今や不妊は6組に1組のカップルが悩んでいるとも言われ、少子化の日本にとっては深刻な問題です。
しかしその原因は分からないことが多く、必ずしも病気が原因ではありません。そこで、不妊の改善に抗かがるのではと今注目されているのがミトコンドリアです。
ミトコンドリアで不妊症が本当に改善されるのか、ミトコンドリアの働きや不妊との関係をまとめました。
ミトコンドリアとは?
私たちは食事をし、呼吸をすることで生きています。食べたものから栄養を吸収し、酸素を取り入れてそれを代謝することでエネルギーを生み出しています。
この、エネルギー産生に関わっているのがミトコンドリアです。
細胞の中にある器官
ミトコンドリアは誰の身体にもあるものです。私たちの身体はおよそ60兆個の細胞からできていますが、その一つ一つにミトコンドリアがあります。
しかも、細胞一つに数百から数千のミトコンドリアがいるのです。
食べたものをエネルギーに変えるためには、消化吸収し、分解しなくてはいけません。
食べたものを分解して出来るエネルギーをATP(アデノシン三燐酸(さんりんさん))と呼びます。ATPは生物が生きていく上で不可欠なエネルギー源です。
ミトコンドリアは食べたものを電気に変換し、そのエネルギーを使ってATPを作り出します。ミトコンドリアは1日でおよそ50kgのATPを作ることができます。
細胞の中にあるミトコンドリアですが、遺伝子と違って母親からしか受け継がないのです。
精子にもミトコンドリアは存在するのですが、受精後に精子由来のミトコンドリアは消えてしまうため、卵子に合ったミトコンドリアだけを引き継ぐことになります。
ミトコンドリアと不妊の関係は?
そもそもの不妊の原因もまだよく分かっていない中で、なぜミトコンドリアと不妊の関係が取り沙汰されているのか、それは老化と関わりがあるからです。
ミトコンドリアと卵子の老化
ミトコンドリアには質があります。質が低下すると活性酸素を大量に作り出すようになり、それが細胞の酸化をもたらします。
細胞が酸化するということは、老化するということ。それは卵子についても例外ではありません。
ミトコンドリアの質の低下が酸化を招き、卵子老化の最大の原因になると考えられているのです。
加齢とともに卵子も老化し、それで段々妊娠しづらくなることは分かっていましたが、その大きな原因がミトコンドリアの質の低下だったのです。
卵子を取り出し受精させた後に母体に戻す方法を体外受精といいますが、卵巣から採った「卵子前駆細胞」を卵子に注入して体外受精をさせる方法も試みられています。
これは、卵子前駆細胞には質の良いミトコンドリアがあることから、卵子を若返らせて質を高めることが出来ると考えられているためで、実際に妊娠に成功した人もいるとのことです。
まだ臨床研究の段階なので、ミトコンドリアと卵子の若返りがはっきりと関連づけられたわけではないのですが、ミトコンドリアの質を上げることで卵子の質も良くなるのではと注目を浴びています。
男性不妊の原因にもなる
不妊の原因は女性だけにあるのではなく、およそ半数は男性側にあるといわれています。これにも実はミトコンドリアが関係していると考えられています。
年齢とともに劣化していくのは卵子も精子も同じことです。卵子が月に1度排出されるのに対し、精子は毎日作られていますが、だからといって常に新鮮であるわけではないのです。
精子も卵子と同じように運動能力などが低下していきます。これもミトコンドリアの働きが悪くなることが原因だと考えられています。
妊娠に必要なミトコンドリアの活性化
例えば婦人科系の疾患や卵管の癒着など、器質的に妊娠できない問題がある場合を除いて、健康であるにも関わらず妊娠できないのは、精子や卵子の働きが悪くなっているからです。
精子や卵子を薬で若返らせることは現代の医学でも不可能で、細胞自体を活性化させるしかないのです。
それにはミトコンドリアの質を高め、活性化させていくこと。これが不妊の改善につながると考えられています。
ミトコンドリアを増やす方法は?
「ATPが足りない!」と思うと、ミトコンドリアはせっせと活動しようとし、数も増えて質も向上します。
つまり、身体がエネルギーを必要としているということを細胞に分からせれば良いということです。
ミトコンドリアを増やす食べ物
ミトコンドリアを増やすためには栄養バランスのよい食事が一番ですが、効率的に増やすことが出来るといわれている食べ物もあります。
マグネシウムを含むもの
マグネシウムは大豆製品や乾物など、日本人が古くから食べてきた食材に多く含まれているのですが、食の欧米化により不足しがちになっている栄養素です。
マグネシウムはミトコンドリアの細胞膜において重要な働きを担っている栄養素であるため、マグネシウムが不足するとミトコンドリアの働きが悪くなると考えられています。
マグネシウムを含むのは、下記のような食材です。
- きなこ
- 大豆
- 油揚げ
- 凍り豆腐
- 納豆
- アマランサス
- 煮干し
- ひじき
- 昆布
タウリンを含むもの
タウリンはマグネシウムの働きを活性化させることから、間接的に卵子や精子の質を高めることに役立つと考えられています。
魚介類、特にイカやタコ、さざえに豊富に含まれています。肉類にもタウリンは含まれているのですが、魚介類にはかないません。
ビタミンB群を含むもの
ビタミンB群は代謝に関わり、造血のためにも必要なビタミンです。新陳代謝を高めて身体を若く保つために大切な栄養素です。
ビタミンB群を含むのは、下記のような食材です。
- 豚肉
- レバー
- うなぎ
- たらこ
- 玄米
ニラやにんにくなど「アリシン」を含むものと組み合わせると、代謝を高めるビタミンB1の働きがよくなるといわれているので、香味野菜と組み合わせると良いでしょう。
鉄分を含むもの
鉄分は酸素を運ぶだけでなく、酸素をつかったエネルギー生産にも関わっているため、鉄分が不足するとミトコンドリアがうまく働けなくなり、エネルギーを作れなくなってしまうのです。
鉄分を多く含むのは、下記のような食材です。
- レバー
- ひじき
- 卵黄
- アマランサス
- アサリの佃煮
- 切り干し大根
女性は毎月の生理で鉄分を失いやすいので、特に意識して摂取して欲しいものですが、鉄分は吸収率が非常に悪い栄養素でもあります。
たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収率をアップするので、オレンジジュースを飲んだり、デザートに柑橘類やキウイなどのフルーツを食べるのもおすすめです。
ミトコンドリアを増やす生活習慣・運動
ミトコンドリアを増やすためには運動すること!これが一番大事です。運動不足はミトコンドリアの質を低下させ、体内に活性酸素を増やしてしまいます。
とはいえ、激しい運動、きつい運動をする必要はありません。
筋肉の量を増やすスクワット
私値の身体で一番大きな筋肉は太股の筋肉です。ですから、筋肉量を増やすなら太ももを鍛えるのが最も効率的なのです。
そこでおすすめの運動がスクワット。ただし、たくさんの回数をこなす必要はありません。数は少なくても構わないので、しっかりと負荷をかけていけばいいのです。
初心者でもやりやすいスロースクワットがおすすめです。
片足立ちをする
太ものの筋肉を鍛えるには、これだけでも有効です。毎日1分間、片足立ちをしてみましょう。バランス感覚も養えるので一石二鳥です。
サーキットトレーニング
サーキットトレーニングとは、軽めの運動と強めの運動を交互に繰り返す運動のことです。例えば、
- 30秒間早めに歩く(小走りするような感じ)
- 1分普通にゆっくり歩く
これを繰り返すだけなんです。ウォーキングをしながら、間に小走りを挟んでいくイメージです。
というのも、ミトコンドリアは短距離走のように瞬発力を必要とする運動で使う「白筋」よりも、持久力を必要とする運動で使う「赤筋」に多く含まれているからです。
持久力を鍛えるようなウォーキング、スロージョギングなどの運動に加え、合間にやや心拍数を上げる運動を織り交ぜることでミトコンドリアを効果的に増やすことが出来るといわれています。
常に良い姿勢を心がける
立っている時に猫背になったり、椅子に座れば背もたれに寄りかかったりと、力を抜いた状態でいるとミトコンドリアが弱ってきます。
それは、背中や太ももの筋肉にミトコンドリアが多く含まれているからです。
つまり、あえて運動する時間がとれなくても、背筋をピンと伸ばし、良い姿勢でいるだけでも立派な運動になり、ミトコンドリアを増やすことが出来るのです。
やってみると分かりますが、デスクワークで1日背もたれに寄りかからずに仕事をするのは結構大変なものです。それだけ筋肉が鍛えられているということでしょう。
仕事中はもちろん、信号待ちや電車の中など、あらゆるところで姿勢を正すことを心がけてみてください。
ヨガや太極拳もおすすめ
姿勢を良くする、下記のような運動などもおすすめです。
- ヨガ
- 太極拳
- 水泳
- ピラティス
激しい運動ではありませんが、酸素をしっかり取り入れながら背中や太股の筋肉を効率的に鍛えることが出来ます。
寒さを感じること
人の身体は寒さを感じると「エネルギーが必要だ!」と思うように出来ています。ですから、寒さこそがミトコンドリアを活性化させるのです。
そこでおすすめなのが温冷浴です。これは家でも簡単にできます。
やや熱めのお風呂につかった後、水シャワーを浴びる、これだけです。お風呂→水シャワーを何度か繰り返し、最後は水シャワーで終わります。
最初は冷たいと感じる水シャワーも、何度か繰り返すうちに身体がポカポカと暖かくなってくるでしょう。それこそがミトコンドリアが活性化している証拠なのです。
空腹を感じること
空腹も身体にエネルギー不足を感じさせるために必要なことです。大してお腹がすいてもいないのにだらだらとお菓子を食べたりするのはミトコンドリアにとって良くないことです。
まずは腹八分目を心がけ、次の食事までにしっかりとお腹が空かせることが大事です。そして、食事の時間にお腹がそれほどすいていないなら、無理して食べなくてもよいのです。
ただし、極端なカロリー制限や無理な断食などは行わないでください。それはかえって健康を損ないます。具体的には、普段の食事から25%カロリーを減らすとミトコンドリアが増えるといわれています。
栄養バランスのよい食事を適度に食べ、無駄な間食はしない、それだけでも十分空腹を感じることは出来るはずです。
まとめ
結婚したくない、子供はいらないという人が増えているといわれる一方で、子供を望んでいる人もたくさんいます。
せっかく子供を育てようとしている人たちが不妊症で苦しんでいるのはとてもやるせないことだと思います。
ミトコンドリアは年齢に関わらず増やせるといわれていますから、卵子の若返りにも役に立つはずです。増やすために特別なことは必要ありません。
筋肉をつかうことを心がけたり、栄養バランスの良い食事を摂ることで増やしていけます。諦めずに取り組んでみてください。