三月三日は雛祭り、女の子の健やかな成長を祈ってお祝いする節句の行事です。一年に一回の大切な行事ですから家族みんなで楽しくお祝いしたいものです。
でも一年に一回だからこそ、飾り方の決まりを忘れてしまったり、住宅環境が変わって去年と同じ場所に飾る事ができなくて困っている方もいるのではないでしょうか?
飾り方の決まりと書きましたが難しい事はありません。雛人形の特徴や由来が分かれば、お子さんと一緒に楽しく飾りつけする事ができますし、日本の風習を学ぶ良いきっかけにもなります。
今年の雛祭りは、飾りつけから家族みんなで楽しんで始めてみてはいかがでしょうか。
雛人形の飾り方って何か決まりがあるの?
飾り方としては、まず土台を組み立ててから人形と小物を飾っていきます。人形の飾り方には、位置や持たせる小物に決まりがあります。その細かい決まり、ご存じでしょうか?
小道具が多い雛人形、とくに三人官女(さんにんかんじょ)や五人囃子(ごにんばやし)などパッと見では、誰を何処に置いて何を持たせるのか分からない方が多いはずです。
実はよく見てみると表情や体の構え方が微妙の違うのですが、慌ただしく飾りつけしている中ではその特徴になかなか気づかないものです。今回はその特徴を挙げ、各々に持たせるものと飾る位置を解説していきます。
飾り台を作る
まず土台となる飾り台から組み立てていきます。
- 側板と言われる土台の両側面の板二枚を出し、渡し棒を付けます。※一本目の渡し棒を固定するねじは緩めにして、全部つけ終わったらしっかりと固定するとよいです。
- すべての渡し棒が固定できたら、飾り台の一番下段の前面にあたる幕板を置きます。
- 下段から順番に天板を乗せていきます。
- 天板をすべて乗せたら最後に一番上の段に屏風を乗せます。
これで飾り台は完成です。次に人形を飾っていきましょう。
一番上の親王と呼ばれる場所にお雛様とお内裏(おだいり)様を飾ります。親王から下段に向かって人形を飾っていきましょう。
一段目:お雛様とお内裏様
一般的には向かって左側がお内裏様、右にお雛様様を置きます。結婚式の新郎新婦と同じ立ち位置と覚えておけばいいでしょう。
お内裏様には烏帽子(烏帽子の後ろにおさを指すのを忘れずに)と杓(しゃく)と刀を持たせます。お雛様には扇を持たせます。
二段目:三人官女
三人官女はお雛様とお内裏様に仕えてお世話をする侍女です。
- 向かって左には右足を前に出し口を開いている官女を置き「銚子(やかんのようなもの)」を持たせます。
- 真ん中は座っていて眉毛のない官女を置き「島台(または三宝)」を持たせます。
- 向かって右には左足を前に出し口を結んでいる官女を置き「柄の長い銚子」を持たせます。
三段目:五人囃子
能楽や囃子を披露するために楽器をもっているのです。元気な子に育つようにと応援してくれているとも言われています。向かって左から、下記のように置きます。
- 一番目は置き太鼓(バチを持っている者)
- 二番目は大太鼓(胸の前あたりで太鼓を持っている者)
- 三番目は小太鼓(肩に太鼓を担いでいる者)
- 四番目は笛
- 五番目は謡(楽器を持たずに口を開けて歌っている者)
口を基準に音が鳴る位置が低いものから、向かって左に置くと考えます。
置き太鼓→大太鼓(膝)→小太鼓(肩)→笛(顔前)→謡(口)
よく見ると太鼓の三人は笛と謡の二人と服装が違い、一番上の上着を着ていないんです。
四段目:隋臣
お雛様とお内裏様に悪者が近づかないように守ってくれます。向かって左から、下記のように置きます。
- 向かって左にはひげのない右大臣
- 向かって右にはひげのある左大臣
ややこしいですが、ひげのある方が左と覚えるといいでしょう。
五段目:仕丁(じちょう)
御所の雑用や掃除をしてくれる三人です。それぞれの表情は泣き上戸・怒り上戸・笑い上戸で、表情豊かな子に育つようという願いが込められています。向かって左から、下記のように置きます。
- 泣き上戸には台傘(先が丸い傘、日傘の事。地方によっては「熊手」を持っている場合もあります)
- 怒り上戸には沓(くつ)台(地方によっては「ちりとり」を持っている場合もあります)
- 笑い上戸には立傘(先が尖った傘、雨傘の事。地方によっては「ほうき」を持っている場合もあります)
六段と七段目:道具など
道具には配置する順番の決まりはないようです。上の段にはお化粧道具やたんすなど比較的細かいものを、下の段には籠や御所車など大きなものを置くと調和がとれて見栄えが良いです。
その他:桜と橘
段数の多少に関わらず桜と橘が備わっているものが多いです。桜はお雛様と同じで左に、橘はお内裏様の右側に置きましょう。最後に親王に雪洞(ぼんぼり)を灯して完成です。
文章ではどうしてもイメージし辛いという方には動画による解説がおすすめです。
三段飾りですが、音声による解説付きで分かりやすいです。4分25秒あたりから仕舞い方の解説も始まりますので、そちらも参考にしてみて下さい。
雛人形を飾る場所でおすすめは?
いざ雛人形を飾るとなると何処に飾れば良いのかピンとこない方も多いはず。小さなお子さんの安全面・雛人形を傷めないためには…などなど考えるべき要素が多くて迷ってしまいます。
雛人形は家族の目につきやすい明るい場所に飾るのが良いとされています。一年の内雛祭りの期間しか箱の外に出られないのですから、いい場所を選んであげたいものです。
場所選びの要素
これと言った決まりはないですが、神棚は南向きか東向きに飾るのが良いとされていますので、それにあやかって南か東に飾るのもよいでしょう。
直射日光にあたると人形が傷むので避けましょう。だからと言って暗い場所にどんよりと置いておくのも可哀そうなので、程よく日の当たる風通しの良い場所に置きましょう。
お雛様は人形です。人形を玄関に置くと運気が人形に吸い取られてしまうという云われが風水にあり、玄関に置くのが避けられています。
また「仏壇の近くに飾るのはどうなの?」と心配になる方もいます。仏壇の近くに置く事は風水的には問題ないようですが、雛人形に線香のにおいがつくのを嫌う方は仏壇の近くは避けた方がいいです。
雛人形の段数に合った場所へ
段数が多いものは場所を多くとります。飾るスペースが確保できていれば問題ありませんが、七段飾りなどを譲り受け、住居の広さと雛人形の大きさが釣り合わなく飾るスペースがなくて困る事もあります。
その場合、お雛様とお内裏様のみ飾る事は問題ないようです。飾れない人形たちは丁重に供養してましょう。
最近はお雛様とお内裏様のみの「親王飾り」という省スペースな雛人形が流行っています。親王飾りのシンプルなもので雛台がない場合は、カラーボックスなどに毛せん(赤い敷物)を敷いた上に人形を飾るようにすると、雛台がなくとも床に直置きで飾る事ができます。
タンスやピアノの上などでしたら、雛台がなくても毛せんを敷いて飾れば見栄えがよいです。
小さなお子様がいる場合
0歳や1歳はまだ言葉を理解できず、口になんでもいれてしまう怖れがあるためお子様の手が届かない、箪笥の上や段数の多いものは子供が一人ではいけない部屋に飾ると良いです。
2歳頃から言葉を理解してくる子供が多いので、あえて子供の目の届く場所に飾り「お雛様かわいいね」「優しくしてあげようね」など、雛祭りの楽しさや物を大切にする事を教えるチャンスにしたというお母さんもいます。
3歳や4歳にもなれば言葉や雛祭りの意味も理解できる様になるので、お子様と一緒に飾りつけや片づけをしたり人形のお掃除を手伝ってもらったり、一緒に雛祭りを楽しみましょう。
雛人形の片付け方や保管方法は?
小物が多い雛人形の片づけは大変、繊細な人形の扱いには骨が折れてしまうもの。雛祭りが終わり次第なるべく早く片づけないとと焦ってしまいますが、焦る必要はありません、丁寧な片づけを心がけましょう。
片づけ方のコツや順序さえ掴めば来年また綺麗な状態でお雛様を飾る事ができますよ。片付け方の大まかな流れから解説していきます。
雛人形の片付け方
- 人形についた埃を毛はたきで払います。埃は害虫の餌になるので念入りに落としましょう。
- 人形の小道具を丁寧にはずし、柔らかい布などで汚れを拭きます。小道具は段ごとに小袋にわけてしまっておくと来年飾りやすいです。
- 人形の顔を布で包みます。綿製の布がついている事が多いですが、無い場合はティッシュでも代用できます。
- 人形を箱に詰めます。大きな箱に複数の人形を収納する場合は、人形同士が触れ合わないように薄い紙などを間に入れてあげます。箱が大きくて隙間があり人形が動く場合は、紙を丸めたものを入れて動かないように調整しましょう。
- 絶対に人形や道具に直接触れないように人形用防虫剤や乾燥材を入れ、湿気の少ない暗所に保管します。
防虫剤の注意点
害虫にとって雛人形はごちそうの様なもの。衣装はもちろん髪の毛や胴体の藁や衣装の接着剤など、保管方法を間違うとすべて食べられてしまいます。
そこで防虫剤が有効なのですが、防虫剤も使用方法を間違えると人形に変色や変形など、悪影響を与えます。
防虫剤を使用する際の注意点- 人形用の防虫剤を使用する事、衣類用とでは成分が大きく違います。
- 用法・容量を守りましょう、多く入れればよいものではないです。
- 複数の種類を混ぜて使わない。
- においが気になる場合は無臭のものを選ぶ。
- 雛人形の材質にあった防虫剤を選びましょう、今一度付属の説明書を確認するか販売店に確認すると安心です。
保管場所
上記に記した“湿気の少ない暗所”について具体的に解説します。
保管場所の重要なポイント- 湿気の少ない場所
- 水気のない場所
- 寒暖差の激しい場所(結露防止のため)
- 直射日光の当たらない場所
- 風通しの良い場所
- 埃のたまりやすい場所
- 人形箱の上にものを置かれる怖れのない場所
以上の事を踏まえると、窓際や冷暖房による影響を受けやすい場所は避けるべきです。
おすすめは「押入れ」とくに「押入れの上段」です。上段ですと湿気が溜まりにくく風通しもよく、上段は滅多に開けないため雛人形が入っていると知らない家族に箱を潰される心配もありません。
ただしどこに保管していても埃は溜まっていくものです、箱の周囲が汚れていたら掃除するよう心掛ましょう。
保管のタイミング
片づけは人形が湿気を吸わないよう、天気がよく湿気のない日がよいのです。とは言うものの、雛祭りが終わったらすぐに片付ける風習との兼ね合いが難しいところです。
大雨などの高湿度でない限り片付ける際の湿度に関して気にしすぎる必要はないようですが、どうしても兼ね合いが難しい場合は乾燥材などで調整するとよいでしょう。
人形保管サービス
保管するスペースがないため、親せきなどに預かってもらっている方もいるはず。預かる親せきがいない、親せきに預けるのは不安だという方には人形保管サービスというものがあります。湿度管理や安全確保などをプロの手によって保障されているので安心です。
実施しているのは保管サービスに特化した企業はもちろん、トランクルーム貸出企業の人形専用サービスや人形販売店も行っています。
まとめ
雛人形を飾るのにおすすめの時期は立春(節分)の翌日からです。一年の内の一ヶ月間、お雛様を楽しめる特別な期間ですから余裕をもって準備したいものです。
雛人形の飾りつけや片付けは、お子さんが協力し合って作業することの大切さや楽しさを学べる良い機会となります。
一見難しそうな雛人形の飾りつけですが、飾りつけに厳格な決まりや怖い迷信のようなものはありませんので、ご家族みんなで楽しみながら飾りつけしてみましょう。