夏になると、蚊に刺される機会が増えてきます。特に赤ちゃんは、汗をかきやすく体温も高いため、蚊に刺されやすいです。
赤ちゃんの小さな手足が真っ赤に腫れてしまい、慌てたというママも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、赤ちゃんが蚊に刺されてしまったときの症状や、かゆみや腫れなどの症状を和らげるための対処法、蚊に刺されることによって懸念される影響などについて解説します。
赤ちゃんが蚊に刺された時の症状は?
蚊に刺されたときかゆみや発赤などの症状が現れるのは、アレルギー反応によるものです。
蚊は血を吸うとき、対象の体内へ唾液を流し込みます。その唾液には血を固まりにくくする抗凝固作用の成分や、痛みを感じにくくする麻酔作用の成分が含まれています。
その唾液を異物とみなした体がアレルギー反応を起こし、皮膚が炎症を起こしてかゆみや腫れなどの症状を生じます。
アレルギー反応によって症状に違いが…
アレルギー反応には、即時型反応と遅延型反応があります。即時型反応は蚊に刺された直後より症状が出現するもので、遅延型反応は刺されてから8時間以降に症状が出るものをいいます。
どちらの反応が現れるかは、刺された回数が大きく影響します。回数が増えるにしたがって、アレルギー反応は次のように変化していきます。
アレルギーは、アレルゲン(原因となるもの。この場合は蚊の唾液)に対する抗体があることで引き起こされます。
抗体はアレルゲンを感知して初めて作られるものであるため、蚊に刺されたことのない赤ちゃんはまだ抗体を持ちません。
そのため初めて蚊に刺された赤ちゃんはアレルギー反応を示さず、刺されても何の症状も現れません。
蚊に何度か刺されると体内で抗体がつくられ、まずは遅延型のアレルギーが現れるようになります。乳児から幼児に多い反応です。
刺される回数が増えると、遅延型反応だけでなく即時型反応も現れるようになります。
刺されてすぐ症状が出て、一旦治まったと思いきや、8時間以上経過した後に再びかゆみや発赤などの症状がぶり返します。小学生以降でみられるようになる反応です。
刺された直後だけ症状が現れ、短時間で消失します。青年期以降に多くなる反応です。
何度も蚊に刺された結果、蚊の唾液を異物と認識しなくなり、何の症状も現れなくなります。シニア世代で多くみられます。
ただしこれらの反応の変化は個人差が大きく、若いうちにアレルギー反応を示さなくなる人もいれば、生涯にわたって即時型と遅延型の反応が続く人もいます。
赤ちゃんにみられる症状
前述したように、蚊に初めて刺された赤ちゃんは何の症状もきたしませんが、何度か刺されると遅延型反応のみが現れるようになります。
即時型反応は1時間程度と短時間で消失しますが、遅延型反応は症状が比較的長く続く傾向にあり、1週間ほど続くこともあります。
また赤ちゃんは大人よりも重い症状が現れやすく、真っ赤に腫れたり、しこりを持ったように硬くなることもあります。
掻き壊すことで細菌感染をきたし、化膿して水ぶくれを形成したり、とびひ(傷口から出た汁が周囲に付着することで、患部が拡がるもの)をきたすことも少なくありません。
症状には個人差がある
虫刺されの症状はアレルギーによる炎症ですから、症状の程度は個人差が大きいです。
少しかゆくなるだけで済む人もいれば、かゆみや腫れが強くなかなか治まらない人もいて、これは体質的な影響が大きいと言えます。
中には病的なものも
「蚊刺過敏症」は蚊に刺された部位が強く腫れ、水ぶくれになり、皮膚が壊死して潰瘍(深い傷)を形成するほどひどい症状となります。
また局所的な症状だけに留まらず、発熱や蕁麻疹などの全身症状を伴うことがあります。
蚊刺過敏症は、EBウイルスが免疫をつかさどる細胞に感染することで生じる「慢性活動性EBウイルス感染症」で見られる症状の一つです。
蚊に刺されるたびにひどい症状が現れるという人は、一度病院で検査してもらうようにしましょう。
「小児ストロフルス」とは、虫刺されを機に発症する乳幼児の皮膚疾患です。四肢や体幹に、痒みを伴う丘疹もしくは水疱が多発します。
過剰なアレルギー反応が原因とされており、アレルギー体質の乳幼児に多くみられる疾患です。掻き壊すことでとびひに発展することもあります。
赤ちゃんが蚊に刺された時の対処法は?
症状を緩和し患部を悪化させない対処法
刺されたらすぐに、患部についた細菌や蚊の唾液を洗い流すことで、その後の症状を抑えることができます。このときアルカリ性の石けんを使うと、酸性の唾液と中和されるためより効果的とされています。
強く患部を擦るとかゆみが悪化してしまいますので、できるだけ優しく洗い流すようにしましょう。洗える環境になければ、アルコールの入ったウェットティッシュで拭くだけでも効果があります。
ただし刺されたあとすぐに対処するには、即時型反応が現れなければ難しいでしょう。赤ちゃんの場合は症状に気づいたときは既に時間が経っていることが多いため、洗ってもあまり効果はないかもしれません。
患部を温めることで、蚊の唾液に含まれるタンパク質を変性させ、毒性を失わせることができるといわれています。
タンパク質が変性するのは40~60℃ですので、電子レンジで温めたタオルや、お湯を入れたコップを患部にあてがうとよいでしょう。
熱めのお風呂につかるのも効果的ですが、赤ちゃんの場合はのぼせてしまうためお勧めできません。
ただしこの方法も刺されて間もなくの、アレルゲンが患部に留まっている間のみ有効です。遅発性反応でかゆみが強いときに温めると、かゆみを悪化させてしまう可能性があるため注意が必要です。
刺されてから時間が経過している場合は、患部を冷やすことでかゆみの症状を抑えることができます。
遅発性反応が主である赤ちゃんの虫刺されには、温めるよりも冷やす方が対処法としては適しているといえるでしょう。
短時間で治まる即時型反応や、症状が軽い場合は抗ヒスタミン薬が適しています。
ステロイド薬(抗炎症軟膏)かゆみが強く現れる遅延型反応の場合は、ステロイド入りの塗り薬が適しています。
赤ちゃんにステロイドを使うことに抵抗があるという人もいるかもしれませんが、短期間ステロイド軟膏を使用した程度ではまず副作用の心配はありません。
逆に弱い薬でかゆみを抑えられなかった場合、掻き壊して悪化したり、治癒が長引いてしまう可能性が高くなります。
ステロイド軟膏でしっかりとかゆみを抑え、症状を悪化させないうちに治してあげるようにしましょう。
蚊に刺された箇所を悪化させないようにするためには、赤ちゃんが患部に触れないようにすることが最も重要です。
赤ちゃんはかゆみがあるとどうしても掻いてしまいますので、包帯やガーゼで患部を覆ってしまうのもよい方法です。
絆創膏やパッチタイプのかゆみ止め薬を貼って、患部に直接触れることができないようにするのもよいでしょう。
短期間であれば、赤ちゃんの手にミトンを装着しても構いません。
包帯やガーゼで患部を覆い隠したときはそのまま放置せず、最低1日1回は患部の様子を確認し、必要があれば薬を塗ったりしてあげましょう。
赤ちゃんの皮膚はデリケートですので、絆創膏やパッチ薬を皮膚に貼った場合は新たな皮膚トラブルを生じてしまう可能性があります。
肌に直接貼るタイプのものは、必ず毎日貼り替えるようにしましょう。
石けんと同じ原理で、アルカリ性の重曹を患部に塗ることで症状を抑えることができます。
方法は簡単で、重曹:水=2:1の割合で混ぜ合わせ、ペースト状にしたものを患部に塗り、5分ほどおいて水で洗い流すだけです。
調理でも使える重曹は口に入っても安心ですし、赤ちゃんの敏感肌にも優しいため安心して使うことができます。
赤ちゃんの爪は薄く、掻けば肌を容易に傷つけてしまいます。爪は短く切り揃えておくようにしましょう。
虫刺されの跡が残ったときは?
赤ちゃんは新陳代謝が盛んなため、肌に傷跡が残るようなことはあまりありません。
しかしひどい虫刺されで跡がなかなか消えないというときには、十分に肌を保湿し、さらにターンオーバー(皮膚の代謝のサイクル)を高めてあげるのがよいでしょう。
ベビーオイルや馬油、ワセリンなどの赤ちゃんの肌にも優しい保湿剤を、お風呂上りなどに塗ってあげるのが効果的です。
赤ちゃんへの虫よけ対策について下記のページにまとめていますので、こちらも参考にしてみてください。
→ 赤ちゃんに虫除けは必要な理由/室内&外出時の対策/グッズの選び方
病院を受診する目安
次のような症状がみられる場合は、病院を受診しましょう。
- 腫れや発赤がひどい。
- 患部から汁が出てジュクジュクしている。
- 患部から膿が出ている。
- 大きな水疱ができている。
- 周囲に発赤が拡がっている。
- なかなか治らない。
- 発熱がある。
まずはかかりつけの小児科を受診してください。乳幼児の場合、皮膚科だけでなく眼科や耳鼻科なども、受診する最初の窓口は小児科で大丈夫です。
その上で主治医が必要と判断した場合には、各診療科を受診するようにしましょう。
赤ちゃんが蚊に刺される事による影響は?
伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)
「伝染性膿痂疹」というのは正式名称で、通称「とびひ」と呼ばれています。虫刺されや汗疹などを掻き壊してできた傷口に、細菌が感染して引き起こされます。
水疱や膿疱を形成したあと、水疱が破れたときに出た汁や膿が他の傷に付着することで、体中に「飛び火」します。
原因菌が黄色ブドウ球菌のときは水疱ができ、連鎖球菌のときは膿疱やかさぶたができます。乳幼児では、黄色ブドウ球菌が原因の水疱性膿痂疹が多くみられます。
黄 色ブドウ球菌は常在菌で、誰の皮膚にも存在する細菌です。他人と接することで黄色ブドウ球菌が肌から肌へうつることはありますが、元々皮膚にいる細菌なの でそれだけなら悪さをすることはありません。
そのためとびひ自体がうつることはありませんが、傷口から侵入すると化膿する原因となります。
とにかく掻き壊さないことが重要です。赤ちゃんが患部を掻いてしまわないように、かゆみの症状を抑え、患部に触れないよう工夫が必要です。
デング熱
「デング熱」は蚊がデングウイルスを媒介することで感染する伝染病で、全世界で年間1億人以上が発症しています。
日本では長らく認められていなかった国内感染が、2014年に約70年ぶりに確認されました。このとき東京の代々木公園で採集された蚊から、デングウイルスを有した個体が確認されています。
感染後2~10日程度の潜伏期間を経て、高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。
発熱後3~5日目に発疹がみられることもあります。これらの症状は通常約1週間程度で軽快し、後遺症を残すことなく回復します。
しかし中には解熱する頃に出血傾向が現れる重篤な症例があり、これを「デング出血熱」といいます。デング出血熱は適切な治療が行われないと死に至ることがあります。
ワクチンはありませんので、感染を防ぐためには蚊に刺されないようにするしかありません。
関連記事:子どもをデング熱に感染させない!実践するべき蚊への6つの対策法
日本脳炎
「日本脳炎」は、蚊が日本脳炎ウイルスを媒介することで感染します。全世界で年間約3~4万人が発症し、約1万人が死亡し、約9000人に重篤な後遺症が残っています。
日本国内では1967年まで毎年1000人を超える感染者が出ていましたが、その後は予防接種が普及したこともあり患者数は激減し、1992年以降は10人以下となっています。
不顕性感染(感染しても症状が出ないもの)が多く、発病率は0.1~1%程度と推定されています。
5~16日程度の潜伏期間を経て、頭痛、発熱、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が出現します。
その後意識障害、けいれん、麻痺、項部硬直(首の後ろのこわばり)などの脳炎・髄膜炎症状が現れ、重症例では昏睡に至り死亡します。
有効な治療法はなく致死率は20~40%で、生存者の45~70%に痙攣、麻痺、精神発達遅滞、精神障害などの後遺症が残り、特に小児では障害を残す確率が高いとされています。
ワクチン接種により、発病のリスクを75~95%減らすことができるとされています。
日本脳炎ワクチンは定期接種であり、一般的には3歳で2回接種(第1期)し、4歳(第1期の接種から1年後)で1回追加接種を行ないます。
ただし罹患リスクが高いなどの理由で早期の接種を希望する場合には、生後6~90ヶ月に第1期の接種を行うことが可能です。
その他
蚊が媒介する病気にはデング熱と日本脳炎以外にも、ジカ熱やマラリアなどの恐ろしい伝染病があります。
現在は国内感染が確認されているのは前述した2種類のみですが、海外で感染して国内で発症する輸入感染は幾例も報告されています。
まとめ
赤ちゃんが蚊に刺されると、大人より重い症状となりやすいものです。赤ちゃんはかゆみを我慢できませんから、掻き壊してしまってさらに悪化させてしまうことも珍しくありません。
そんなトラブルを防ぐためにも、適切な対処法でかゆみを抑え、できるだけ早期のうちに治してあげたいものです。
症状がひどい場合には、迷わず病院を受診するようにしましょう。
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参考リンク