乳児湿疹がよくならない!もしかしてアトピー?母乳の影響はある?

乳児湿疹の赤ちゃん育児

乳児湿疹とは、乳児期にみられる湿疹の総称です。乳児湿疹は8割以上の赤ちゃんにみられるとされており、決して珍しいものではありません。

赤ちゃんの肌はつるつるすべすべでトラブルを起こしにくいと思われがちですが、実際はその逆で、肌のバリア機能が未熟なためにすぐに湿疹などの肌トラブルを生じてしまいます。

乳児湿疹をきたす原因はさまざまですが、その中のひとつにアレルギーによるアトピー性皮膚炎があります。

乳児湿疹がなかなかよくならず、ひょっとしてアトピーかも…?と心配されているお母さんのために、乳児湿疹の中でもアトピー性皮膚炎に焦点を当てて解説します。

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この乳児湿疹はアトピー性皮膚炎なの?

湿疹がひどい赤ちゃん

乳児湿疹とは特定の疾患名ではなく、乳児期に湿疹をきたすもの全てを指します。アトピー性皮膚炎は乳児湿疹をきたす原因のひとつで、その症状は乳児期にしばしばみられる乾燥性の皮膚トラブルです。

乾燥性湿疹とアトピー性皮膚炎の関係

乾燥性湿疹とアトピー性皮膚炎は違うものなのか、またどのようにして見分けるのかを説明します。

乾燥性湿疹とアトピー性皮膚炎の区別

乾燥性湿疹とアトピー性皮膚炎の双方を、症状だけで判別することは困難です。同じ症状で違う病院を受診すると、一方では乾燥性湿疹、もう一方ではアトピー性皮膚炎と診断されることも少なくありません。

そもそも呼び方が違うだけで、両者は同じものであるとする意見もあります。乳児期に湿疹の症状がみられるもの全てに対し、乳児湿疹と診断する医師も多いです。

乾燥性湿疹とアトピー体質

乾燥性湿疹は単純に肌が乾燥することで生じるもので、小児アトピー性皮膚炎はアレルゲンによるアレルギー反応で引き起こされるものであるため、現れている症状は同じであっても別物であるとする考え方もあります。

しかし最近では、乳児期の乾燥性湿疹はアトピー性皮膚炎であるとする考え方が主流です。近年になって、アトピー体質の人は皮膚の潤いを保つ役割を担う「セラミド」という脂質がつくられにくいということがわかってきました。

つまりアトピー体質の人は生まれつき肌が乾燥しやすく、アレルギーの影響がなくても乾燥性の肌トラブル、例えば赤ちゃんのときには乾燥性湿疹を生じやすいということになります。

アトピー性皮膚炎の診断

医者

アトピー性皮膚炎の診断は、臨床症状やアレルギーの検査によっておこなわれます。

アトピー性皮膚炎の診断基準

日 本皮膚科学会は乳幼児のアトピー性皮膚炎の診断基準を、2ヶ月以上症状が続くものと定めています。つまり症状が長引けばアトピーとの診断がつきますが、そ れまでは断定できないため、乳児湿疹、乾燥性湿疹や乾燥性皮膚炎、アトピー性皮膚炎の疑い、などと診断されることが多いようです。

主な診断方法は臨床症状から

アトピー性皮膚炎を検査によって確定診断することはできません。アトピー性皮膚炎に特徴的な臨床症状があるかどうかが、主な診断基準になります。

また家系にアレルギー疾患をもつ人がいるかどうかという点も、アトピー素因の有無をみる重要な判断基準となります。

アレルギーの有無の検査

乳児湿疹が続き、その症状からアトピー性皮膚炎が疑われた場合は、血液検査で抗体(特異的IgE抗体)を調べることがあります。

特異的IgE抗体とは、体に侵入したアレルゲンに反応して生みだされる抗体です。食物や環境物質に対する抗体の値を調べることによって、アレルギーの有無と程度を調べることができます。

ただしこの検査は、抗体価が高かった項目に対してアレルギーを生じる可能性があることはわかりますが、それがアトピー性皮膚炎を生じさせる原因であるかどうかはわかりません。

例えば乳児期に卵の抗体価が高かった場合であっても、卵がアトピー性皮膚炎の原因であるとは限らないということです。しかし乳幼児期のアトピー性皮膚炎は8~9割が食物によるものとされているため、卵が原因である可能性は低くはないといえるでしょう。

乳幼児の間のケアが重要

赤ちゃんの手

乳児期のアトピーの大半が自然に治癒するものであるなら、放っておいてもよいのでしょうか?答えはNOです。

将来のアトピーに繋がる可能性が

乳児期のアトピー性皮膚炎は大半が2歳頃まで治るものとされていますが、一部ではそれ以降も症状が続いたり、将来再びアトピーを発症したりすることもあります。

ア トピーを発症する原因はまだ解明されていない部分も多いのですが、最近では乳児湿疹を治療せずに放置すると、あらゆるアレルゲンに感作(かんさ。抗原に対 してIgE抗体が産生されること)され、将来的にアトピー性皮膚炎だけでなく花粉症や喘息といったアレルギー疾患を発症しやすくなると考えられています。

適切なケアと治療で早めに治そう

乳児湿疹は年齢の経過とともに自然と軽快していくとはいえ、乳児期に症状をどうコントロールするかがその後の将来にかかわってきます。将来的なアレルギー疾患の発症リスクを減らすためにも、乳児湿疹のケアはとても重要なのです。

アトピー性皮膚炎と診断された、またはその可能性があるとされた場合には、適切なケアと治療をおこない、少しでも早く皮膚の状態を良好な状態に戻してあげることが大切です。

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乾燥性湿疹とは

乾燥肌の赤ちゃん

乾燥性湿疹とは、肌が乾燥することによって生じる湿疹の症状をいいます。

乾燥性湿疹という診断名

赤ちゃんの肌に乾燥性の湿疹ができ病院を受診すると、乾燥性湿疹や乾燥性皮膚炎と診断されることがありますが、それらは正式な病名ではありません。

乾燥性湿疹とは、肌が乾燥することで引き起こされている湿疹や皮膚トラブル全般を指します。そうした皮膚の状態を、正式には「乾皮症(かんぴしょう)」「皮脂欠乏症」といいます。

乾燥性湿疹はこうして起こる

赤ちゃんは生後3ヶ月ほどまでは皮脂の分泌が盛んですが、その後は分泌量が減って乾燥肌に傾いていきます。肌は乾燥するとバリア機能が低下し、少しの刺激でトラブルが生じやすくなります。

こうして肌の乾燥により生じた乳児湿疹を、乾燥性湿疹、または乾燥性皮膚炎と呼ぶことがあります。

乾燥性湿疹の症状

皮膚がカサカサと乾燥し、乾燥によるダメージによって発疹や皮膚の荒れがみられます。皮膚の表面がザラザラしたり、硬くなったりもします。

アトピー性皮膚炎とは

アトピーの赤ちゃん

乳児に乾燥性湿疹がみられた場合、アトピー性皮膚炎である可能性があります。

主なアレルゲン

ア トピー性皮膚炎は、アレルギーによる症状が皮膚炎として現れたものをいいます。アレルギーの原因になるものをアレルゲンといいますが、2歳以下のアトピー 性皮膚炎の場合、主なアレルゲンは卵や乳製品といった食物で、特に卵によるアレルギーが多いです。それ以降になると、ダニやホコリといった環境因子による ものが増えてきます。

アトピー性皮膚炎の症状

乳児期のアトピー性皮膚炎の症状は、まずはじめに頭皮や顔(頬、目のまわり、口のまわり、耳のまわりなど)の両側に、左右対称性の赤い湿疹が現れます。

はじめは首から上のみにみられた症状が、やがて四肢(肘や膝、足首や手首といった関節部)や体幹(胸部、腹部、背部)にも現れるようになり、肌が全体的に乾燥してカサカサするようになってきます。

この発疹は痒みを伴うため、赤ちゃんは自分で顔をくじったり、抱き上げたときに顔を擦りつけてくるような仕草をみせることがあります。症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴ですが、多くの場合は2歳頃までには軽快するとされています。

アトピーになる原因

アトピーには遺伝的なアレルギー体質が影響するとされており、これをアトピー素因といいます。両親や兄弟姉妹など、家系にアトピー性皮膚炎や喘息、花粉症などのアレルギー性疾患を持つ人がいれば、アトピー素因があると判断できます。

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乳児湿疹と母乳の関連性は?

母乳を飲む赤ちゃん

乳児湿疹は母乳が関係しているという意見がある一方で、母乳は関係ないとする意見もあり、一体どっちなの?と戸惑うお母さんも少なくないでしょう。

母乳の質の良し悪しは関係しない

少し前までは赤ちゃんの乳児湿疹で悩むお母さんに、それは母乳の質が悪いから!食事を改善しなさい!脂肪の少ない和食にしなさい!などと指導されることが多々ありました。

何をもって母乳の質の良し悪しを決めるのかは定かではありませんが、お母さんの食事内容で母乳の質が悪くなり、それが乳児湿疹を引き起こすという母乳神話に医学的な根拠はありません。

アレルギー性の場合は要注意

母乳は乳児湿疹に全く関係がないのかというと、そうではありません。母乳にはお母さんの摂ったアレルゲンが微量に含まれることがわかっており、そのアレルゲンが母乳を介して赤ちゃんの身体に入り、アトピー性皮膚炎を発症させることがあります。

アレルゲンは大量に入ると蕁麻疹などのアレルギー症状を呈しますが、微量ずつであれば湿疹という形で症状が現れ、アトピー性皮膚炎の悪化因子にもなり得ます。

つまり乳児湿疹に母乳が影響するというのは母乳の質の良し悪しではなく、母乳に含まれるアレルゲンが関係するということです。

疑わしい場合は病院で検査を

医者

乳児のアトピー性皮膚炎は食事アレルギーが関与しているケースが多いため、湿疹の症状がよくならない場合は食物アレルギーの有無を検査する必要があります。

その上で特定の食物がアトピー性皮膚炎を引き起こしている可能性があると考えられるケースでは、母乳を与えている場合はお母さんが特定の食物を避けたり、離乳食をアレルゲン除去食としたりといった対応が必要になることもあります。

ですが必ずしも食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因になるとは限らず、また母乳に含まれるアレルゲンが影響しているかどうかは治療の経過をみなければ判断できませんので、自己判断で断乳したりミルクに切り替えたりせず、まずは病院で診てもらうようにしましょう。

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まとめ

生後3ヶ月以降の赤ちゃんの肌は皮脂の分泌が減って乾燥肌に傾くため、湿疹など乾燥性の肌トラブルを起こしやすいものです。

乳児湿疹のうち、長引く乾燥性湿疹はアトピー性皮膚炎によるものである可能性が高く、乳児では食物アレルギーが関与していることが多いとされています。

乳児期のアトピー性皮膚炎は自然と軽快するものですが、乳児期の間炎症をきたしたまま放置すると、将来的なアレルギー性疾患にも影響を及ぼすとされており、早いうちに適切な治療を行なうことが望ましいといえます。

何に対してアレルギーを起こす可能性があるかは血液検査で調べることができますので、症状が長引く場合は病院で相談するようにしましょう。

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