一般的に「妊娠を望んでいる人は、まず基礎体温を記録しましょう」といわれます。
そして、本やWEBでは、低温期と高温期がきれいに2層に分かれた基礎体温のグラフをよく目にします。
ですが、毎日測定して記録してみても、そのようなグラフにはならずに、ガタガタになってしまうことがあります。
そうなれば、基礎体温がガタガタでも、ちゃんと妊娠できるのかどうかと不安に思う人もいらっしゃるでしょう。
実は、基礎体温がガタガタになるには理由があります。
ここでは、基礎体温がガタガタになっているときの体はどのような状態なのか、そのような状態でも妊娠は可能なのか、そして、改善法はあるのか、などについて詳しく解説します。
基礎体温がガタガタってどういった状態なの?
一口に基礎体温がガタガタだと言っても、全員が同じグラフになっているわけではなく、人それぞれタイプが異なります。理想的な基礎体温と比較すると、自分の基礎体温の特徴がよくわかります。
理想的な基礎体温の特徴
- 低温期と高温期がはっきりと2層に分かれている
- 高温期の平均体温は、36.8度程度
- 低温期と高温期の体温差が、0.3~0.5度
- 低温期から高温期への移行は、1~2日
- 高温期は10日以上(排卵から月経までは通常約14日間)
- 低温期・高温期それぞれの期間内では、0.2~0.3度内の差
基礎体温からわかること
排卵日は、基礎体温の低温期の最終日から高温期に入る2日~3日間にあるとされています。
基礎体温を毎日つけていると、生理周期がわかり、次の生理日を予測することができます。
生理周期はホルモンバランスを基本としており、女性の体に影響を及ぼすので、肌や精神の状態を把握することも可能です。
正常な排卵が行われているかどうかのチェックができます。低温期と高温期にはっきり境目があれば、正常な排卵が行われていると考えられます。
ガタガタな基礎体温のタイプ
基礎体温がガタガタで安定しない人のグラフには、低温期と高温期の2層に分かれない場合と2層に分かれる場合があります。
2層に分かれない基礎体温表
月経から次の月経までに、高温期が見られることなく、低温期の範囲内でガタガタになってしまうタイプです。月経の周期が長すぎる場合や短すぎる場合もあります。
一過性のこともありますが、「無排卵月経」の恐れがあります。
このタイプでは、体温は低いときと高いときがありますが、はっきりと2層に分かれることなく、常にガタガタと変動している波型を描きます。
排卵を予測しにくいだけでなく、排卵をしていない可能性もあります。
2層に分かれる基礎体温表
2層にはなっているものの、高温期が9日以下と短いタイプです。黄体ホルモンの分泌がうまく行われていない「黄体機能不全」の可能性があります。
このタイプには、排卵がある場合もない場合もあります。ですが、妊娠するためには基礎体温を上げる黄体ホルモンの分泌が不可欠なため、排卵がある場合でも、妊娠しにくいといえます。
高温期でありながら、ずっと高温を保つことができずに、一時的に体温が下がってしまいます。疲れやすい人や貧血気味の人に多く見られます。
2層に分かれているので排卵はしていますが、黄体機能が弱いと考えられ、妊娠した場合でも維持できずに流産しやすい傾向にあります。
基礎体温は2層に分かれていますが、高温期の体温が低く、低温期との体温差が0.3度未満しかないタイプです。高温期に十分に体温が上がらないと、着床しにくいといわれています。
通常、排卵を境に1日~2日で低温期から高温期に移行しますが、移行するのに何日もかかるタイプがこれです。移行に日にちがかかるため、排卵日を特定するのが難しくなります。
一般的な生理周期は、25日から38日だといわれています。しかし、生理周期がそれよりも長く、特に低温期が長い場合には、稀発月経の恐れがあります。
卵胞が成熟するまでに、通常よりも長い日数がかかっていて、なかには排卵していないこともあります。2層になっているからと安心しないで、周期の長い人は注意が必要です。
生理周期が24日以内と短く、月に2回生理が来てしまうため、頻発月経の可能性があります。低温期が短いのが特徴で、卵巣の機能が低下していると考えられます。
卵子が成長しきらないうちに排卵を迎えることが原因で、成熟していない卵子では、受精や着床が難しくなります。また、月経の回数が多くなるため、貧血になりやすくなります。
高温期が16日以上続く基礎体温表
通常は、約14日間で高温期が終わり月経になりますが、16日以上続き月経も来ない場合は、妊娠の可能性があります。
さらに、その状態が21日以上続いた後に出血がある場合には、切迫流産になっている恐れがあります。高温期が続くときには、一度診察を受けた方がよいでしょう。
基礎体温がガタガタでも妊娠できるの?
基礎体温が理想の形でなくても、ガタガタしていても、排卵があれば妊娠できる可能性はあります。排卵があるかどうかがポイントです。
基礎体温がガタガタしていても、2層に分かれている場合は、排卵があると考えられます。低温期と高温期の体温や日数などが基準値に近いのであれば、問題はないといえるでしょう。
「基礎体温がガタガタだと妊娠しにくい」といわれる理由には、体質的な問題よりも、排卵日がわかりにくいということが挙げられます。
次回の生理予定日の17日~19日前から排卵日検査薬を使い始めて調べてみることで、排卵の有無もチェックできます。排卵日が近くなると、高確率に排卵日を予測することができます。
たとえガタガタであっても2~3か月継続して基礎体温を記録し、婦人科に持参して診察を受ければ、排卵日がわかることがあります。
排卵があることがわかれば、妊娠できる可能性は十分あります。
基礎体温がガタガタになる原因は?
体温は、ちょっとしたことに影響を受けて、簡単に変動してしまいます。したがって、基礎体温がガタガタになってしまう原因も1つではなく、複数の原因が考えられます。
身体的な要因
排卵が起こらない場合、基礎体温のグラフは低温期と高温期がはっきりと分かれずに、ガタガタになってしまいます。
無排卵の原因には以下のようなことがあります。
- 過度のストレス
- 無理なダイエット
- 不規則な生活習慣
排卵が起こっていても、黄体ホルモンの分泌が正常に行われず、妊娠につなげるための働きが十分にできない場合があります。そのような場合にも、基礎体温はガタガタになります。
黄体機能不全の原因には以下のようなことがあります。
- 自律神経の乱れ
- ストレス
- 冷え
低温期が長く排卵までに時間がかかってしまう場合は、卵胞ホルモンの分泌が不十分で、卵子の成長が遅いと考えられます。
また、低温期が短く、卵子が成熟しないうちに排卵してしまう場合もあります。
「卵子が受精したにもかかわらず、着床が不十分で流産してしまった状態」を化学流産といいます。
この場合、受精してから流産するまでの間は妊娠状態であるため、高温期が続きます。
しかし、流産後には体温が下がることから、基礎体温のグラフは、一見ガタガタになっているように見えます。
化学流産については対処法がなく、また、気づかないうちに化学流産してしまっている場合もめずらしくありません。
女性ホルモンだけでなく、ホルモンのバランスが乱れる病気にかかった場合には、基礎体温はガタガタになってしまいます。
「下垂体腺腫」や「子宮内膜症」などが代表的な疾患です。子宮内膜症の場合には、月経が始まっても高温期が続きます。
更年期とは、およそ45歳~55歳くらいまでをいい、ホルモンバランスが大きく変動します。以前は基礎体温がハッキリと2層に分かれていた人であっても、ガタガタになることがあります。
妊娠をすると、本来は月経が起こって低温期に入る時期であっても、高温期のままになります。
生理が1週間以上遅れて、高温期が17日以上続く場合は、妊娠の初期だと考えられます。妊娠検査薬などで調べてみるとよいでしょう。
物理的な要因
基礎体温は、通常の体温を測定する場合とは方法が異なります。いくつかの条件をしっかりと守った状態で測定します。
目覚めてすぐ、起き上がる前に寝たままで測定する必要があるため、体温計を取りに起き上がったりするだけで、もう正確には測定できないのです。
基礎体温は、季節による気温の変化にも多少は影響を受けることがあります。
薄着をし過ぎて、体が冷えてしまっている場合には体温は下がり、逆に厚着をし過ぎている場合には、体温は上がります。
前日に体力を消耗したなどで疲労がある場合や、寝る前に冷たいものを飲んだなどの場合にも、体温が下がってしまうことがあります。
女性ホルモンの分泌に関わる要因
現代はストレス社会です。仕事だけでなく、さまざまな場面でストレスにさらされます。
卵巣にホルモン分泌の指令を出すのは脳です。そのために、脳がストレスで疲労してしまうと、ホルモンの分泌が乱れてしまいます。また、自律神経のバランスを崩すことにもなります。
その結果、月経が止まったり、体温や周期が乱れたりするのです。
ファストフードやコンビニ弁当、インスタント食品など、栄養のバランスが悪い食事ばかりを摂っていると、ホルモンが乱れる原因になります。
栄養不足は、脳にも影響をし、女性ホルモン分泌を促す指令を上手く卵巣に届けることができなくなります。
体の冷えが原因となり、血行が悪くなります。
脳から卵巣へ、女性ホルモンを分泌するようにと指令があったとしても、卵巣の血流が悪いとうまく分泌が行われずに、ホルモンバランスは乱れてしまいます。
過度の飲酒や喫煙、不規則な睡眠時間や運動不足などの生活習慣の乱れが、ホルモンの分泌に関わる脳の機能を低下させてしまいます。
特に喫煙は、血流を悪くし、ホルモンの分泌にも悪影響を及ぼします。
基礎体温のガタガタを改善させる方法は?
基礎体温をきれいな2層にして、しっかりと高温期を迎えるためには、女性ホルモンのバランスを整えることが大切です。そのためには、日常生活の見直しが重要になります。
ストレスを溜めない
上手にストレスをコントロールするには、ストレスの原因を明らかにすることが必要です。第三者から客観的に見て、自分のストレスの感じ方について意見を聞くのも1つの方法です。
また、好きなことをするなどして、ストレスを発散するように努めることも大切です。
基礎体温がガタガタになることをあまりにも気にし過ぎると、毎日の測定自体がストレスになってしまいます。測り方などのちょっとした条件が変わるだけでも、体温は変化してしまうものです。
生活習慣など、自分で改善できることがあれば取り組むようにして、あまり過敏にならずに意識をそちらに向けましょう。
バランスの良い食事をとる
ダイエットなどで、極端に食事を制限してしまうと、基礎体温をガタガタにする原因になります。3食を栄養バランス良く、だいたい決まった時間に食べることが大事です。
ホルモンバランスを整えるためには、ミネラル、ビタミン、タンパク質などが大切な栄養素です。
「パンだけ」や「おにぎりだけ」のような食事ではなく、主食と副食を意識して食事をするようにしましょう。
睡眠を十分とる
睡眠は一日の疲れを解消し、体内時計を戻します。最低でも4時間以上眠らないと、自律神経が乱れやすいということがわかっています。
6時間~8時間の質の良い睡眠が理想です。
体を冷やさない
冷えは、女性ホルモンを乱す一番の原因です。血行が悪くなり、血液が卵巣に十分行き渡らないため、卵子の成長に影響を及ぼします。
夏のクーラーや冷たい物の摂りすぎなどに気をつけ、特に月経中は体を冷やさないようにしましょう。
冷えで血流が悪くなって、経血がしっかりと排出されなければ、子宮内膜症につながることもあります。
冷え防止には、腹巻きや重ね履き靴下もいいですが、リンパマッサージで巡りを良くすることも効果的です。
適度な運動をする
適度な運動は気分転換になり、血液の循環をよくします。基礎代謝を上げて、ホルモンのバランスを整える効果もあります。
通勤時に、エレベーターやエスカレーターを使用していたところを、階段を使うようにするなども効果的です。
基礎体温の正しい測り方は?
基礎体温がガタガタになっている原因には、さまざまなことが挙げられますが、実は、正しく測定ができていないということが意外に多いものです。
基礎体温の正しい測り方のポイント
基礎体温は、毎日欠かさずに測ることが重要です。
起床時すぐに測る
少しでも動くと体温は変化してしまいます。必ず体を起こす前に測りましょう。
動かなくても済むように、手の届くところに置いておきます。
仕事の都合などで、朝に測ることができない場合は、熟睡して十分に睡眠をとった寝起きに測りましょう。
舌下で測る
基礎体温は、他の体温計とは測定法が異なり、舌下で測ります。舌下は、外気や汗などの影響を受けにくく、体温が安定しています。
舌下の一番奥にある舌小帯(中央のすじ)の左右どちらかにあてて、口は軽く閉じます。
婦人体温計を使用する
基礎体温は、細かい温度変化を調べるため、専用の婦人体温計を使います。婦人体温計であれば、少数点第2位まで計測できます。
必ず記録する
グラフにして動きを観察するためには、忘れずに必ず記録することが必要です。体調なども一緒にメモしておくとよいでしょう。
基礎体温を管理できるアプリなどを使えば、楽に記録できます。
大切なのは継続
ときには、無意識に起き上がってしまうこともあるでしょう。また、測定時間に多少のばらつきがあるかもしれません。
ですが、あまり神経質にならなくても大丈夫です。途中でやめてしまわないで、毎日続けて測定し、観察することに意味があるのです。
まとめ
「基礎体温がガタガタ=妊娠ができない」「基礎体温がガタガタ=病気」ではありません。その原因は複数あり、体には全く原因がなく、測定の仕方が問題になることもあります。
ガタガタな基礎体温は、一過性のこともあるため、3周期くらいは記録をつけて様子を見ましょう。
また、基礎体温がガタガタになっていても、生活習慣の見直しなどをすれば改善が見られる可能性もあります。
しかし、3周期くらい記録しても、月経不順が続いたり、高温期が見られなかったりする場合には、一度病院でホルモンバランスや排卵の状態について相談してみることをおすすめします。