赤ちゃんの肌はつるつるすべすべというイメージがありますが、実際はとてもデリケートで、さまざまな肌トラブルを起こしやすいものです。そのため、湿疹などの症状がなかなかよくならないことに戸惑っているお母さんも少なくはありません。
乳児期に湿疹をきたす原因はさまざまですが、それらの全てを総じて乳児湿疹といいます。
乳児湿疹について詳しく知りたいというお母さんのために、乳児湿疹の種類やそれぞれの症状をはじめとする特徴、発症原因などをまとめました。
乳児湿疹とはどんなもの?種類や時期など
乳児湿疹とは、乳児期にみられる湿疹の総称です。本来であれば乳児湿疹は、赤い湿疹がみられる急性湿疹型と、肌に黄色いかさぶたのようなものが付着する脂漏性皮膚炎型とに大別されるものをいいます。
しかし赤ちゃんは皮膚が弱くさまざまな原因で容易に湿疹ができてしまうため、湿疹の種類を特定することが難しいこともあり、乳児期にみられる肌トラブルの全てをまとめて乳児湿疹と呼ぶ傾向にあります。
乳児湿疹の種類
乳児期にみられる湿疹には、皮脂の分泌が多い低月齢でみられる乳児脂漏性湿疹、新生児ニキビといったものや、乾燥による湿疹、あせもやオムツかぶれといった肌トラブル、アレルギーによる小児アトピー性皮膚炎などが挙げられます。
それらはそれぞれ症状や原因が異なるのですが、必ずしもはっきりと区別がつくわけではありません。
例えば月齢が進むにつれて脂漏性の湿疹から乾燥性のものへと移行することが少なくありませんが、乾燥性湿疹は小児アトピーとの区別が困難で、ある程度成長してみなければ診断がつかないことが多いです。
症状がみられやすい時期
乳児脂漏性湿疹や新生児ニキビは生後2週間ほどからみられはじめ、生後3~4ヶ月頃までには治まっていくことが多いです。それより以降は皮脂の分泌量が減り、逆に肌は乾燥しやすくなるため、乾燥性の湿疹がみられるようになります。
乾燥性の乳児湿疹は多くの場合1歳頃までには消失し、小児アトピーと診断されても大半は2歳頃までには軽快します。
乳児湿疹の主な症状は?
乳児期にみられる湿疹には次のようなものがあり、種類によってそれぞれ症状は異なります。
乳児脂漏性湿疹・新生児ニキビ
最も低月齢からみられるもので、乳児湿疹といえば乳児脂漏性湿疹といっても過言ではないほどポピュラーな皮膚トラブルです。症状の程度に差はありますが、ほとんどの赤ちゃんに一度はみられるものです。
髪の生え際や眉毛の辺りなどに、クリーム色から黄色をしたかさぶたのようなものが付着します。指で剥がすと、髪の毛も一緒に抜けてしまうことがあります。
皮膚が炎症を起こすと紅斑や丘疹(きゅうしん。皮膚が盛り上がった湿疹)を生じますが、これは乳児脂漏性湿疹の急性湿疹型にあてはまる症状で、新生児ニキビともいいます。
この新生児ニキビは大人にみられるニキビと同様、赤いものや、中に白い芯のようなものがみられるものなどがあります。
乳児脂漏性湿疹は、顔面や頭部にみられるのが特徴です。黄色いかさぶた状のものは主に髪の生え際や眉毛部にみられます。
湿疹や新生児ニキビは額や頬といった場所に生じやすく、ひどいものでは顔面全体が湿疹で真っ赤になることもあります。
乾燥性湿疹
乾燥性湿疹は肌が乾燥することによって生じる肌トラブルです。脂漏性湿疹が落ち着いてくる頃より発症しやすくなります。
皮脂膜が不足することにより皮膚が潤いを失って乾燥し、赤くなったりザラザラしたりするようになります。
乾燥している部位は肌の防御機能が低下しているためあらゆるダメージを受けやすく、湿疹ができやすくなります。細菌感染を伴うと滲出液がみられるようになり、ジュクジュクすることもあります。
頭部や顔面に症状が顕著となる傾向にあり、特に頬や口の周りが乾燥して赤くなることが多いです。顔面に続いて四肢や体幹にも紅斑がみられるようになり、首の前面、膝や肘の内側、足首など、しわがあって曲がる部位に好発します。
紅斑はなくても、顔や手足など露出する部分は外気にさらされることで肌が乾燥しやすいため、乾燥肌によるザラつきが生じます。
あせも
よくみられる汗疹には「水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)」と「紅色汗疹(こうしょくかんしん)」があります。水晶様汗疹は新生児に多くみられ、それ以降の乳幼児になると紅色汗疹が出始めるようになります。
直径が1mm以下の小さな白い水疱がプツプツといくつも生じます。赤くならないため目立たず、痒みなどの自覚症状もありません。治りも早く、数日で完治することがほとんどです。
紅色汗疹一般的にあせもといえばこちらを思い浮かべる方がほとんどでしょう。赤い発疹ができ、痒みやチクチクとした軽い痛みを伴います。
あせものより痒みのあるあせもを掻き壊してしまった場合、そこから菌が感染して化膿してしまいます。急性期には大豆ほどの大きさの赤いしこりができ、強い痛みを伴います。やがて膿瘍が形成されて排膿されますが、自然に排膿されない場合は切開が必要となることもあります。
一般には「あせものより」と呼ばれることが多いですが、正式名称は「乳児多発性汗腺膿瘍(にゅうじたはつせいかんせんのうよう)」といいます。
あせもができやすいのは汗をかきやすく蒸れやすい頭皮や額、首まわり、関節、服に隠れる部位やオムツに覆われる部位などです。悪化してあせものよりになりやすい部位は頭部や顔面、背部などで、特に額や鼻、こめかみに多くみられます。
オムツかぶれ
オムツかぶれは医学的には「オムツ皮膚炎」といい、オムツが原因で生じる皮膚炎をいいます。
オムツの蒸れによって皮膚が炎症をきたし、おしりや陰部が赤くなったり、赤い湿疹ができたりします。痒みや痛みがあり、ひどいものでは血がにじんだりもします。
オムツ交換の際や入浴時に激しく泣いたり、痒がっておしりに手を伸ばしたりする仕草はおむつかぶれのリスクサインといえるでしょう。
オムツかぶれはオムツに覆われる部位にできるものをいいます。ウエスト、太ももまわりなど、テープやギャザーで締めつけられる場所や、陰部の周囲など、より蒸れやすい部位で好発します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とはアレルギーによる皮膚炎です。乳幼児のアトピー性皮膚炎は前述した乾燥性湿疹と区別がつきにくく、同一のものであるとする意見もあります。小児アトピー性皮膚炎は、多くの場合2歳頃までには軽快します。
乾燥性湿疹とほぼ同様の症状で、まずは顔面などに湿疹が左右対称にみられ、やがて四肢や体幹にも出現します。湿疹は痒みを伴うため、手で引っ掻いたり、抱っこすると顔を擦りつけてきたりすることが多いです。
湿疹が現れている場所以外の皮膚も、全体的に潤いがなく乾燥し、触るとカサカサとしています。よくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴で、日本皮膚科学会の定義によると、乳幼児では2ヶ月以上湿疹が続いた場合にアトピー性皮膚炎と診断されます。
乾燥性湿疹同様に顔面(頬、目の周囲、口の周囲、耳の周囲)と関節部位に湿疹がみられやすく、乾燥による皮膚のざらつきなどがみられます。耳たぶの付け根や耳の後ろが切れる耳切れをきたすこともあります。
乳児湿疹を引き起こす原因は?
皮膚トラブルを生じる原因も、乳児湿疹の種類によって異なります。
乳児脂漏性湿疹・新生児ニキビ
お腹にいたときは羊水の中で潤っていた赤ちゃんの肌は、外に出ると同時に乾燥した外気にさらされることになります。その環境の変化から肌を守るため、赤ちゃんの肌からは大量の皮脂が分泌されます。
この働きにはお母さんの女性モルモンが影響しているとされており、その効果がなくなる生後3ヶ月頃には皮脂の分泌量は減ってきます。
皮脂は赤ちゃんの肌を守る働きをする一方で、過剰に分泌されると汚れとして付着しやすくなります。
乳児脂漏性湿疹では皮脂の分泌が盛んな髪の生え際などに黄色いかさぶた状のものが付着しますが、あれは皮脂や汚れが固まったものです。溜まった汚れが汗や皮脂を分泌する毛穴や汗腺を塞いでしまうと、そこに細菌が増殖して発疹などの原因となります。
乾燥性湿疹
生後3ヶ月頃まではたくさん分泌される皮脂が赤ちゃんの肌を乾燥から守っていますが、次第に皮脂の分泌量が減り、やがては乾燥肌に傾きます。
皮脂膜は肌のバリア機能をつかさどっているため、不足すると肌がダメージを受けやすくなり、湿疹などの肌トラブルが生じやすくなります。
赤ちゃんの肌は薄く、肌を乾燥や刺激から守る角質層も薄いため、肌のバリア機能が未熟なぶんデリケートです。乾燥することでさらに刺激に敏感になり、容易にダメージを受けてしまいます。
あせも
汗をかく汗腺の数は子どもも大人も変わらないため、体表面積が小さい子どもはそのぶん汗腺が密集していることになり、よりあせもができやすいといえます。単位面積あたりの汗腺の密度は、新生児では大人の12倍、1歳でおよそ8倍になるとされています。
乳幼児では汗の分泌量が多いにもかかわらず汗腺が未発達であるため、汗がうまく外へと分泌されずに皮膚の中に溜まってしまい、あせもができやすくなります。
わたし達大人は汗をかいたら拭いたり着替えたりできますが、乳幼児はそうした対処ができないことも大きな理由として挙げられます。
関連記事:赤ちゃん&子どものあせも改善・予防の為に知っておきたい事まとめ
オムツかぶれ
体内の老廃物であるおしっこには肌を刺激する成分が含まれており、時間が経つとさらに刺激は強まります。便中には大腸菌や酵素などが含まれていてとても刺激性が高く、特に赤ちゃんの便は軟らかいため肌への刺激が強いものです。
汗や排泄物によって、オムツの中は非常に蒸れやすい環境にあります。蒸れて肌がふやけると肌のバリア機能が落ち、排泄物による刺激を受けやすくなります。
カンジダはカビの一種です。蒸れたオムツの中は非常にカビが繁殖しやすい環境にあり、カビが原因の皮膚炎をきたすことがあります。
関連記事:赤ちゃんがおむつかぶれになる原因は?予防する為の対策法
アトピー性皮膚炎
アトピー素因とはその名の通り遺伝的なアレルギー体質のことをいいます。アトピー素因は遺伝性のものであるため、家系にアトピーや花粉症、喘息などのアレルギー性疾患をもつ人がいると、その家系にはアトピー素因があると判断できます。
アトピー性皮膚炎の症状は、必ずしもアレルギーによって出現するとは限りません。アトピー体質の人は、皮膚の潤いを保つのに重要な役割を果たしている角質層の「セラミド」という脂質がつくられにくい体質であることがわかっています。
つまり原因となるアレルギー因子がなくても、肌が乾燥しやすく皮膚炎の症状をきたしやすいということです。
乳幼児でみられる小児アトピー性皮膚炎では、アレルゲン(アレルギー症状の原因)の多くは食物です。
主なものでは卵や乳製品、小麦などがありますが、その中でも最も多いのは卵で、離乳食を開始する前であっても卵を摂取した母親の母乳を介してアレルギーが出現し、徐々に進行することがあります。
2歳以下のアレルギーでは食べ物によってきたされるものが大半で、ホコリやダニ、花粉、犬や猫といった環境因子によるアレルギーは、一般には2歳以降でみられるようになります。
離乳食を開始する前からアレルギー症状をきたす赤ちゃんがいますが、この場合は母親が摂取した食べ物が母乳を介して赤ちゃんの体内に入ると考えられています。
母乳に混入するアレルゲンはごく微量なので、母乳を経由してアレルギーを引き起こすケースは稀ですが、可能性はゼロではないため湿疹が続く場合はアレルギー検査が必要となります。
まとめ
一言で乳児湿疹といってもその種類や原因はさまざまです。
乳児脂漏性湿疹であればどんなに気をつけていてもほとんどの赤ちゃんにみられるものですので、あまり神経質になる必要はありません。
乳児湿疹の多くは月齢が進めば軽快しますが、なかなかよくならなかったりひどくなってくるような場合は、病院で診てもらうようにしましょう。