妊娠中はさまざまな要因で頭痛をきたしやすいものですが、気軽に薬を飲むわけにもいかないため、つらい思いをしているという人は多いのではないでしょうか?
今回はそんな方のために、妊娠中の頭痛を薬以外の方法で和らげる対処法をご紹介します。
頭痛の原因を知る
頭痛の種類によって対処法が異なりますので、まずは自身の頭痛がどうして生じているのかを知ることが大切です。
冷やしたり温めたり、動かしたり安静にしたりと、頭痛の種類によっては対照的な対処法となるため、方法を間違えると頭痛を悪化させてしまいます。
鉄欠乏性貧血や妊娠高血圧症候群などでも頭痛が引き起こされますが、それらは定期的な妊婦健診をしっかりと受けることで早期の発見が可能です。慢性型の頭痛として頻度の高い緊張型頭痛や片頭痛は、症状だけでは区別がつきにくいことがあります。
それぞれの特徴は次の通りですので、ご自身の頭痛がどれに該当するのかを確かめてみましょう(あくまでも一般的な症状ですので、必ずしも当てはまるものではありません。確実な診断は医療機関で行いましょう)。
- 毎日のように頭痛がする、あるいは頭重感がある
- 30分程度で治まることもあれば、1日中続くこともある
- 長時間同じ姿勢でいることが多い
- 頭をぎゅっと締めつけられるような感じがする
- 首や肩、腕、背中などのコリや痛みを伴う
- 身体を動かすと痛みが軽減する
- 軽い眩暈を伴うことがある
- ストレスを感じているとき、憂鬱な気分のときに頭痛を生じやすい
- 月に1~2回、あるいは週に1~2回と、ある程度頭痛が生じるサイクルがある
- 一旦頭痛が生じると数時間から数日間続く
- 頭痛がつらく、何も手につかずに寝込んでしまうことがある
- ズキズキ、ガンガンと拍動性(脈を打つリズムに合わせて)に頭痛が生じる
- 身体を動かすと痛みが強くなる
- お辞儀をして頭を低くすると、痛みが増す
- 頭痛が生じている間は、光や音を疎ましく感じる
- 吐き気や嘔吐といった症状を伴うことがある
- 片側が痛むことが多い
- 頭痛が生じる前兆として、視界がチカチカしたり暗いものが拡がったりすることがある
- 頭痛が生じる予兆として、イラつき、生あくび、むくみ、疲労感、食欲亢進などがみられることがある
- 仕事の合間の休日など、気が緩んだときに頭痛を生じやすい
- 家族の中に同じような頭痛をもつ人がいる
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緊張型頭痛に対する効果的な対処法
頭痛の種類が緊張型頭痛であった場合に有効となる対処法は、次の通りです。
肩や首のコリをほぐす
妊娠すると体調が優れなかったりお腹が重くなるために、どうしても運動量が少なくなりがちです。あまり動かないでいると首や肩周囲の筋肉が硬くなり、蓄積した疲労物質が神経を刺激し、緊張型頭痛を引き起こします。
緊張型頭痛を和らげるためには、ストレッチや適度な運動をおこなうことによって首や肩周りの筋肉をほぐしてやるのが効果的です。
緊張型頭痛に効果的なストレッチは座ったままでもできるので、つわりで動けない妊婦さんでも簡単におこなうことができます。
- 背筋を伸ばして座り、両手を頭の後ろに置いて、深くうつむくように頭を前に倒します。
- 両手をアゴに添え、ゆっくりと持ち上げるように上を向きましょう。
- 片手を頭の反対側に置き、手で引き寄せるように頭をゆっくり倒します。反対側も同じように行います。
これを何度か繰り返し、肩や首の筋肉をほぐしていきましょう。
首の後ろには「風池」と呼ばれるツボがあり、肩凝りや眼精疲労、筋肉のコリからくる頭痛、自律神経の乱れなどに効果があります。風池のツボは耳の後ろの骨から2cmほど中心寄りで、うなじの少し上辺りにありますので、ここを親指で強く押して刺激しましょう。
風池の内側(中心側)には「天柱」、外側(耳側)には「完骨」と呼ばれるツボがあり、いずれも筋肉のコリをほぐすのに効果的なツボです。それらのツボも刺激することによって、より効果が高まるかもしれません。
筋肉のコリからくる緊張性頭痛では、筋肉を温めることで症状が和らぎます。
ぬるめの湯船にゆっくり漬かって全身の血行を促すのもいいですし、温かいタオルで首の後ろや眼の辺りを局所的に温めるのも効果的です。
濡れタオルを電子レンジでチン(500Wで1分ほど)するだけで、簡単に温タオルがつくれるのでお勧めです。
一般的に緊張型頭痛の場合は、動くと痛みが軽減する傾向にあります。筋肉の緊張を解きほぐし、血流を促進させるためにも動ける妊婦さんは体を動かすようにしましょう。
運動の種類としては、マタニティスイミングやマタニティヨガ、ウォーキングなどの有酸素運動が適しています。呼吸数や心拍数が激しく上昇するような運動や、瞬発力が必要となるような無酸素運動、お腹に力が入るような運動はくれぐれも避けるようにしましょう。
また切迫早産の可能性がある人は自己判断せず、必ず医師の指示に従うようにしてください。
朝起きたときに首周りのコリや頭痛があるという場合は、枕が合っていない可能性があります。高過ぎる枕や低過ぎる枕、硬い枕や沈み過ぎる枕は緊張型頭痛を引き起こす誘因となりますので、自身に合った枕を選択したいものです。
仰向けに横になったときに、背筋を伸ばして立っているときと同様の姿勢をキープできる枕が最も適しているとされています。
深呼吸をしてリラックス
緊張型頭痛は血流が妨げられることによって脳の酸素が不足した状態となりがちですので、深呼吸を繰り返して十分に酸素を取り込みましょう。ゆったりとくつろげる場所でおこなうと、よりリラックスできて効果的です。
水分を十分に摂取する
妊娠中は必要な水分量も多くなるため、水分が不足しがちです。水分が不足すると血液の粘稠度(ねんちゅうど)が高くなり、血流が悪くなって頭痛が引き起こされることがあります。
そのためたくさん水分を摂取するのが望ましいですが、冷たい飲み物は体を冷やしてしまい逆に頭痛を悪化させてしまう可能性がありますので、なるべく温かい飲み物で水分を摂るようにしましょう。
ハーブティ(できればマタニティ用のもの。ハーブの種類によっては妊娠中避けたほうがよいものもあります)、ホットミルクなどの飲み物や、野菜たっぷりのスープなどがお勧めです。
ストレスの解消を
妊娠中は情緒が不安定になりやすく、精神的なストレスも溜まりやすい状態にあります。ストレスは自律神経を乱れさせ、緊張型頭痛や片頭痛だけでなくあらゆる体の不調をきたします。
妊娠中であるがゆえにできることにも制限がありますが、なるべく好きなことに取り組める時間を確保し、ストレスを解消するようにしましょう。
適度に体を動かすのもいいですし、料理やお菓子を作ったり、裁縫に取り組んだりといった趣味の時間をもつこともストレス解消に繋がります。切迫早産などで動けない場合には、友人と電話したり、テレビやDVDを観賞したり、読書をするといった方法もあります。
何が効果的なストレス解消法となるかは人それぞれですので、ご自分にあてはまる方法で、楽しいと思える時間を過ごすことが大切です。
片頭痛に対する効果的な対処法
安静を保つ
片頭痛は脳の血管が拡張することで頭痛が生じますので、動くと痛みがひどくなるという特徴があります。
動いたときにズキズキとした拍動性の頭痛が悪化するという場合は片頭痛の可能性が高いため、そんなときは無理をせず横になって静かに休むようにしましょう。
頭を冷やす
片頭痛の場合は頭を冷やすことで脳血管が収縮するため、痛みが和らぐことがあります。
緊張型頭痛に効く温めるという方法は脳血管をさらに拡張させてしまうため、片頭痛に対しては逆効果となりますので注意しましょう。
適量のカフェインを摂取する
カフェインには血管を収縮させる作用があるため、片頭痛に効果的とされています。
妊娠中のカフェイン摂取はよくないと聞いたことがあるかもしれませんが、問題となるのは過剰に摂取した場合で、少量であれば差し支えないとされています。
妊娠中のカフェイン摂取量は1日100mg程度までが適量で、ドリップコーヒーならカップ1杯、インスタントコーヒーなら2杯程度です。
カフェインを過剰に摂取すると赤ちゃんの発育が阻害されたり、早産や流産のリスクが上がったりするほか、鉄分の吸収が阻害されて鉄欠乏性貧血を引き起こしやすくなります。カフェインを摂取する際は、適量を心がけるようにしましょう。
一般的な飲み物(100mlあたり)のカフェインの含有量は以下の通りですので、参考にしてください。
- コーヒー(スプレッソ) 280mg
- 玉露 120mg
- コーヒー(ドリップ) 90mg
- 栄養ドリンク 50mg
- コーヒー(インスタント) 45mg
- 抹茶 30mg
- ・ココア 30mg
- 紅茶、緑茶、烏龍茶、ほうじ茶 20mg
- コーラ 10mg
鉄欠乏性貧血に対する対処法
妊娠中は胎盤をつくるために大量の鉄分が使われるため、鉄欠乏性貧血をきたしやすいものです。鉄欠乏性貧血によって頭痛を生じているケースでは、貧血そのものを改善させることが何よりも重要となります。
そのためには栄養バランスのとれた食事から、鉄分、タンパク質、ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6、ビタミンCなどの貧血改善に必要な栄養素を十分に摂取するようにしましょう。
食事のみでは補えない栄養素は、サプリメントを利用するのも良い手段です。また酸っぱいものを同時に摂取すると、胃液の分泌が促進されて鉄分の吸収率が上がるとされています。
妊娠高血圧症候群に対する対処法
妊娠高血圧症候群を悪化させないためには、塩分摂取量を控えめにすることが重要です。妊娠高血圧症候群と診断された場合には、塩分は1日7~8g程度に抑えるようにしましょう。
塩分摂取量を少なくし過ぎると体内の血液量が減少し、かえって高血圧を悪化させてしまうともいわれていますので、適量を心がけるようにしましょう。
また妊娠中の体重増加量が大きいことも、高血圧を悪化させるリスク要因となります。カロリーや脂質の摂り過ぎには十分注意し、体重管理をしっかりと行うことが大切です。
まとめ
頭痛はそれぞれの原因によって対処法が異なります。間違った方法をとると反対に頭痛を悪化させてしまうこともありますので、頭痛の原因を把握した上で適切な対処法をとるのが望ましいといえます。
どの方法でも頭痛が軽減しないという場合は我慢することなく、かかりつけの産婦人科の医師に相談するようにしましょう。