「女性は基礎体温が高い方がいい」と言われますが、基礎体温の高さは何を持って決められるのかをご存じですか?
女性の正常な基礎体温は、ただ単にいつでも体温が高ければいいというものではありません。
グラフにしたときに、高温期と低温期の二相に分かれていることが最も重要です。それを知った上で、「高温期の体温が低い」場合には、様々な問題が考えられます。
ここでは、高温期の体温がどのような状態だと問題なのか、また改善するにはどうしたら良いのかについてご紹介していきます。
高温期の基礎体温が低いと良くないの?
高温期の体温は何度ぐらいが平均なのか、高温期の体温が低いとどんな影響があるのかをみていきましょう。
高温期と低温期の差が0.3度以上あれば正常範囲
「高温期は37度が理想的」という認識が広く知れ渡っていますが、厳密に言うと高温期の体温だけで「良い」「悪い」を判断することはできません。
低温期と高温期の温度差が重要なポイントとなっています。
高温期の体温が同じ37度でも、低温期の体温が36.8度の人は危険信号で、36.5度の人は正常となります。
逆に、高温期の体温が37度に届かなくても、低温期との差が0.3度以上あれば、大きな心配はいりません。
ただし、全体的に体温が低い女性は、体温を上げるために生活習慣を見直した方が体調が良くなると言えます。
基礎体温の変化は、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌によってコントロールされています。
卵子が受精に至らなかった場合、黄体ホルモンの分泌が減少して生理を起こし、その後に卵胞ホルモンが分泌されて次の卵子を育てます。
卵胞ホルモンは体温を下げる働きがあるため、この時期は低温期となります。
卵子が充分に成長して排卵をすると、子宮内を妊娠しやすい環境に整えるために黄体ホルモンが大量に分泌されます。
黄体ホルモンは体温を上げて子宮内膜を厚くし、脂肪や水分を溜め込むホルモンと言われています。
高温期に基礎体温が低いと生殖機能が低下する
排卵後の高温期に体温が上がらないということは、排卵していないという可能性が出てきます。
また、排卵があったとしても、子宮内膜を厚くして受精卵が着床しやすい子宮環境に整える準備ができていないということになります。
排卵された卵子が受精したとしても、受精卵が子宮に着床して妊娠を成立させる可能性が下がってしまいます。
高温期の基礎体温が低い原因は?
なぜ高温期に基礎体温が上がらないのかその原因は様々で、一時的なホルモンバランスの乱れの場合もあれば、重大な疾患の場合もあります。
黄体機能不全
高温期に基礎体温が上がらない大きな原因は黄体機能不全です。
「黄体ホルモンを分泌せよ」という脳の信号の不具合や、黄体ホルモンが分泌されても子宮が反応しない機能的な問題で発症します。
どちらの場合も、体温を上げて妊娠の準備をするための黄体ホルモンが正常に働いていない状態と言えます。
低温期と高温期の体温差が0.3度以下だったり、高温期が10日未満しか続かない場合に疑われます。
また、女性の体はデリケートなので、下記のような些細な原因で黄体機能不全を起こします。
悩みなどの精神的ストレス、不規則な生活での身体的ストレス、どちらの場合もストレスは自律神経の働きを乱します。
自律神経が乱れると体温のコントロールや正常なホルモン分泌ができなくなり、黄体の機能にも悪影響を与えます。
糖分や油脂を大量に摂取して栄養が偏った場合や、ダイエットのために極端に栄養素やカロリーが制限されると、生殖機能が低下します。
必要な栄養素がバランスよく体内に存在しないと、身体は生命を保つことに必死になり、新しい命に栄養やエネルギーがいかないように生殖機能を低下させるのです。
過度なダイエットはもちろんですが、好きなものだけを必要以上に摂取した場合も、黄体機能不全を引き起こします。
身体の冷えは、全般的に血行不良が原因です。
血行不良になると、酸素や栄養分が全身に充分に行き渡らず、子宮や卵巣が栄養不足の状態となります。そうすると、黄体ホルモンの感受性が下がってしまうケースがあります。
飲酒や喫煙は、血流を阻害する嗜好品の代表格です。
飲酒は適量であれば血行を促す効果も期待できますが、過度の飲酒は肝臓に血液を集めてしまうため、その他の血流を不良にしてしまいます。
喫煙に関しては、少量であっても確実に血行不良を引きこすので、生殖機能に悪影響を与えると言えます。
通常、妊娠後に分泌量が増え、母乳を出す働きをするプロラクチンというホルモン値が、妊娠前から高くなってしまう症状を高プロラクチン血症といいます。
プロラクチンが分泌されると、女性の体は「現在、新しい命を育てています」という状態になり、次の妊娠を妨げるために黄体機能が低下します。
脳の視床下部に腫瘍ができることで起こることが多いですが、服用した薬剤が原因で引き起こされるケースもあります。医師の指示の元、治療が必要になる疾患です。
糖尿病のどのようなメカニズムが黄体機能に影響を与えるかは明確になっていませんが、糖尿病患者が黄体機能不全を引き起こしやすいというデータがあります。
糖尿病が原因で黄体機能不全を起こしている場合は、根本的な治療が必要になりますので、インスリンをコントロールする投薬や生活習慣の見直しが必須となります。
無排卵
黄体ホルモンではなく、卵胞ホルモンの分泌不足によって卵子が成熟せずに無排卵の状態の場合も、高温期の体温が低くなります。
無排卵でも生理が来る場合があり、超音波での診断や、基礎体温から判断をするしかありません。
卵胞ホルモンの分泌不足も、原因は黄体機能不全とほぼ同じです。卵胞ホルモンも黄体ホルモンも正常に分泌させるためには、ストレスのない健康的な生活と身体が必要と言えます。
高温期の基礎体温が低いと妊娠の可能性はないの?
高温期の体温が低い場合でも妊娠の可能性がないわけではありません。
しかし、糖尿病など、重大な疾患が原因で体温が上がらない場合には、妊活以前に病気の治療が必要となります。また、無排卵を起こしている場合も、原因究明と治療が必要になります。
ある医療機関の、小人数サンプルでの調査結果ではありますが、黄体機能不全の女性でも40%程度の妊娠率というデータがあります。
このデータが全国民の割合とイコールとは考えられませんが、少なくとも妊娠する可能性がゼロではないことの実証にはなります。
黄体機能不全は病院での治療法も確立されているので、治療を受ければ更に妊娠率が上がる可能性もあります。
参照元:国井クリニックHP
高温期の基礎体温が低いのを改善する方法は?
高温期に基礎体温を上げるためには、本格的に医療機関で治療を受ける必要がある場合と自宅でのセルフケアで改善できる場合があります。
しかし、治療を受けているからと言って、乱れた生活習慣を続けて良いわけではありません。治療を受ける場合でも、自宅での生活習慣改善は必須です。
病院での治療
黄体機能不全が深刻な状況であったり、高齢のため短期間で改善したい場合には、病院での治療が必要になります。
主に排卵誘発剤であるクロミッドを内服して卵胞を成熟させ、排卵後の黄体ホルモンの質を良くする治療法です。
黄体ホルモンを分泌する黄体は、排卵後の卵胞が変化して生成されるため、卵胞の成熟が黄体機能不全の改善に繋がると考えられています。
排卵後3日以内に、黄体ホルモンの分泌を促すhCG注射を打ち、黄体からの黄体ホルモン分泌量を増やす治療法です。
注射が効き、黄体ホルモンの分泌量が増えると、高温期の体温が上がります。
排卵直前に黄体ホルモンと同様の成分の注射や点鼻薬、錠剤の服用で直接的に黄体ホルモン値を上げる治療法です。
処方される薬は、元々のホルモン値や副作用の表れ方から判断され、人によって異なります。
自宅での改善方法(自然補完療法)
病院での薬の処方に頼らず、自分で生活習慣を改善して黄体の機能を高める方法を自然補完療法と言います。
食生活の見直し
1日3食の規則正しい食事時間に加えて、黄体の機能を改善させる栄養素を積極的に摂取することが大切です。
特に意識したいのが、下記の食品から葉酸とビタミンEを充分に摂取することです。
- ブロッコリー
- 枝豆
- ほうれん草
- モロヘイヤ
- 菜の花
- アーモンド(ナッツ類)
- ひまわり油
- たらこ(魚卵類)
葉酸やビタミンは、食材からの摂取の他にサプリメントでの補充も有効です。
質の良い睡眠の確保
人間のホルモンは眠っているときに効率よく分泌されます。22:00~26:00の睡眠が重要だと言われていますが、就寝時刻とホルモン分泌には関連性がないことが分かっています。
ホルモンは就寝する時間に関わらず、寝入ってから最初の深い眠りで多量に分泌されます。
深い眠りを導くにはメラトニンというホルモンの分泌が必要で、メラトニンは起床してから14~16時間後に体内に分泌されます。
つまり、床につく時間ではなく、朝起きてから何時間後に眠るかの方が重要になります。
また、メラトニンは強い光を感知すると分泌が抑制されるので、就寝前にPCや携帯のブルーライトを浴びないことも重要です。
適度な運動
適度な運動で心拍数を上げ、血流を促すと、体温が上がります。
過度に激しい運動は交感神経を刺激して逆効果となりますが、ウォーキングやヨガでの全身運動は血行を促進してくれます。
また、汗をかくことでストレスも発散され、自律神経を整えてくれます。
温活
1年を通して、身体を温める意識を持つことも高温期の体温を上げる重要なポイントです。身体が冷えていると血流が悪くなり、黄体ホルモンが全身に運搬されにくくなります。
- シャワーで済ませずに毎日きちんと湯船に漬かる
- 温かい飲み物を積極的に飲む
- 夏場でも足を温める
上記の3つを守るだけでも、かなりの効果が期待できます。日々のちょっとした心がけで、身体を冷えから守りましょう。
まとめ
高温期の体温が充分に上がらないと、妊娠をしにくくなったり、妊娠しても流産をする可能性が高くなったりします。
高温期の体温を上げるために自宅でできることはたくさんありますが、重大な疾患が隠れている場合もあるので、まずは医療機関で原因を特定することが大切です。
その上で、適切な治療を受けたり、自宅での生活習慣を改善したりして、基礎体温を上げていきましょう。
また、現在高温期の基礎体温が低いからといって妊娠の可能性が無くなったわけではありません。
自分の身体の状態を知った上で、前向きに妊活に取り組んで、高温期に体温を上げる努力をしましょう。