妊娠中の頭痛薬による胎児への影響は?使える薬は?治療法は?

妊娠

片頭痛や緊張性頭痛などに悩まされている女性は多いものです。そうした慢性型頭痛は妊娠中にも発症することがあり、つらい痛みに対して頭痛薬(鎮痛剤)を飲んでもよいものか迷っている人もいることでしょう。

頭痛薬を使用する機会が多い女性の中には、妊娠していることに気づかずに薬を飲んでしまったという人もいるかもしれません。

そこで今回は、妊娠中に頭痛薬を飲むことによってお腹の赤ちゃんにどのような影響をもたらす可能性があるのかをはじめ、妊娠中に服用できる頭痛薬と避けるべき頭痛薬についてや、病院での頭痛の治療方法などについて解説します。

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妊娠中の頭痛薬は赤ちゃんにどんな影響を及ぼす?

胎児

母体が内服した薬は、胎盤を通してお腹の赤ちゃんにも入っていきます。その量は極微量であるため多くの場合は胎児に害を及ぼすほどの問題にはならないのですが、赤ちゃんは薬に対する感受性が高いため、ときに薬の作用が強く働いてしまうことがあります。

薬が胎児へもたらす悪影響には、大きく分けて「催奇形性」と「胎児毒性」の2つがあります。催奇形性とは薬の作用が胎児に奇形をもたらすものをいい、胎児毒性とは胎児の発育を妨げたり、あらゆる機能を障害させたりするものをいいます。

催奇形性について

赤ちゃんの手

催奇形性のリスクは胎児の体がつくられる妊娠初期が最も高く、後期になるにしたがって低くなります。一部の薬剤で危険性が明らかに上昇するものがありますが、頭痛薬の場合はまず催奇形性の心配はいらないとされています。

奇形で多くみられるものは口唇裂・口蓋裂といった外奇形や、心室中隔欠損症などの心臓奇形ですが、そのうちの多くは手術によって完治できます。

赤ちゃんが何らかの奇形をもって生まれてくる頻度は、100人に2~3人といわれています。そのうち催奇形性によるものは奇形全体の1%に過ぎないとされており、確率としてはとても低いものです。

リスクが高いとされている薬は抗がん剤や抗てんかん薬などが多いですが、それら特定の疾患がない女性でも内服する可能性のある薬剤としては、ビタミンA剤のチョコラAや、胃腸薬のサイトテックなどが挙げられます。いずれも妊娠を希望する女性に対して処方されることは少ないですが、注意しておくようにしましょう。

胎児毒性について

胎児毒性は出産予定日が近づくほど高リスクとなるのが特徴です。頭痛薬として使用される薬の中にも胎児毒性が懸念されるものがあり、乱用すると胎児の動脈管を収縮させ、新生児肺高血圧症を招く危険性が高まります。

また腎機能が低下して羊水が少なくなったり、新生児壊死性腸炎を発症するリスクが高まるとされています。

妊娠週数別にみるリスク

頭痛で悩む女性

妊娠前

日頃から慢性頭痛に悩む女性の中には、妊娠前に頭痛薬を頻回に服用していたという人もいるでしょう。妊娠すると赤ちゃんに影響があるのではと心配している方もいらっしゃるかもしれませんが、妊娠前に服用していた薬の成分がその後の妊娠で胎児に影響を及ぼす可能性は限りなく低いとされています。

ただしごく一部の薬剤には、体の中の薬剤成分が完全に排泄されるまで時間を要するものがあります。そうした薬は処方されるときに医師や薬剤師から一定期間は避妊をするように説明があると思われますので、必ず守るようにしましょう。

妊娠前に鎮痛剤を連用すると、一時的な不妊になるという報告があります。排卵が抑制されたり、受精能力が低下したり、受精卵の質の低下により着床せず妊娠が成立しないなどといったことが理由として考えられています。

もし問題のある受精卵が着床したとしても、ほとんどは細胞分裂の段階で成長が止まってしまい、生化学的流産あるいは初期流産となってしまいます。

ヒトの受精卵はこの段階で淘汰される確率がとても高いものなのですが、薬剤による作用が受精卵の異常をきたす原因となるのかは明らかとなっていません。

しかし、もし鎮痛薬を連用していてなかなか妊娠できないという人がいれば、これを疑ってみる必要があるかもしれません。

妊娠超初期(妊娠1ヶ月)

頭痛薬

妊娠1ヶ月(妊娠4週未満)とは、最終月経開始日から月経予定日までのことをいいます。無事子宮内膜に着床した受精卵が、細胞分裂を繰り返して成長していく時期となります。

妊娠に気づくのは月経予定日以降となりますから、この時期は妊娠しているとは思わずに薬を服用する可能性が高いといえます。

しかし、この時期は「無影響期」といい、服用した薬が胎児に影響を及ぼすようなことはまずありませんので安心してください。

妊娠初期(妊娠2~4ヶ月)

妊娠初期は胎児の主要器官や中枢神経などが形成される時期であるため、催奇形性のリスクが高くなります。

特に妊娠2ヶ月目は「絶対過敏期」といい、胎児が薬の影響を最も受けやすい時期とされています。ですが催奇形性のリスクが高まると報告されているのは一部の薬剤であり、鎮痛剤を含むほとんどの薬剤では影響はないといわれています。

薬剤に対する影響を最も受けやすい時期である以上、絶対に大丈夫であるとはいいきれませんので、注意するに越したことはありません。

妊娠中期(妊娠5~7ヶ月)

エコー写真

妊娠中期になると、胎児の体や臓器の基本的な部分は形成されているので、催奇形性の心配はなくなります。

しかし一方で、この頃から胎児毒性を懸念しなければならない時期に入ります。妊娠中期からの胎児毒性がある薬剤は、ARBやACE阻害剤といった高血圧治療薬や、テトラサイクリン系の抗生剤です。

妊娠後期(妊娠8~10ヶ月)

頭痛薬としても使用される消炎鎮痛薬NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、妊娠後期からの胎児毒性が報告されています。そのため妊娠後期における頭痛薬の使用は慎重にならなければなりません。

服用する際は、安全性が高いとされる鎮痛剤を選択するようにしましょう。

妊娠中に服用しても良い頭痛薬と避けるべき頭痛薬

薬

催奇形性については抗がん剤や抗てんかん薬などの一部の薬剤でリスクが上昇することが知られていますが、頭痛薬として内服する薬の中にリスクが高いとされるものは含まれていません。

ただし胎児毒性については注意が必要で、NSAIDs全般が胎児に悪影響を及ぼすリスクがある薬剤として挙げられています。

避けるべき頭痛薬

胎児毒性が知られているNSAIDsには様々な種類があり、具体的には次のようなものが挙げられます。

処方薬のみのNSAIDs

処方薬のみで市販薬はありませんが、以前処方されたものを妊娠後期に使用しないように注意しましょう。

  • ジクロフェナク(ボルタレン、ナボールSRなど)
  • インドメタシン(インテバンSP)
  • メフェナム酸(ポンタールなど)
  • スルピリン(メチロンなど)
  • ナプロキセン(ナイキサン)
市販薬にあるNSAIDs

市販薬は手軽に入手できるため、日頃の頭痛に対して使用しているという人も多いのではないでしょうか。妊娠時、特に妊娠後期においては非妊娠時と同様の感覚で服用しないようにしましょう。

  • ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)
  • アスピリン(バファリンA、ケロリンなど)
  • イブプロフェン(イブなど)
  • エテンザミド(ノーシン、新セデスなど)
  • イソプロピルアンチピリン(セデス・ハイなど)

服用しても良い頭痛薬

カロナールに代表されるアセトアミノフェンは、妊娠時でも服用できる薬です。解熱鎮痛薬の大半はNSAIDsに分類されますが、このアセトアミノフェンだけはNSAIDsではありません。

NSAIDsに比べて痛み止めとしての効果は優しめで、抗炎症作用も低いのが特徴ですが、安全性が高く小児用の解熱鎮痛薬としても用いられています。

しかし、薬である以上副作用が出現する可能性はゼロではありませんので、乱用は厳禁です。

妊娠中の頭痛に対する病院での治療

医者と妊婦さん

病院で処方される薬の第一選択は、前述したようにアセトアミノフェンとなります。ただしアセトアミノフェンの鎮痛作用は弱めで抗炎症作用もほとんどないため、それで頭痛が軽減しない場合の第二選択として、イブプロフェンやナプロキセンが使用されることもあります。

しかし、これらはNSAIDsであるため、胎児毒性の懸念により一般的には妊娠後期での投薬は避けられます。

頭痛の原因が片頭痛である場合、片頭痛の治療薬であるスマトリプタンが使用されることもあります。スマトリプタンはこれまで母体や胎児に重篤な影響を及ぼしたとする報告がないため、妊娠中も比較的安全に使用できるものと考えられています。

妊娠中に頭痛をきたす原因には片頭痛や緊張型頭痛といった慢性頭痛のほかに、妊娠高血圧症候群によるものもあります。

頭痛の妊婦さん

血圧が上がることで頭痛が生じることもあれば、重症なものになるとときに子癇発作(しかんほっさ)の前触れとして、頭痛や目の前のちらつき、視野の狭窄などを生じることがあります。

子癇発作とは、妊娠中の高血圧に伴い痙攣や意識の消失といった症状が出現するものをいい、発作が起こると母体だけでなく胎児の命にもかかわる深刻な状態となります。

妊娠中に頭痛が続く場合にはいつもの頭痛だろうと自己判断せず、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。

妊娠中の頭痛に対しては、なるべくなら薬に頼らない方法で対処するのが望ましいといえます。しかし、それだけでは頭痛が軽減せず薬を服用する必要がある場合には、自ら市販薬で対処するのではなく、産婦人科を受診して医師に薬を処方してもらうようにしましょう。

まとめ

どんな薬であっても、100%安全といえるものはありません。しかし、ほとんどの薬剤では余程乱用することがない限り、胎児への悪影響についてはそう心配はいらないといわれています。

ですがもし生まれてきた赤ちゃんに何らかの問題があった場合、お母さんは「あのとき薬を飲んでしまったからではないか」と自身を責めてしまいがちです。

その可能性は限りなくゼロに近いのですが、そのような後悔を生まないためにも妊娠中の薬の服用はできるだけ避けるようにしましょう。

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