回に月齢×10ml程度を目安に与えてあげましょう。
水道水においては、湯冷ましの作り方にも注意が必要です。体に優しい水を赤ちゃんに使ってあげられるよう、この記事が参考になれば幸いです。
TOPICS:赤ちゃんに水道水でミルクや離乳食作りをすることによる影響と対策