妊娠中に頭痛をもたらす原因は?いつから?6つの予防法を紹介

妊娠

日頃の頭痛に悩まされているという人は決して少なくはありません。とある調査によると、慢性型頭痛の有病率は、日本人の3割にものぼるとされています。

慢性型の頭痛は男性よりも女性に生じやすい傾向にあり、特に30代の女性では5人に1人が片頭痛に悩まされているとする報告もあります。

30代の女性といえば丁度妊娠・出産の多い世代ですが、頭痛で鎮痛剤を使用する機会が多いという女性にとっては、薬の内服を控えなければならない妊娠に対しては不安も大きいことでしょう。

そこで今回は、妊娠中に頭痛をもたらす原因をはじめ、いつ頃から頭痛が発症しやすいのか、頭痛を予防する方法などをまとめました。

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妊娠中に頭痛をもたらす原因は?

妊娠前はほとんど頭が痛くなることなどなかったという人でも、妊娠中は頭痛が生じやすくなることがあります。

それとは逆に、妊娠前は片頭痛に悩まされていたにもかかわらず、妊娠すると頭痛発作が治まったという人もいます。

勿論個人差もあるのですが、頭痛の種類によっては妊娠すると生じにくくなるものもあれば、生じやすくなるものもあるのです。

片頭痛(偏頭痛)

頭痛の女性

片頭痛とは、脳血管が拡張することによって生じる発作性の頭痛のことをいいます。片頭痛に悩まされる女性は多いですが、一般に妊娠すると片頭痛は発作回数が減り、治まる傾向にあります。

片頭痛は脳の血管が拡張することで生じますが、この血管を収縮させる働きをもつものがセロトニンです。

セロトニンは女性ホルモンのエストロゲンと分泌量が連動するといわれており、エストロゲンの分泌量が増加する妊娠中はセロトゲンの分泌量も増加します。その結果脳血管が収縮しやすくなり、拡張する頻度が減るために片頭痛の発作が起こる回数も減少する傾向にあります。

日本頭痛学会によるデータでは、これまで片頭痛の既往があった妊婦さんのうち、約8割の人は妊娠中に片頭痛が改善したということです。

妊娠中はなるべく鎮痛剤の使用を避けたいものです。ですから片頭痛で日頃から鎮痛剤を服用する機会の多い人にとっては、朗報と言えるでしょう。

しかし妊娠中は片頭痛から開放されても、そのうちの約半数以上の人が出産後間もなくして片頭痛が再発するとされているため、妊娠を機に完治したという人は少ないようです。

妊娠初期では片頭痛が悪化する可能性も

女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が安定するのは妊娠中期以降です。そのため、妊娠初期ではセロトニンによる効果も期待できません。加えて妊娠すると胎盤を形成するために母体の血液量が増加することから、脳血管は拡張されやすくなります。

胎盤が完成するのは妊娠4ヶ月(15週)頃であるため、それ以前では片頭痛が生じる頻度は比較的高いと言えるでしょう。

緊張型頭痛

頭痛の女性

妊娠中に生じやすい頭痛で最も頻度が高いものが、緊張型頭痛です。緊張型頭痛は片頭痛とは逆に、脳血管が収縮することで生じます。

前述したように、妊娠すると脳血管を収縮させる働きをもつセロトゲンの分泌量が増加するため、緊張型頭痛が生じやすくなります。

緊張型頭痛は首筋や肩の筋肉が凝って硬くなり、血流が悪くなった結果生じるのが特徴です。そのため緊張型頭痛は、体動が制限されがちな妊娠中期以降でみられることが多いとされています。

鉄欠乏性貧血

めまいがする女性

妊娠中は血液量が増えますが、赤血球の数自体が増えるわけではないため、血液は非妊娠時よりも薄まった状態になります。そのため妊娠中は、鉄欠乏性貧血を発症しやすくなります。

鉄欠乏性貧血による眩暈や頭痛、易疲労感(疲れやすい)といった症状に悩まされる妊婦さんは少なくありません。

感冒(風邪)

風邪をひいている女性

妊娠中は体の免疫力が低下しやすい傾向にあり、あらゆる感染症にかかりやすくなります。風邪もひきやすくなるため、注意が必要です。

妊娠高血圧症候群

頭痛で苦しい女性

妊娠中の頭痛で最も注意しなければならないのが、高血圧による頭痛、すなわち妊娠高血圧症候群による頭痛です。妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降から分娩後12週までに高血圧がみられるものをいいます。

片頭痛や緊張型頭痛がお腹の中の赤ちゃんに直接悪影響を及ぼすことは考えにくいですが、妊娠高血圧症候群では胎児の発育不全や健康状態の悪化を招くリスクが高まります。

また母体も脳出血やけいれん発作をきたすことがあり、最悪のケースでは母児共に命にかかわる重篤な事態を招きます。

妊娠中の頭痛はいつから出やすくなる?

考えている女性

片頭痛(偏頭痛)

前述したように、片頭痛による頭痛は妊娠初期に多くみられます。一般的に妊娠中期以降では治まる傾向にありますが、必ずしもそうなるとはいえず個人差があります。

緊張型頭痛

体動が少なくなりがちな妊娠中期以降によくみられます。

鉄欠乏性貧血

母体の循環血液量が増加しはじめる妊娠10週以降から発症しやすくなります。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群はその発症時期によって、早発型と遅発型に分類されます。

早発型は妊娠20週以降~妊娠32週未満に発症するものをいい、遅発型は妊娠32週以降に発症するものをいいます。発症頻度が高いものは遅発型ですが、早発型は妊娠の経過に伴って重症となりやすい傾向にあります。

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妊娠中の頭痛はこうして予防しよう!

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鉄分やビタミンを積極的に摂る

頭痛の予防効果が期待できる栄養素には以下のようなものがあります。なるべく栄養バランスのとれた食事で各栄養素を摂取するよう心がけ、食事だけでは不足してしまいがちな栄養素はサプリメントで補うのもよいでしょう。

鉄分

ひじきと小松菜

鉄分の摂取が鉄欠乏性貧血の予防には重要です。しかし鉄分だけではなく、炭水化物、良質タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂取することが大切です。

炭水化物はごはんやパンなどの主食から、良質タンパク質は魚介類や肉類、卵、大豆製品などの主菜から、ビタミンやミネラルは副菜の野菜などから摂るようにしましょう。

鉄分を多く含む主な食品
豚レバー、鶏レバー、ひじき、小松菜、ほうれん草、納豆などです。
レバーを摂る際の注意点

レバーにはレチノール(動物性食品由来のビタミンA)が多く含まれており、妊娠中にレチノールを過剰に摂取すると胎児に奇形を生じるリスクが高まるとされています。

レバーは鉄分やビタミン類などの栄養素を豊富に含むためそれらの栄養素を手軽に摂取できるものではありますが、妊娠中の過剰摂取は避けるべきでしょう。

特に鶏レバー、豚レバーのレチノール含有量は高く、妊婦さんに推奨される1日のビタミンA摂取量を容易に超えてしまいます。鉄分を摂取する際は、できるだけ他の食品から摂るようにしましょう。

ビタミンC

イチゴとブロッコリー

鉄分の吸収率を高めるには、ビタミンCの摂取も必要不可欠です。

ビタミンCを多く含む主な食品
ビタミンCは赤・黄ピーマン、アセロラジュース、パセリ、芽キャベツなどに豊富に含まれますが、いちごやブロッコリーなど比較的日常で摂取しやすいもので摂るとよいでしょう。

ビタミンB2

牛乳と納豆

ビタミンB2は脂質の代謝に必要不可欠な栄養素ですが、片頭痛を予防する効果もあるとされています。摂取した脂質が多いほどビタミンB2の消費量は多くなりますので、ビタミンB2が不足しないよう脂質の過剰摂取は避けるようにしましょう。

ビタミンB2を多く含む主な食品
豚レバー、牛レバー、うなぎ、牛乳、納豆、卵などが挙げられます。

ビタミンB12

たらことサンマ

ビタミンB12は赤血球をつくるために必要な栄養素です。

ビタミンB12を多く含む主な食品
いくら、からすみ、キャビア、たらこなどの魚卵に豊富に含まれるほか、サンマやニシンなどの青魚、しじみやあさりなどの貝類にも多く含まれます。

葉酸

枝豆とモロヘイヤ

葉酸も赤血球をつくるために必要となる栄養素です。また葉酸は妊娠前や妊娠初期に摂取することで、胎児の先天異常のリスクを減らす効果があります。妊娠中だけでなく、妊娠を望む女性は常日頃から積極的に摂取するようにしましょう。

葉酸を多く含む主な食品
レバー(鶏>牛>豚)、ウニ、枝豆、モロヘイヤ、芽キャベツ、アスパラなどです。
食品のみで補うのは困難
しかし葉酸は調理の過程で失われてしまいやすいため、十分な量を摂りにくい栄養素です。だだでさえ不足しがちな葉酸ですが、妊娠中は必要摂取量が増えるため、必要量を食事から摂取することは困難といえます。葉酸を手軽に摂取できるサプリメントを、上手に活用しましょう。

塩分とカロリーの摂り過ぎには注意

ポテトチップを我慢する女性

妊娠高血圧症候群の予防のために最も大切なことは、減塩を心がけることです。またカロリーの摂り過ぎは妊娠高血圧症候群のリスクを高めるほか、産道が狭くなり難産となる確率が高くなります。

しかし極端に塩分やカロリーを制限することも望ましくないため、適正な摂取量を心がけることが大切です。日本産婦人科学会が推奨する妊娠時の1日当たりの塩分摂取量は、10g以下とされています。

食材の持ち味を生かした薄味の調理を心がけ、醤油やマヨネーズなどは減塩のものとし、なるべく酢やコショウ、レモン汁といった調味料を活用するようにしましょう。

一般的なラーメンやうどんには、5.0gを超える塩分が含まれていることも少なくありません。特に塩分の含有量が多い外食やインスタント食品は控えるようにし、麺類を食べる場合は汁を残すようにするとよいでしょう。

適度な運動を

ウォーキングをする妊婦さん

妊娠中は適度な運動をおこなうことでカロリーを消費し、体重の増え過ぎを防いで妊娠高血圧症候群の発症予防に努めましょう。また適度な運動は全身の血行を促進させ、筋肉の凝りを防いで緊張型頭痛の発症リスクを下げる効果が期待できます。

適している運動

妊娠中におこなう運動として適しているものは、安産体操やマタニティビクスなどの妊婦さんのための運動や、ウォーキングなどの有酸素運動が挙げられます。

心拍数を一定レベルまで上げた状態を持続できるために心肺機能が高まり、母体とお腹の赤ちゃんの双方に良い効果が得られます。

適していない運動

適していないのは激しい運動や、瞬発力が必要となる短距離走・筋トレなどの無酸素運動、お腹に力が入るような動作をとる運動です。

また軽い運動であっても、切迫早産と診断されていたりその可能性がある場合においては、自己判断せず必ず主治医の指示に従うようにしましょう。

身体を冷やさない

毛布

冷えによって血行が悪くなることにより、緊張性頭痛や下肢のむくみが生じやすくなります。またお腹の赤ちゃんへの血流も悪くなることで、赤ちゃんにも悪影響をもたらす可能性があります。

冷え症の女性は多いですが、妊娠中は特に気を配って身体を冷やさないようにしましょう。

感染症予防を徹底する

手洗いをする妊婦さん

妊娠中は免疫力が下がる傾向にあるため、手洗い・うがいの施行や、人混みにはできるだけ近づかないようにするなどの基本的な感染症予防は徹底させましょう。

ストレスを発散させる

伸びをする女性

片頭痛も緊張性頭痛も、ストレスが発症リスクを高めるとされています。またストレスは体の免疫力を低下させたり、あらゆる体の不調を招きます。

ストレス社会といわれる現代においてストレスを溜めないことは極めて難しいため、うまく発散させることが求められます。適度な運動で心身ともにリフレッシュするのもいいですし、ゆったりと過ごすことで心を落ち着かせるのも効果的です。

まとめ

妊娠中の頭痛は決して珍しくはない症状ですが、中には危険なものもあるため注意が必要です。頭痛の発症機序については未だ解明されていない部分も多く、絶対的な予防法というものは存在しません。

しかし、日頃から適切な予防を心がけ、そのリスク要因を減らすことで、頭痛が生じるリスクを低下させることはできます。頭痛の予防法は妊娠中の健康維持にも繋がることばかりですので、是非心がけるようにしましょう。

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