「夫からの言動や行動に不満を持っている」「耐えられない仕打ちを受けている」といった場合、あなたの夫はDV夫かもしれません。
DVと一口に言ってもその種類はいくつかに分けることができます。そんなDVの内容とDV夫の特徴や心理をご紹介いたします。
またDVが被害者に与える影響や、逃げられない心理も併せて解説していきます。
DVとは?
DVとはドメスティック・バイオレンス(domestic violence)の略で、日本語に訳すと「家庭内暴力」を意味します。家庭内というと夫婦間を指すイメージですが、結婚していないカップルなど近しい間柄にも当てはめることができます。
もちろんDVは夫からだけでなく、妻や義父母、元配偶者や恋人などから受ける場合もあります。しかし今回は「DV夫」に焦点を当ててご説明していきたいと思います。
DVは認知されにくいのが現状
内閣府の男女共同参画局の調査によると、配偶者からの暴力についての相談は年々増えており、2014年には102,963件もの相談が寄せられています。
しかし警察が把握している配偶者からの暴力事案などの認知件数は59,072件。夫婦間の争い事は「家庭内の揉め事、喧嘩」で済まされてしまうケースも多いのです。
そもそもDVの被害者が「DVを受けている」という認識がないケースも少なくありません。そんな認知されにくいDVだからこそ、より多くの人がDVに関する正しい知識を身につける必要があるのです。
DVには種類がある
DVというと「暴力」という言葉から連想するように、身体的に暴力を受ける場合を想像しがちです。もちろん身体的暴力もDVに当てはまりますが、他にもさまざまな種類のDVが存在するのです。
「経済的暴力」「社会的隔離」「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」が主な項目です。それでは細かい内容についてご説明していきます。
DVの中でも、家計を同一にする夫婦に起こりがちなのが経済的暴力です。妻に家計をにぎらせず、少しの生活費しか与えなかったり、無許可で収入に合わない豪遊をするといった場合には「経済的暴力=経済的DV」とみなされます。
社会的隔離とは、妻を他の人間から孤立させるDVです。加害者側も被害者側も「これがDVだ」と気付いていないパターンも多いので、ドキッとした方もいらっしゃるかもしれません。
例えば友人と遊びに行かせない、実家へ帰らせないなど妻の行動を理不尽に制限するのは立派なDVです。「専業主婦は家から出る理由がない!」などと外出を制限される場合も社会的DVを受けていることになるのです。
みなさんが想像する代表的なDVが「身体的虐待=身体的DV」です。妻を殴る、蹴るなど直接暴力行為を働く場合ももちろん身体的DVに当てはまります。
しかし暴力だけでなく、治療しなければならないのに病院へ行かせない、食べ物を満足に与えない、寒いのに暖房をつけさせないなども身体的DVとして認められます。妻の健康を保つ最低限以上の生活を与えることも、夫としての義務であるといえるのです。
心理的虐待は、モラルハラスメント(精神的暴力)にも当てはまる部分があります。終始行動を監視したり、妻の尊厳を貶めるような発言をするのが特徴です。
本来平等であるはずの夫婦なのに、夫の言動により妻の立場が極端に低い状態になってしまうのです。また男であることを武器に「お前なんか本気出せば一瞬で殺せる」などと脅すような発言をすることも、心理的虐待にあたります。
露呈しづらくて精神的負担も大きいのが性的虐待です。夫婦は婚姻関係にある以上、性行為を行う権利があります。しかし妻が嫌がっているにもかかわらずセックスを強要するのは性的なDVとなるのです。
他にも故意に避妊をしない、過激な性的趣向を強要するなども性的虐待とみなされます。
DV夫の特徴とは?
さまざまな種類があるDVですが、2章ではDV夫の具体的な行動や言動を見ていきましょう。種類別に、DV夫にありがちな特徴や行動をまとめました。当てはまる項目が多い場合は、DV夫である可能性が高いと言えます。
当てはまったら要注意!DV夫の特徴や行動チェック
- 妻名義の通帳や印鑑を取り上げる
- 妻の給料を夫が完全に管理して渡さない
- 夫の収入を妻に明かさない
- 妻の美容院や化粧品、衣類などにお金を出さない
- 仕事をさせない、もしくは制限する
- 無理やり指定した職場で働かせる
- 夫の個人的な趣味やギャンブルにお金をつぎ込む
- 生活費を勝手に持ち出す
- 収入に合わない買い物や借金を繰り返す
- 友人の連絡先を勝手に消去する、または威圧して消去させる
- 手紙や届いた荷物を勝手に捨てる
- 実家に帰らせない
- 化粧をさせない
- 友人と会わせないようにする
- 外出をさせない
- 婚前からの趣味などを制限する
- スマホやPCを持たせない
- スマホのGPS機能で監視する
- 妻を直接殴る、蹴るなどする
- 物を投げて壊す
- 必要な範囲であるにもかかわらず病院や歯医者などに行かせない
- 食事を満足にとらせない
- 偏った食生活を強要する
- 冬でも暖房をつけさせない、夏も冷房を禁止する
- 冬でも上着を着させない
- わざと家を汚して掃除を強要する
- スマホの履歴やLINEの内容を当然のようにチェックする
- 相手を貶めるようなあだ名(ブス、無能など)で呼び続ける
- 他人の前で妻を激しく罵倒する
- 「これをしないと殺すぞ」などと脅す
- 「自殺してやる」と脅して従わせる
- 「子供に手をあげるぞ」などと脅す
- 急に声を荒げたり大声を出したりする
- 夫側の親族や友人に妻の悪口や名誉を貶めるような嘘を広める
- 日常的に悪口を言い続ける
- 長時間に渡って妻を罵倒し続ける
- 「お前と結婚した俺がバカだったよ」「お前なんかと結婚できるのは俺くらい」などと言う
- 殴ったり蹴ったり物を投げたりするフリをして脅す
- 扉を勢い良く閉めて見せたり机を蹴ったりする
- 夫のミスや関係のないことなどもすべて妻のせいにする
- 「妻をしつけている」という理由でDV行為をする
- 避妊に協力しない
- 嫌がっているにもかかわらず性行為を強要する
- 無理やり中絶させる
- 異常な回数の性行為を強要する
- アブノーマルな性行為を強要する
- 裸でいることを強要される
- 「女は家で家族を支えるべきだ」と思っている
- 「専業主婦は甘えだ」と思っている
- 「結婚したら女はおしゃれの必要がない」と思っている
- 「家族で1番偉いのは夫であり父親である自分だ」と思っている
- 男尊女卑の傾向にある
- 妻のことを「愚妻」という
- DV行為をしつけのため、愛情があるからだという
- 「妻が夫に反抗的な態度をとることは許されない」と思っている
- 外国人妻に日本語を学ばせない
- 海外赴任妻に赴任先の言葉を学ばせない
- 妻側の実家や友人の悪口を言う
- 酒や麻薬などを強要する
- 過去に虐待経験があるなどの話で同情を引こうとする
- 平気で嘘をつく
- 「離婚してもお前が子供の親権を取れるわけがない」と脅す
- 「お前は俺なしでは生きていけない」という
- 平気で浮気をする
- 浮気や借金すらも妻のせいにする
- 妻に拒否されたり冷たくされたりするのを極端に恐れる、嫌がる
DV夫がDVをする原因や心理って?
さまざまな特徴が見られるDV夫ですが、DVをするに至った原因や心理とはどのようなものなのでしょうか。
アルコール依存や薬物依存が見られる
DV加害者はアルコール依存や薬物依存が見られるケースも少なくありません。アルコールや薬物のせいにして妻に対し理不尽な暴力を行っているのです。
過去にDVの被害者や目撃者であった人
過去にDVを目の当たりにしている男性は、その後DV夫になる可能性もあります。もちろん反面教師で「DVだけは絶対にしない」と考えている方もいらっしゃいます。DV夫は過去を言い訳に自分のストレスを発散しているに過ぎないのです。
ただし過去にDVを目撃している場合、「物事を暴力で解決する」という選択肢を持ってしまう可能性があることも否めないのです。また過去の話をして妻の同情を買いDV行為を正当化する場合もあります。
自分は優遇されて当然だと考えている
夫が妻に理不尽な要求やDVをする場合、相手を思いやる気持ちが全く見られないケースが多く見られます。
彼らは妻が自分の要求を満たすための駒にしか見えていないのです。そのため相手の気持ちや不便を考えずに理不尽な要求をすることができるのです。
理想の家庭を作るためには当然の行為だと考えている
DVを自覚しない夫の場合、DV行為を「理想の家庭を作るために仕方なくやった」「妻が自分の要求を満たせないのが悪い」と考えていることがあります。「妻が至らないために愛情を持ってしつけているのだ」と主張するのです。
DV被害者の心理と逃げられない原因
DVを受けているにもかかわらず、長い間その環境から抜け出せずにいる方は少なくありません。そこにはDV被害者にしか分からない心理と、逃げられない原因があるのです。そこでそんなDV被害者の心理と逃げられない原因をいくつかご紹介いたします。
恐怖によって支配されている
DV被害者に「なぜ逃げなかったのか」と聞くと「逃げたら殺されると思った」「逆らえばもっとひどいことをされるので、おとなしく従っているしかなかった」という答えが返ってくることがあります。
これは夫が恐怖によって妻を支配していたために、正常な判断よりも恐怖心が勝って行動できなかったものと考えられます。
DVが愛情によるものだと思っている
DV被害者は精神的なストレスを受け続けているうちに、「夫は自分のためにムチをふるっているのだ」「悪いのは自分だ」と考えるようになります。
夫が繰り返し「お前のためにやっているんだ」「好きじゃなかったらこんなことをしない」などと言い続けることによって、理不尽な要求や行動も全て愛情で片付けられてしまうようになるのです。
この場合被害者側が「DVを受けている」という自覚がなく、周りがいくら説得しても別れようとはしないというのも特徴のひとつです。
それどころか、周りから反対にあえばあうほど「あの人は本当は優しいのに、私しか分かってあげられない」と燃え上がってしまうこともあるのです。一種の現実逃避に入っている状態です。
逃げられない環境に置かれている
妻側に実家がない、頼れる友人がいない、お金もケータイも持っていないなど、DV被害者は外部と隔離された環境に置かれている場合が少なくありません。そのため「逃げてもどうすることもできない」「逃げ方が分からない」という心理で行動することが出来ないのです。
逃げても経済的に生活していけないと思っている
妻側が被害者の場合、経済的な不安から逃げ出せないと考えていることもあります。「夫が家計を握っていて手が出せない」「長いこと仕事をさせてもらえていないので1人でやっていける自信がない」「逃げ出す際に必要な最低限のお金もない」というのが主な原因です。
子供の学校や生活を気にしてしまうことも
子供がいるというのも、DV夫との別れに踏み切れない大きな理由のひとつになっている場合があります。子供にまで被害が及ぶのではないか、受験や進学の妨げになるのではという思いもあるのです。
子供が学校に通っている場合は転校などの手続きにも時間がかかってしまい、二の足を踏んでいるケースもあります。
DVが被害者に与える影響とは?
DV夫が家族に与える影響は甚大です。そのためDV夫から逃れた後も深刻な後遺症に悩まされる方は多いのです。そんなDVが被害者に与える影響の具体例をいくつかご紹介いたします。
PSTD(心的外傷後ストレス障害)
繰り返されるDVにより大きなストレスを受けると、 PSTDというストレス障害になってしまうこともあります。これはたとえDV夫から逃げられたとしても簡単に治るものではありません。カウンセリングなど長期的なケアが必要になります。
男性恐怖症
DV夫は「男であること」を武器に女性を従えようとする傾向にあります。そのためDV被害者の中には男性自体に恐怖を感じるようになる方もいらっしゃいます。
また自分に向けてでなかったとしても、男性の怒鳴り声に恐怖を感じてしまったり、性的行為ができなくなってしまったケースもあるのです。
自信喪失や自責的な面が見られる
長年にわたって虐げられると、自己評価が極端に低くなってしまうことがあります。そのため自殺願望、リストカット、他者と正常な人間関係を構築できないなどの行動が見られるのです。
小さなミスが許せなくなる
夫にDVを受けて小さなミスを指摘され続けると、「完璧でなければならない」という固定観念を持ってしまうこともあります。
自分の行動や言動に逐一神経質になってしまったり、他人にも同じレベルを求めてしまったりするのです。幼少期にDVを受けた人の中には、こうした心理から妻や夫に同じようなDVを働いてしまう危険性もあります。
まとめ
DVは被害者や加害者が「これはDVだ」と認識できない限り被害を止めることができません。DV夫の特徴や心理、DV被害者が逃げられない心理を客観的に見つめることで、DVを認識するきっかけになるかもしれません。
これってDVかも?と思ったら「第三者に相談してみる」「DVに関しての知識をしっかり持つ」ことが大切です。被害を大きくしないためにも、早めの対策が肝心です。