気温が上がる季節になると虫の活動も活発になります。中でも危険なイメージが強く、気になる虫といえばマダニではないでしょうか。
先だっても香川県で死亡者が出るなど、外遊びが大好きな子ども達への影響が心配なところです。
でも、普段の生活の中での悪影響は100%起こりうるものではないのでやみくもに心配する必要はありません。
そこで危険度の高いマダニと遭遇しないために生態や特徴、そして出没しやすい場所などをまとめてみました。
マダニの被害を回避するためには生息しない環境に近づかないことが一番の対策と予防に繋がります。
1.マダニの正しい知識をつけましょう
マダニはどんな虫?
マダニは見た目たいした悪さをするような姿に見えません。
小さなアリやクモ、雨の前の日に飛ぶ小さな羽虫のようなかんじなので、そばにいてもあまり気にならない雰囲気があります。写真で見ると一見ホクロにも見えます。
けれども小さいから大丈夫と油断して放っておくと、するどい顎とギザギザの歯を使ってまるでお肉を食べるようにガブッと噛みついてずっとそのまま離れなくなります。スッポンみたいですね!
虫は刺すイメージが多いのですが、マダニは噛みついた部分からバンパイアのように血液を吸い取って、長くなると1週間も血液を吸い続けます。
気づいた時には血液を吸って体が膨らんで、豆のような、更にはスーパーボールくらいの大きさになっていることもあるんです!
噛まれても痛みを感じないので、イボのようなできものが突然現れて(血を吸って膨らんだ状態がイボのように見えます)マダニを見つけるケースもあるようです。
子どもが外から帰ってきたら衣服や皮膚の露出した部分などにマダニが付いていないか一通りチェックしましょう。
出典:pref.nara.jp
実際に血液を吸って大きくなる様子のマダニ。鳥肌が立ちますが、どんな生き物なのか知っておくともしものときにマダニの判別がつきます。
イエダニに比べると大きく、近くで見ると植物の種のようにも見えます。
感染症を引き起こす病原体だから危ない!
マダニは感染症を引き起こす病原体そのもので、吸血行動によってウィルスを感染させて害を及ぼします。
ちょっとややこしいのですが体に悪さをする細菌がマダニに寄生しているので、噛まれると血液を介し細菌が体中に運び込まれて感染症に罹患するメカニズムを持つのです。
現在、厚生労働省も注意を呼び掛けているのがマダニの媒介による日本紅斑熱の感染。噛まれてから24時間放置すると感染確率は高くなり生命を失う可能性も出てきます。
また日本紅斑熱以外の細菌感染(マダニ感染症)の種類も存在するので注意が必要です。
マダニによる日本紅斑熱以外の感染症の種類
- ライム病
- 重症熱性血小板減少症候群
- ダニ媒介性脳炎
- Q熱
- エーリキア症
- 野兎病
- ダニ麻痺症
日本紅斑熱ってどんな感染症?
名前からのイメージでは日本のみの感染症に思えますが、海外にも存在するダニ媒介性疾患です。
同じ感染源になりますがロッキー山紅斑熱、クインズランドダニチフス、地中海紅斑熱など発症する世界の地域ごとに名前が異なります。
感染症の正体はダニそのものではなくて、リケッチアという菌!リケッチアがマダニに寄生して、そのマダニが刺咬といって動物に噛みついて血を吸うことで菌が更に生息域を拡大していくのです。
まさにパラサイト!寄生獣ですね・・・怖い。ですので、マダニに吸血されてもリケッチアに寄生されていないマダニだったら感染の危険性はないということになります。
野生動物にも注意!
リケッチアはマダニから動物に感染を拡大していきますが、逆の場合もあります。
それはリケッチアに感染した動物がいるとすると、リケッチア菌を持っていないマダニが感染した動物の血を吸うことで逆にリケッチア菌を貰ってしまうというパターンです。
山の中でもし野生動物に遭遇したり野生動物の死骸を見つけても近寄らないほうが良いのは、感染症の心配があるからなのです。補足までに、人から人への感染はないので大丈夫!
関連記事:ダニが増殖する原因は?出やすい場所は?予防する為の対策法も紹介
2.噛まれることによる影響と遭遇しやすい環境について
マダニに噛まれるとどうなるの?
運悪く噛まれたマダニがリケッチア菌を持っている場合、次のような身体への影響が考えられます。
マダニに噛まれることで心配される病気や影響
- 播種性血管内凝固症候群
- 多臓器不全
- 血小板の減少
- 肝機能障害
- 白血球の減少
- 四肢の末端壊死
マダニに噛まれると現れる具体的な症状
特徴的な症状は噛まれてからすぐに出ることはありません。
マダニがいそうな場所に行ったことがあり、その2日後から10日後に風疹に似た次のような症状が出ているときは感染が疑われます。気になる症状がある場合には早急に皮膚科もしくは医療機関にかかるようにします。
- 39℃以上の高い熱が出る。
- 寒気や頭痛、筋肉痛、関節痛がある。
- 高熱と共にうっすらと赤いあずき大の発疹が顔や手足から現われ、心臓に向けて全身に広がってきている。(発疹は2週間近く消えません)
- 噛まれた部分が赤く腫れてかさぶた状の傷跡になっている。
- 何もしていないのに酷く体がだるく疲れたように感じる。
手足以外の体幹部に沢山出る(感染してから10日から14日後に出る)
日本紅斑熱の発疹手足に集中して沢山出る(感染してから2日から10日後に出る)
噛まれると痛い?
マダニによる日本紅斑熱の感染は重篤な症状を引き起こしますが、噛まれても痛みがなく痒みも出ないので気づかないうちに血を吸われている状態になる人が大半です。
敏感な人では噛まれる感覚を感じることもあるようです。
感覚としては針先が軽く触れたぐらいのチクッとした刺激が一瞬走るのだそう!
もし子どもが「なんかチクッとする!」と言うようなことがあったらすぐにその部分を見てあげるようにして、マダニが付着していないか確認しましょう。
噛まれやすい部分はあるの?
首すじなど衣服で隠れていない皮膚の柔らかい部分を好んで噛む特徴があります。子どもは背も低いこともあって、隠れやすい髪の毛を狙って頭に噛みつかれることが多いようです。
原っぱや草むらなどで遊んできたあとにはホコリを取るような感じで髪をかきわけて、頭にマダニが付いていないかチェックしましょう。
どんなところに、いつ頃あらわれるの?
西日本の太平洋沿岸部、関西よりも西の温暖な地域が主な生息地域といわれます。
でも最近では温暖化の影響もあって全国のあちこちで出没傾向にあるので次のような場所にでかけるときには用心しておきましょう。
マダニがいる場所
- 山の中
- 畑や農道
- 20㎝以上の丈の草が生える野原や草むら
- 道路脇や公園の隅などの雑草が生い茂るところ
- 枯れ葉や落ち葉などが溜まる場所
- 雑木林
- 野良猫がよくいる茂みや、野生動物の通り道になっているところ
繁殖しやすく出没するシーズン
春先から秋にかけて出没し、特に5月の中旬から夏場の間が遭遇しやすいので要注意です!
シーズン以外の冬場でも気温が高いと活動が活発になることもあるので、マダニが活動する気温を知識として覚えておきましょう。
マダニが活動する気温気温 | 活動 |
---|---|
5℃ | おとなしく殆ど動かない |
10℃以下 | あまり動かない |
15℃以上 | 活動が活発に!噛まれるので注意! |
噛まれても慌てないで大丈夫!
ここまで、マダニについて説明してきましたが、決して無駄に怖がらなくても大丈夫です。
先にあげましたが、すべてのマダニが日本紅斑熱の感染源であるリケッチア菌を保有しているとは限らないからです。
そして、生息域も限定されているので生息場所をよけていれば、日常のなかではさほど心配がいりません。
お医者さんの中には、噛まれているのを見つけてもピンセットなどでつまんで取って様子をみていれば大丈夫だという考えもあったりします。
ただ無理に取ろうとするとマダニの鋭い歯が皮膚内に残って、病原体を持っている場合に感染発症率を高める恐れもあります。
子どもだと何かと不安なので、もしマダニが体に付いていたら慌てずに救急や皮膚科に電話をかけてどのような対応を取ればよいのか指示を受けましょう。
もしダニがポロッと皮膚から離れた場合は潰さずにビニール袋に入れて、受診の時に見せると対処が的確になります。
噛みついている状況での正しいアクション
- 勢いよくシャワーをかけたり、手でつまむなどしてマダニを無理に取ろうとしない。
- 病原体から細菌が拡散するのでつぶさない。
- すぐに医療機関で取ってもらう、もしくは医療機関や救急に電話をして対処法を聞く。
関連記事:布団のダニに掃除機って効果あるの?選び方&おすすめ商品は?
3.赤ちゃんと子どもにマダニを寄せ付けないための予防対策
マダニ対策の基本はマダニのいるところに近寄らないことが原則です。では実践するための細かな予防対策をみていきましょう。
虫よけを塗布する
虫よけを使うのは基本中の基本となる予防対策です。肌が露出する部分には特に丁寧に塗布するようにします。
マダニなど感染症を引き起こす虫よけにはディートと呼ばれる忌避成分が有効とされていますが、ウキペディアなどを見ると乳幼児には成分がきついイメージがあり、顔などへの塗布が難しいと書かれています。
野生動物の出現するような山のアウトドアではなく、レジャーや遊びの中であれば子ども向けの優しい成分の虫よけが一番です。
草が生い茂る場所では、プラスして服の上から虫よけスプレーを吹きかけておくとより安心です。
赤ちゃんや子どもにディートがよくないのは?
ディートは虫を忌避するために開発された化学成分です。色々な虫よけ製品に含まれていますが、毒性は低いものの体に害を及ぼすことが知られています。
子どもむけの虫よけにも安全な範囲の量で使われていますが、メーカーによっては乳幼児への使用は控えるように推奨していることからも、おすすめできない虫よけ成分といえます。
国民生活センターの商品テスト部でも次のようにアドバイスしています。
ディート成分を含む虫よけを乳幼児に使うときの注意点- エアゾール(スプレー)タイプは付着効率が悪く、呼吸によって子どもが成分を吸い込む恐れがある。
- ディート成分や濃度を表示していない虫除け製品もあるので注意すること。
- 手や顔への使用は控えて、衣服で虫よけをするなど対応するのが好ましい。
使ってはダメ!とは断言されていませんが、文言から類推するとやっぱり使うのはNGと捉えるのが子どもには正解だと思います。
ハーブやアロマなどの自然の香りで虫をよけるタイプが断然に安心ですね。
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アトピーのお子さんにも好評の虫よけはディート不使用の天然ハーブ素材が自慢。HPにはディートの恐ろしさも記載されているので必見です!
関連記事:アロマの虫除けスプレーの効果&作り方は?赤ちゃんにも使えるの?
肌の露出部分を出来るだけ少なくする
普段の遊びの場では暑い夏の日に長袖を着せるのはかわいそうな気もします。
外遊びでは虫よけだけの対応で十分ですが、あきらかに草木の生い茂る場所に入るときには服装を長袖・長ズボンにして肌の露出を少なくします。
完全なアウトドアや山のレジャーでは、首にタオルを巻き、帽子をかぶると更に安心です。
足元もサンダルはやめて靴下を履き、できれば靴下の中に長ズボンを入れ込んだり長靴を履くなどして肌を完全防備しましょう。
ベビーポイント赤ちゃんはお散歩のときはガードレールの草むらなどに近づかないコースにして、足もとは肌を露出しないように気を付けましょう。
ベビーカーに座ると足首が出やすいので長い靴下を履かせてあげるのが良いですね。ベビーカー用の蚊よけネットを使うと更に安心です!
マニト(MANITO) マジックシェード 日よけ&虫よけネットセット
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夏の強い日差しも遮る機能が付いた虫よけシェードは足元まですっぽり覆うので安心!装着したまま赤ちゃんを乗り降りできるので、ママには嬉しい機能です。
極端に草木が生い茂る場所には行かせない
30センチ以上の背丈のある草むらではマダニがいる可能性が高くなります。それは、葉の裏に潜んで吸血源となる動物を待ち構えやすいからです。
あまりにも草木が生い茂っているところは子どもでは危険です!レジャーで山へ行くときなどには、獣道と言われる野生動物が通ってできあがった道にも立ち入らないようにします。
登山ガイドさんによると、笹の葉の群生地にマダニが多いそうです。葉に白いフチのある熊笹が生えているところは特に要注意です!
地面に直接触れさせない
平坦な地面なら大丈夫ですが、やはり雑草が生い茂る場所では直にお尻を付いて座るのはNGです。
子どもは良くふざけて遊びの中で寝転がったりするなど予想もつかないアクションをおこすものです。遊びに行くときには草むらでは座り込んだりしないように話しておきましょう。
心配な場合は丈の長いパンツを履かせるのが得策です。アウトドアで座る場面では、レジャーシートを必ず持参します。
ベビーポイントレジャーシートを広げてお弁当を楽しむ季節では、敷物を敷く場所にも気を使いましょう。赤ちゃんは特に地面との距離が近いので草むらや茂みのそばはNGです!
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体に無害な防虫成分が入ったレジャーシートは蚊やノミからも守ってくれるので安心!洗濯もできるのでハイハイ期の赤ちゃんにもおすすめです。
家に帰ったら、体をチェック!
家に帰ったら、まず体の隅々をみて黒い物体=マダニが付着していないか確認しましょう。玄関の外で必ずチェックして、一度手で全身を払いましょう。靴などを含めた足元も忘れずに!
子どもではマダニの付きやすい頭を特に用心深く見ます。
もし、家族で山などへレジャーに行った場合は、着ていた衣類はいったんビニール袋などに入れて口をしばり、直ぐに入浴して体をキレイにするとより安心です。衣服はなるべく早く洗濯するのが理想です。
ベビーポイントベビーカーはマダニが付きやすいので要注意です。膝にかけたブランケットなどにもぐりこまないように虫除けで予防しておきたいですね。
草むらに近い場所をお散歩した後は足周りを中心にマダニが付いていないかきちんとチェックしましょう!
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0か月からも使える安心成分はシトロネラールなどのアロマの香りで虫を寄せ付けません。お出かけ前のベビーカーにミストをかけてマダニとバイバイしましょう。
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さいごに
マダニは昔から日本に生息する害虫です。草の生えている場所では遭遇は回避できませんが、やはり普段から抵抗力や免疫力をつけておくこともマダニの感染症を回避する一つの対策といえます。
免疫力が低下していると感染症に打ち勝つ力を持つことができません。バランスの良い食事、規則正しい食生活、沢山の遊びを通じて心身ともに子どもの健康をサポートしてあげましょう。