育児ノイローゼは子育て中のお母さんであれば誰もがなり得るものです。育児ノイローゼを解消するために最も重要となるのは、一番近くにいる立場である夫の理解ある言動です。
妻が育児ノイローゼかもしれないと感じたときの、夫としてできることや適切な接し方などを紹介します。
妻の話を聞く
話を聞いて貰えるだけで気持ちが楽になったという経験は、誰にでも一度はあるのではないでしょうか。夫に求められるのは、妻の話を真剣に聞いてあげる姿勢です。
コミュニケーションにおいて、この「聞く姿勢」というものはとても重要で、その姿勢によって話し手の感じ方というものは大きく違ってきます。
話を聞いてくれたおかげでスッキリしたという経験がある人は、そのときあなたの話を聞いてくれた人の姿勢を思い返してみてください。きっと真剣に話を聞いてくれたのではないでしょうか?
何かをしながら片手間に聞いていたのでは「聞いてるの!?」「ちゃんと聞いてよ!」と話し手は感じてしまうものです。ときには妻と向き合って、じっくり訴えに耳を傾けてあげてください。
妻の話に共感する
妻が夫に対して求めているものは「共感」の姿勢です。妻の話を聞いたとき、何かアドバイスしようとか、話の内容を正そうといったことは考えなくてもよいのです。ただ優しく相槌をうちながら、訴えに耳を傾けてあげましょう。
具体的な例を挙げると、例えば妻に次のように言われたとき、あなたならどう答えますか?
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”mother.jpg” name=”妻”]何だか頭が痛いの。寝不足だからかも。[/speech_bubble]これに対して次のどちらの返答が妻が求める反応だと思いますか?
ケース1 [speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”father.jpg” name=”夫”] いや風邪だと思うよ。薬飲んで横になってきたら?[/speech_bubble] ケース2 [speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”father.jpg” name=”夫”] 頭が痛いの?寝不足なら横になってきたら?[/speech_bubble]一般に女性が求める傾向にあるのは、後者のケース2の方です。横になるよう勧める点では同じで、一見どちらも思いやりのある返答に思われます。
「寝不足かも」と訴える妻に、「それはきっと風邪だ」として薬を飲むようアドバイスしている前者よりも、ただ妻の言葉を繰り返している後者の方が好印象なのは何故でしょうか?
それは妻はアドバイスが欲しいわけではなく、ただ自分の言葉に共感して欲しいと思っているからです。薬を飲むというアドバイスがいくら適切だとしても、寝不足を風邪だと言い変えられた前者では、訴えを否定されたような気持ちになってしまいます。
相手の言葉を繰り返すという方法は、カウンセリングにも取り入れられている技法です。相手の話を積極的に傾聴しながら、相槌(あいづち)や頷きを返し、ときに話に出てきた言葉を繰り返すことは、共感と受容を示す接し方の基本とされています。
育児を手伝う
育児ノイローゼはその名の通り、育児の負担がノイローゼの原因となります。少しでも育児を手伝い、妻にかかる負担を減らしてあげましょう。
その際、「何して欲しいの?」と聞いたりせず、出来ることを探して積極的に行う姿勢を見せることが大切です。着替えやオムツ交換をする、ミルクや離乳食を与える、遊んであげるといった基本的なことで構いません。
「これだけでも自分にはひと苦労だ。ママは毎日大変だな。すごいな」といったことを伝えてあげると、日々の苦労を分かって貰えた気がして気持ちが軽くなるはずです。
家事を手伝う
妻の負担を減らすためには、家事も積極的に手伝ってあげてください。何を手伝っていいかわからないからと言って、「しようか?」と事前に尋ねるのはお勧めできません。
育児ノイローゼは人に頼るのが苦手で、何でも自分で行おうとする性格の人に多くみられますから、「しようか?」と聞かれても、「じゃあお願いね」と素直に頼れない人が多く、「大丈夫」と強がってしまいがちです。
パートナーがそうした性格である場合、「やるから休んでていいよ」とすぐに取り組むか、「やっておいたよ」と事後報告したほうが良いでしょう。
妻の頑張りをねぎらう
相手を励まそうとつい「頑張って」と言ってしまいがちですが、落ち込んでいる人に対してこの言葉はタブーです。既に精一杯頑張っているにもかかわらずこんなふうに励まされると、「やっぱり自分は頑張りが足りないのか」「もっともっと頑張らないと」と自分自身を追い込んでしまいがちです。
頑張り過ぎた結果が育児ノイローゼであるということをよく理解し、これまでや今現在の頑張りを認め、ねぎらいの言葉をかけてあげてください。
自分ではねぎらっているつもりであっても、言葉にして言わなければ伝わらないこともあります。「いつもお疲れさま」の一言があるのとないのとでは大違いです。
ねぎらいの言葉というものは相手への思いやりから生まれるものであり、相手のことを大切に思っているという意思の表れでもあるのです。
日頃の感謝を伝える
ねぎらいの言葉とともに、感謝の言葉も伝えましょう。「ありがとう」という言葉は、それだけで相手の存在や行動を肯定する意味を持ちます。
肯定してもらえることによって「自分は間違っていないんだ」「自分には支えてくれる人がいるんだ」と安心感や自己肯定感が得られ、自信にも繋がります。互いに感謝し合える夫婦は、信頼関係も厚いものです。
「この人となら頑張っていける」と互いに思い合うには、日頃からの感謝と労わりの言葉が必要不可欠なのです。
一人になれる時間を確保してあげる
子どもが小さい間は、お母さんはどこへ行くにもお子さんを連れて行かなければなりません。一人であればすぐに済む買い物も、お子さんがいると2倍、3倍と労力を使います。
子どもと一緒にいることが当たり前になっているお母さんにとって、一人になれる時間はとても貴重です。
ときには子どもを預かって、一人で自由に行動できる時間を作ってあげてください。そうすれば心身共にすることができ、また頑張ろうとやる気も出てくることでしょう。
妻の変化を受け入れよう
女性は子どもが生まれると、子育てモードへと切り替わるようにできています。子どものことを何よりも優先して考えるようになりますから、「自分は二の次になってしまった」と寂しく感じる男性も多いです。
産後の女性は性的な関心も薄れる傾向にありますが、これらの変化はプロラクチンをはじめとする女性ホルモンの変化によるものです。
一方男性は女性と違い、父親になったからといって身体には何の変化もないわけですから、産前と同じように妻に求めてしまいがちです。これまでは喜ばしかった夫の接し方が、母親となった女性にとっては一変して煩わしいものとして感じられることが多々あります。
この時期の男性は、産後の妻の変化を生理的なものと受け入れて接することが大切です。決して嫌いになったわけではありませんから、この時期に優しくしてくれたパートナーへはこれまで以上に尽くそうと思えます。
逆に冷たくされたからといって拗ねたり不満を口にしたりしていると、さらに妻はそんな夫に苛立って、中には夫への愛情が冷めてしまうケースもあります。この時期に夫婦関係が悪化し、残念ながら離婚に至ってしまうケースは決して少なくありません。
病気であることを理解しよう
育児ノイローゼは心の病気です。決して、甘えなどではありません。
残念なことに、世の中には育児ノイローゼは甘えだと考えている人がいます。そのような考えをもつ人は、当然本人を責めるようなことを言ってしまいがちで、また口を出す割りに自分は手伝おうとはしない傾向にあります。
もしそんな夫が傍にいた場合、その所為で育児ノイローゼを患ってしまったと言っても過言ではありません。育児ノイローゼは頑張り過ぎたために起こるものであり、甘えとは程遠いということを理解しなければなりません。
感情的な言葉に反論しない
育児ノイローゼになるとイライラすることが多くなり、子どもや夫に対して感情的な態度をとってしまうことがあります。あくまでも育児ノイローゼによって生じている症状ですから、情緒が安定して病状が良くなればそのようなことはなくなります。
この時感情的な言葉に対して反論しても、何の解決にもならないばかりか、病状を悪化させてしまいます。感情をうまくコントロールできなくなっている本人が一番つらい思いをしているということを、どうか忘れないであげてください。
家事が手抜きでも文句を言わない
育児ノイローゼでは、何をするにも億劫になるという傾向があります。そんな時は無理に頑張ろうとせずに、手を抜けるところは手を抜くことが大切であるということを理解してあげましょう。
家事が手抜きだからといって文句を言ったりせず、不十分だと感じた部分を黙って手伝ったり、労わりの言葉をかけてあげたりするとよいでしょう。
必要なら病院へ連れていく
夫は妻の最も近くにいるわけですから、妻の異変に一番最初に気づいてあげられる存在です。もしも「ひょっとして育児ノイローゼかな?」と思うようなことがあれば、育児や家事を積極的に手伝って妻の負担を軽減し、妻の言葉に耳を傾けてあげてください。
軽度のものであれば育児ストレスを軽減してあげることで軽快しますが、病状によっては病院での治療が必要となることもあります。育児ノイローゼになってしまうと思考力が鈍ってしまい、自分では正常な判断ができなくなることがあります。
そうしたケースでは周囲から病院へ行くよう促したり、付き添ってあげることが求められます。重症になると子どもへの虐待に至ったり、ついには自殺に追い込まれるケースもありますので、そうなる前に近くにいるあなたが助けてあげてください。
関連記事:育児ノイローゼを治すには?病院での治療は?どこに相談したらいい?
まとめ
妻が育児ノイローゼかも?と思ったときには、まずは本人の訴えに耳を傾け、共感してあげることが大切です。家事や育児などでできることは積極的に手伝うようにし、妻の負担を軽くしてあげましょう。
夫婦にとっては試練のときですが、協力し合って乗り越えられることを願っています。つらいときに支えてくれたパートナーは、これから先もずっと大切な存在になるはずです。