妊活中には、妊娠しやすい健康な体を作ることがもっとも重要で、それには食事が大きく関わります。
もし特に何も意識せずに食事をしているとすれば、夫婦で一度見直してみるのがいいかもしれません。
妊活中の食事の基本は、バランスの良い食事です。ですが食べ物の中には、妊活中には控えた方がよいとされる物があります。
そこで今回、妊活中にNGな食べ物や飲み物を男女別にピックアップし、なぜそれを控えた方がよいのかについても解説します。
妊活中における食事の影響
妊活中は、赤ちゃんを迎えるための準備期間です。食事で摂取する栄養素は、そのまま卵子や子宮の状態に影響し、赤ちゃんの成長に影響します。
つまり、妊活中に控える食べ物とは、妊娠しやすい体内環境を妨げる食べ物と、赤ちゃんが健康に育つことを妨げる食べ物ということになります。
妊活中の女性にNGな食べ物・飲み物
妊活中の女性には要注意で、できる限り避けた方がよい食べ物や飲み物があります。
体を冷やすもの
「冷え」は妊娠には大敵です。日常的に体が冷えていると、「黄体ホルモン」の分泌に影響があり、妊娠しにくくなったり、赤ちゃんが成長できなかったりする可能性があります。
冷たい飲み物やアイスクリーム、かき氷など、暑い夏には欲しくなりますが、妊活中には控えた方が望ましいのです。
必ず温かい物でなければいけないとは言いませんが、冷たいものがほしいときでも常温程度にしておきましょう。
「夏野菜は体を冷やすから、妊活中は食べない方がよい」といわれることもあります。
しかし夏に旬の野菜は、ビタミンが豊富なうえ熱が体にこもらないようにクールダウンする働きがあり、暑い夏を乗り切るためには必要な食べ物です。
トマトやキュウリ、ナスやレタスなどの夏野菜をサラダなどで大量に食べれば、体が冷えてしまうかもしれません。
ですが、調理して温かくして食べたり、塩や味噌、梅、しょうがなど体を温める食べ物と一緒に食べるなどの工夫をして、適量を摂取すれば問題はありません。
豆乳は、女性ホルモン「エストロゲン」に似た働きをする「イソフラボン」を含んでいて、体に良いといわれていますが、実は、体を冷やす作用があります。
また、過剰摂取になると、女性ホルモンのバランスを崩してしまい、子宮内膜症や不妊症の原因にもなることがわかっています。
飲むのであれば、1日200ml程度の摂取が良いとされています。
手軽にたくさんの野菜を摂ることができ、美容にも健康にも良いということから、毎日飲んでいる人もいるでしょう。
ですが、体に良いものであっても、そのままでは、体を冷やしてしまうことになりかねません。妊活中は、できればホットで飲むようにしましょう。
トランス脂肪酸
「不飽和脂肪酸」の一種であるトランス脂肪酸は、卵巣機能を低下させる恐れがあるといわれていますので、できる限り摂らないように気をつけましょう。
日本では、まだ正式な研究結果として発表されていませんが、欧米では明らかな健康被害の報告があり、すでに規制されています。
しかし、日本でも、過剰な摂取により生活習慣病などのリスクがあることも懸念されています。以下のような物が、トランス脂肪酸を含有している代表的なものです。
- ジャンクフード(ファストフード系)
- スナック菓子
- マーガリン
- ショートニング
- マーガリン・ショートニングを使用したスイーツやお菓子
- 冷凍食品
- インスタント食品
大型の魚(含有成分:水銀)
厚生労働省は、「妊婦は魚に注意」という呼びかけを2005年から行っています。それは、マグロなどの大型の魚には、水銀が含まれていることが問題にされているからです。
水銀は、胎児の神経に影響を及ぼして、異常が出る危険性があることがわかっています。
もちろん、マグロを食べただけで、妊娠した際に必ず赤ちゃんが病気になるのではありません。
ですが、赤ちゃんが育つ母体の健康には可能なかぎり注意をはらうことが望ましいため、妊活中から気をつけておきましょう。
もともと自然界には無毒な水銀が存在しているのですが、川や海で微生物により有害なメチル水銀に変化します。
その微生物を魚が食べるという食物連鎖によって、魚の中には水銀が蓄積されていきます。したがって、大型の魚ほど多くの水銀が蓄積していることになります。
人間は、大人だけでなく子供であっても、魚を食べても体外に水銀を排出することができます。しかし、胎児には水銀を排出する機能がありません。
安心して食べることができる基準を示しておきます。(通常80g/1人前、寿司ネタ1貫15g程度)
- 1週間に1回(80g/回)まで:メカジキ、金目鯛、クロマグロ、メバチ、マグロ
- 1週間に2回(80g/回)まで:キダイ、クロムツ、マカジキ、ミナミマグロ
魚には、DHAなどの栄養素が豊富なので、イワシやサンマなどの種類を適量食べるのがよいでしょう。
細菌感染の恐れがある食べ物
妊活中にNGな食べ物の中でも、細菌に感染する恐れのある食べ物は、口にしないことをおすすめします。
生もの(生肉、生魚・貝、生卵)
生ものには、サルモネラ菌、トキソプラズマ、O-157、ノロウィルスなど、さまざまな細菌が存在する可能性があります。
母体が感染することで、赤ちゃんに視力障害や脳性麻痺などの先天的な障害が起こったという報告がありますので、注意が必要です。
生レバーやユッケなどは美味しいものですが、いつでも妊娠できる体であるためには、赤ちゃんに影響が出る恐れのある食べものはできる限り控えましょう。
特に生の貝類は、よほど新鮮なものでないとノロウィルスに感染する危険性があります。
生卵にはサルモネラ菌がついている可能性があり、食中毒の恐れがあります。妊娠中は、免疫が低下しているため、食中毒にかかるリスクが高くなっています。
食中毒では、胎児に先天的な異常が起こるなどといった直接の影響はありませんが、激しい腹痛や嘔吐のために子宮が収縮して、流産や早産の危険性が高まります。
妊活中は、「妊娠している可能性がある」ということをいつも頭においておくことが大切です。
また、サルモネラ菌は不妊症を引き起こす可能性があるともいわれているため、極力避けることが望ましいのです。
ナチュラルチーズ(加熱処理がなされていないチーズ)
ナチュラルチーズのように生のチーズは、避けたほうがよい食べ物です。
チーズは栄養価が高く、体に良いものだと思われていますが、カマンベールチーズやモッツァレラチーズのように加熱殺菌されていないチーズには、「リステリア」という菌がついている可能性があります。
リステリアは、子宮や卵巣、胎盤などに付きやすい菌で、不妊症の原因になります。また、妊娠している場合には、流産や死産の危険性が高まります。
チーズを食べるのなら、プロセスチーズ(低温殺菌済み)であれば、問題なく食べることができます。
ナチュラルチーズの場合は、ピザやグラタンなどで加熱をして食べるのであれば心配はありません。
摂取過剰に注意するべき食べ物・飲み物
摂らないように制限する必要ばないけれども、過剰な摂取には気をつけた方がよい食べ物があります。
カフェイン
コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれているカフェインは、要注意です。
1日に300mg以上(5杯以上)摂取し続けると、不妊症になりやすくなることが明らかになっています。その確率は40%以上だとされています。
できるなら摂取しない方が望ましいのですが、コーヒーが好きな人にとっては、きっぱり止めることはかえってストレスになるかもしれません。飲む場合は、1日に1~2杯にしておきましょう。
主な飲み物の1杯あたりのカフェイン含有量は以下のとおりです。
- コーヒー:50~100mg
- 紅茶:30㎎
- 煎茶、ウーロン茶、ほうじ茶:20~40㎎
- 麦茶:0㎎
- 抹茶:48㎎
- 玉露:200㎎
砂糖や炭水化物などの糖質(甘いもの、白いもの)
糖質は体内への吸収スピードが速いため、血糖値を急上昇させてしまいます。
過剰な摂取が原因で、ホルモンバランスが乱れる可能性があり、排卵にも影響がでる恐れがあります。また、太りやすくなることも要注意です。
ごはんやパン、麺類などの炭水化物(白いもの)は、大量な摂取を控える必要があります。妊活中には、玄米やライ麦などに置き換えることがおすすめです。
砂糖が入ったお菓子や清涼飲料水は控えるようにしましょう。
動物由来のビタミンA(レバーなど)
レバーにはビタミンAの一種であるレチノールが含まれています。レチノールは動物由来の食品に含まれていて、過剰に摂取すると胎児の先天性異常が起こる可能性があります。
「動物由来のビタミンA」は、野菜や果物に含まれている「プロビタミンAカロテノイド」とは異なり、体外に排出されにくい特性を持っています。
内閣府の食品安全委員会では、妊婦のビタミンAの摂取上限を2,700ugREと規定しています。しかし推奨量は、650ugRE~780ugREと上限よりはかなり低くなっています。
妊活中は、いつ赤ちゃんを授かるかもしれないので、食べ過ぎないように注意しましょう。
食品100gに含まれているビタミンAは以下のとおりですので、食べる際には参考にしてください。鶏レバーや豚レバー、あんきもなどは、1切れで上限を超えてしまうため、注意が必要です。
- 鶏レバー:14000ug(1切れ40g:5600ug)
- 豚レバー:13000ug(1切れ30g:3900ug)
- 牛レバー:1100ug(1切れ40g:440ug)
- あんきも:8300ug(1切れ50g:4150ug)
- うなぎのかば焼き:1500ug(1串100g:1500ug)
- ぎんだら:1500ug(1切れ80g:1200ug)
- 卵黄:470ug(1個分18g:86ug)
ただし、一回多く摂取してしまったからといって、すぐに影響が出るわけではありません。
アルコール
妊活中のアルコール摂取に関しては、医学的にまだ明確になっていません。
しかし、妊娠中においては、母体からのアルコールの影響で先天性異常や未熟児、発達障害などの可能性があることがわかっているので、念のために、妊活中も控えた方がよいといえるでしょう。
ただ、お酒が好きな人には、いきなり「アルコール禁止」となれば、それはそれでストレスになるかもしれません。
ですが、妊娠すれば完全にアルコールを飲まないことがベストなのですから、妊活中から少しずつ減らすように工夫してみてはいかがでしょう。
妊活中の男性にNGな食べ物・飲み物
妊活中に食事に気をつけた方がよいのは、女性だけではありません。実は、精子の質を低下させてしまう食べ物や飲み物があります。
ファストフード
「安くて早い」がメリットになっているファストフードを、日常的に利用している人も多いのではないでしょうか。
しかし、ファストフードには、精子に悪影響を及ぼすことが明らかになっている「トランス脂肪酸」と「コレステロール」が含まれています。
アメリカでは、トランス脂肪酸をよく摂取している男性ほど、精子数が少なく精子量も少なるという研究結果があります。
また、悪玉コレステロールが増加すると、血液がドロドロになっていき血流が悪化し、ED(勃起障害)になる恐れがあります。
加工食品
一口に加工食品と言っても、かなり幅が広く、毎日の生活のなかで目にするものがたくさんあります。
肉、乳、練り物加工食品、ハム、ソーセージやスライスチーズなどがありますが、そこには、ph調整剤や乳化剤などが多く含まれています。
それらの代表的な成分であるリン酸塩は、男性機能の働きをサポートする亜鉛の吸収を阻害し、ミネラルなどの栄養分を体外に排出してしまいます。
妊活中の男性は、加工食品はできるだけ口にしないのが賢明です。
脂肪分の多い乳製品
1日に2品以上の乳製品(チーズや成分無調整牛乳など)を食べる若い男性は、精子の運動性が低下する傾向があるという報告があります。
一方、低脂肪乳を毎日飲んでいる男性は、精子の運動生が高いという研究結果もあります。乳製品の全てがNGではないので、量などを調節して摂取すればよいでしょう。
アルコール
大量なアルコール摂取は、男性の生殖器にダメージを与えます。慢性的に大量の飲酒を続けていると、以下のような影響があります。
- テストステロン値の低下
- 精子数の減少
- 精巣の萎縮
- 勃起不全(肝機能障害から引き起こされる)
また、アルコールを肝臓で分解する際には、体内の亜鉛やビタミンを消費してしまいます。それゆえ、精子を作り出す時に必要な亜鉛が、体内から減ってしまいます。
適度なアルコールは、ストレス解消になるため、体のためにも良いと考えられます。しかし、あくまで適量ということが大切ですので、飲み過ぎには気をつけましょう。
まとめ
妊娠しやすい体づくりのために、妊活中は食事に気をつけることが一番大切です。そのために、控えた方がよい食べ物もたくさんあります。
ですが、NGだといわれているのでも、ほとんどは大量に食べなければ、すぐに影響が出るものではありません。
あまり神経質にならずに、工夫をして食品を選び、楽しみながら食事をすることがおすすめです。
そして、いつでも赤ちゃんを迎え入れることができるように体の準備をしていきましょう。