妊娠中は特に栄養面において気をつけなければなりませんが、中でもカルシウムは非常に重要です。お腹の赤ちゃんの歯や骨を作るためには、大量のカルシウムが必要になります。
しかし母体に不足していると、お母さんの歯や骨に蓄積されたカルシウムを赤ちゃんへ運ぶことになってしまい、骨折しやすくなってしまいます。カルシウム不足によるケガや病気を防ぐためにも、カルシウムの必要量や摂取方法を知っておくとよいでしょう。
妊娠中のカルシウムの必要量は?
成人女性の一日におけるカルシウムの必要量は600mgですが、妊娠中ではおおむね900mgが必要になります。しかし妊娠中は時期によって摂取できる量が変わってきますので、あくまで900mgは目標として考えるようにしましょう。
妊娠初期
赤ちゃんの脳や心臓など様々な器官が作られる妊娠初期ですが、この時期はつわりによって食べられないことも多いです。
カルシウムの不足が気になるところですが、無理をせず、食欲があるときに食べられるものを食べ、栄養を補ってください。もし可能であれば、妊娠前の必要量である600mgの摂取を目指しましょう。
妊娠中期
妊娠中期はつわりも落ち着き、胎盤も完成して赤ちゃんがどんどん成長していく時期です。赤ちゃんに優先的に毎日150mgのカルシウムが送られていくため、母体はカルシウム不足に陥ってしまいます。目標となる900mgを摂取できるよう、食事に気をつけなければなりません。
カルシウムはビタミンDや乳糖と組み合わせて摂取することにより、効率よく吸収できます。カルシウムはチーズや桜エビや鮎に豊富に含まれていますので、食事に取り入れましょう。
また、牛乳は可能であれば500mlほど摂取するのが理想的です。ビタミンDはしらす干しやイワシや鮭が豊富ですので、上記の食品と一緒に食べられるとよいでしょう。体調が安定している限り、サプリメントは使わず食事でカルシウムを補ってください。
妊娠後期
妊娠後期になると赤ちゃんが大きくなり、そのぶん大量のカルシウムが赤ちゃんへ送られることになります。そのため妊婦さんの体がカルシウム不足になってしまい、くしゃみをした拍子に骨折することもあるほどです。これまで以上にカルシウムの摂取を心がけ、900mgをしっかり摂りましょう。
妊娠中期と同じくビタミンDや乳糖と組み合わせることが大切ですが、さらにマグネシウムも同時に摂取できるのが理想的です。マグネシウムには、カル シウムと共に歯や骨を作る働きがあります。歯や骨がもろくならないよう、マグネシウムを同時に摂取し母子共に健康を保ちましょう。
マグネシウムが含まれる食品- 海藻類
- ナッツ類
- 納豆
- 豆腐
- バナナ
- ほうれん草
カルシウムの摂りすぎに要注意
妊婦さんにとっても赤ちゃんにとっても大切なカルシウムですが、摂りすぎると良くない影響もあります。カルシウムの上限は2300mgであることを覚えておくとよいでしょう。
あまりにカルシウムの過剰摂取してしまうと、高カルシウム血症になるおそれがあります。食欲の減退、吐き気、便秘などを引き起こす症状です。血液検査で見つかることが多く、ほとんどの場合カルシウムの摂取量を抑えるだけで、症状は次第になくなっていきます。
妊娠中のカルシウムの摂り方は?
可能であれば食事で摂り、不足していると感じたらサプリメントで補うのが効果的です。カルシウムを豊富に含む食材を、毎日の食事に取り入れましょう。
食材
どのような食材にどれだけのカルシウムが含まれているのか把握し、意識して食べるようにしましょう。
200gに対し220mg含まれています。飲むだけでカルシウムを摂取できる、最も手軽な飲料です。朝よりも夕方から夜にかけての時間帯に飲むほうが、カルシウムを効果的に吸収できます。
10gに対し、710mgとたいへん豊富に含まれています。少量でしっかりカルシウムを摂取したい時におすすめです。
10gに対し、220mg含まれています。おやつ感覚で手軽に食べられる煮干しでカルシウムを摂取しましょう。
100gに対し、270mg含まれています。胃に負担をかけずに食べられる煮物がよいでしょう。
100gに対し、120mg含まれています。そのまま食べるのはもちろん、フルーツやハチミツを加えても美味しい一品です。
100gに対し、120mg含まれています。豆腐料理はレパートリーが豊富で、手軽にしっかり栄養を摂ることができます。
レシピ
こちらの項目では、「食材」で紹介したものを実際に使用したレシピを紹介しています。
干しエビ
干しエビでだしを取り、ねぎを煮込んだスープです。カルシウムの摂取と同時に体を内側から温めることができるレシピとなっています。
出典:cookpad.com
材料を用意して混ぜ合わせ、炊飯器で炊くだけのご飯です。枝豆には、妊娠中に摂りたい栄養のひとつである葉酸が含まれており、カルシウムと同時に摂ることができます。
煮干し
出典:cookpad.com
フライパンで作ることのできるおやつです。まとめて作り置きしておくことで、いつでも手軽に食べられます。
がんもどき
小松菜にも100g中170mgのカルシウムが含まれているため、カルシウムをしっかり摂取できるレシピです。
サプリメント
どれだけ食事に気をつけていても、900mgのカルシウムを食事のみで摂取することは困難です。サプリメントで食事だけでは足りないカルシウムを補いましょう。以下の三つのサプリメントは、妊娠中でも安心して飲めるものとなっています。
カルシウムだけでなくマグネシウムなども含まれているため、カルシウムを確実に吸収できるサプリです。
2粒で牛乳瓶約1.5本分のカルシウムを摂取でき、なおかつ葉酸も摂ることのできるサプリ。ヨーグルト味の食べるタイプのサプリで、水もいらずおやつ感覚でカルシウムを摂取できます。
カルシウムはもちろん、葉酸や鉄分といった妊娠時に不足しがちな栄養素が含まれています。ビタミンDも含まれており、カルシウムの吸収率をアップすることができます。
サプリメントの注意点
カルシウムを補ってくれるサプリメントですが、手軽に飲めるあまりカルシウムの過剰摂取に気をつけてください。上記以外のサプリメントを店頭で購入する場合、妊娠中に飲んでも安全であるかどうか、薬剤師さんに必ず確認しましょう。成分によってはかえって赤ちゃんに良くない影響を与えるものもあります。
歯や骨を作るうえで欠かせないカルシウムですが、摂取量と同じく吸収率も非常に重要です。
1章で記したように、ビタミンDやマグネシウムを一緒に摂ることで、カルシウムをしっかりと体へ吸収させることができます。クエン酸も同様の効果があるので、酢やレモンも料理に取り入れていきましょう。
カルシウム単体では、どれだけ摂取しても体の外へ流れてしまうことを覚えていてください。
カルシウム不足による胎児や妊婦への影響は?
くしゃみだけで骨折するおそれもあることは先に述べましたが、他にどのような影響があるのでしょうか。
胎児への影響
ほとんどないと考えてよいでしょう。カルシウムが不足していたとしても、母体の歯や骨からカルシウムを削って胎児へ届けるため、赤ちゃんにはあまり影響が出ません。しかしそのぶん、母体への影響が大きくなることが心配されます。
妊婦への影響
カルシウムが不足すると、妊娠していない時と同じようにイライラしやすくなったり、肩こりや腰痛を感じるようになります。血行にも影響を及ぼすため高血圧になりやすく、そこから妊娠高血圧症へつながる場合もあります。
妊娠20週以降、出産後12週までに高血圧が見られる状態が妊娠高血圧症です。妊娠高血圧症は通常の高血圧症と同じように、脳卒中や眼底出血を引き 起こす可能性があります。その他、けいれん発作が起こったり、出血が止まらなくなってしまったりと、命の危険につながる症状です。
妊娠高血 圧症のもっとも効果的な治療法は、できるだけ早く妊娠を終わらせることとなっています。そのため症状によっては帝王切開を行わなければならず、未熟児での 出産につながります。このように母子共に危険な症状であるため、カルシウムの不足には気をつけなければなりません。
なお、妊娠高血圧症に関しては、日本妊娠高血圧学会のホームページにて詳細を知ることができます。
まとめ
妊娠中はカルシウムがどんどん失われていきますので、毎日しっかりとカルシウムを摂るようにしましょう。食欲があるうちはできる限り食事で補うのが理想的ですが、難しいようであればサプリの利用をおすすめします。
ストレスにならない程度に栄養面に気をつけて、母子共に健康な状態を保ってください。