風疹は、小さく赤い発疹が首から広がり全身に及ぶ病気。「3日はしか」とも呼ばれ数日で症状が落ち着くことが多く、熱が出てもそれほど高熱ではありません。大人は重症化する傾向にもあるようですが、軽い症状で治ってしまうことも。
この症状だけ見ると、それほど怖い病気でもないように思える風疹。でも実は、風疹は時にはお腹の赤ちゃんにも深刻な影響を与えてしまうことのある、怖い病気なのです。どんな感染症でも妊娠中は避けたいものですが、特に風疹は徹底的に予防したい病気の一つと言えます。
今回は、風疹にかかってしまうと赤ちゃんにどのような影響が出るのか、いつまで気をつけたらいいのか、予防方法についてご紹介します。
妊娠中の風疹による胎児への影響は?
妊娠中にお母さんが風疹にかかってしまうと、お腹の赤ちゃんも感染してしまう可能性があります。そして、時には赤ちゃんに重い障害が残ってしまうことも。
風疹感染の影響で、お腹の赤ちゃんに様々な障害、症状が出てしまうことがあります。これを「先天性風疹症候群(CRS)」と呼びます。主に次のような障害が出るリスクが高いとされています。
白内障、緑内障、網膜症など。視力が弱くなったり、視野が狭くなったりなどの症状が出ます。重度になると失明する場合も。
心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう)、肺動脈弁狭窄症(はいどうみゃくべんきょうさくしょう)など。心臓の障害が影響し、肺や胃など全身への負担がかかってしまうといった症状が出ます。
いわゆる難聴。耳の中が詰まっているような感覚で、音が聞こえにくいといった症状が出ます。
上記の他にも、糖尿病、発育遅延、精神発達遅延、低出生体重、肝炎などの障害、症状などが出る場合があります。
妊娠週数によって出やすい障害
「妊娠何か月の頃に風疹にかかったか」によって、赤ちゃんに出やすい障害があります。
例えば、目の障害は妊娠3か月以内の感染、心臓の障害は妊娠4か月以内の感染で起こると言われています。ちなみにこれらは妊娠6か月を過ぎれば、お母さんが風疹にかかったとしても引き起こされる可能性は少なくなるようです。
ただし難聴は、妊娠6ヵ月以降もリスクがあります。それを考えると妊娠中の全期間、風疹にかからないに越したことはありません。
妊娠中の風疹はいつまで気をつければいいの?
妊娠中の風疹、いつまで気をつける必要があるのでしょうか。
妊娠期間中を通して感染には気をつけるべきですが、とりわけ初期は引き起こされる障害も多いため、より警戒するようにしてください。初期は赤ちゃんの様々な器官が形成される大事な時期のため、影響も大きいからです。
先天性風疹症候群の発症率は、妊娠週数によって次のような違いがあると言われています。
- 妊娠1か月 60%
- 妊娠2か月 80%
- 妊娠3か月 50%
- 妊娠4か月 20%
- 妊娠5か月 15%
妊娠が分かってから3か月頃まではかなり数値が高くなっています。初期の妊婦は免疫が低いため、感染の危険性も高く、特に注意が必要だと言えるでしょう。
妊娠中に風疹にかからない為の予防法は?
風疹予防にはどのようなものがあるのでしょうか。
夫や同居人に予防接種を
近年、風疹が流行していますが、感染者のうち約7割が男性だとのこと。家庭内に風疹ウイルスを持ち込ませないために、夫やパートナーにすぐに風疹の予防接種を受けるようにすすめてください。
もちろん、夫だけでなく子供を含めた同居している家族全員で予防に取り組むのがベストです。
マスク・手洗い・うがい
風疹はくしゃみや咳などから飛沫感染します。そのため、他の感染症と同様にマスク・手洗い・うがいが予防になります。妊娠期間中はこれらを徹底するようにしてください。
また、特に妊娠初期は人混みを避けて、感染の危険を回避するようにしましょう。
“予防”と聞くと真っ先に思い浮かべる予防接種ですが、妊娠が分かってからの風疹の予防接種はNGです。なぜなら風疹のワクチンは、ウイルス自体を弱毒化して作った生ワクチンだから。
弱いながらも風疹にかかってしまっているのと同じ状況を作り出しているようなものなのです。
したがって、もし次の妊娠を希望するのであれば、妊娠前に接種するようにしましょう。その場合、妊娠していないことを確かめてから接種し、その後2か月は避妊するようにしてください。
ちなみに、出産後すぐに予防接種をすすめる病院もあります。基本的に授乳中でも接種は問題ないとされていますが、心配な場合は病院に問い合わせてみてください。
まとめ
妊婦健診などで「風疹の抗体がない」「抗体の数値が低い」と診断された人は、注意が必要です。特に現在20代~30代の女性は、子供の頃の法令の改正によって、風疹の予防接種を受けていない可能性が高い世代と言われています。
また、男性は1979年以前は風疹の定期接種自体が行われておらず、かつ以降の世代でも受けていない人は50%以上とも。流行の際、男性の感染者が多いのはそのためと言えるでしょう。
予防接種をすればかなりの高確率で防げる風疹。妊娠中の接種はNGですが、出産後や、これから妊娠を考えている人はぜひ予防接種を受けてください。また夫やパートナーなど、男性にも理解をしてもらいましょう。
防げるはずの障害を増やさないためにも、家族ぐるみでの予防に取り組んでください。