つらい乳腺炎の原因は?発症させないための予防法を知っておこう!

赤ちゃんと母親病気

乳腺炎は頻度の高い授乳トラブルで、実に母乳育児中の人の4人に1人が経験するとされています。

ひどいものになると高熱や激痛をきたしてとてもつらい思いをするだけでなく、場合によっては手術が必要になったり、授乳を中断せざるを得なくなることもあります。

今回はそんな乳腺炎の原因と、乳腺炎にならないための予防法について解説します。

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乳腺炎の原因は?

女性

なりやすい体質

乳腺炎になりやすい体質というものがあり、どんなに気をつけていても何度も乳腺炎を繰り返すような人もいれば、何も意識していなくても全くならない人もいます。
次のような体質の人は、乳腺炎になるリスクが高いといえます。

乳腺が細い

乳腺は母乳の通り道ですが、その乳腺に乳汁が詰まることで乳腺炎は引き起こされます。乳腺の太さには個人差がありますが、細い人のほうがより乳腺が詰まりやすくなります。

乳腺は乳汁の分泌が続けば太くなる傾向にあるため、一般に経産婦よりも初産婦のほうが細く、乳汁がうっ滞しやすいといえます。

母乳の産生量が多い

体質的に母乳の産生量が多い人や、高プロラクチン血症などによって母乳の分泌過多になっている人では、乳腺が詰まるリスクが高くなります。

赤ちゃんが欲しがるぶんよりも多くの母乳が出る人は飲み残しが多くなってしまうため、うつ乳が続いたり炎症を生じたりしてしまいます。

食事内容と乳腺炎の関係

ヨーグルト

脂肪分を多く含む食べ物や乳製品を食べると乳腺炎になりやすくなる、という話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

実際、産婦人科や助産院などではそうした食べ物を控えるようにと指導されたという人も多いと思います。しかし近年になって、特定の食べ物が乳腺炎に繋がる化学的根拠はないとする見方が強くなってきました。

特定の食品が原因ではない

乳製品(生クリームやヨーグルトなど)、高脂質のもの(揚げ物や焼肉など)を摂ると母乳がドロドロになり、乳腺が詰まって乳腺炎になりやすいとされてきまし た。母乳はお母さんの血液からつくられますので、「血液中の脂質が上がる」=「母乳に含まれる脂質も多くなる」=「母乳がドロドロになる」といったイメー ジが定着したのかもしれません。

確かに母乳に含まれる脂肪の濃度は、摂取した食事によって多少変動することがわかっています。しかし食べ物 に含まれる脂肪は一度お母さんの体内で消化されてから吸収されますので、摂取した脂肪の分子が母乳に直接含まれるわけではありません。よってお母さんが食 べたものによって、母乳がドロドロになるようなことはないのです。

大切なのは母乳の産生と流出量

で は、こうした食品と乳腺炎には全く関係がないといえるのかというと、そうではありません。乳製品や高脂質高カロリーなものを摂取すると、母乳の産生量が増 加します。そうすると赤ちゃんが全てを飲み切ることができなくなり、飲み残しがうつ乳を引き起こし、結果として乳腺炎をきたしやすくなります。

たくさん母乳が出ても、そのぶん赤ちゃんが多く飲んでくれるのであれば問題はありません。大切なのは母乳のつくられる量と、赤ちゃんが飲んでくれる量のバランスです。

授乳の際の姿勢

母乳が乳腺に滞ると、その部分に乳腺炎が生じやすくなります。授乳させる姿勢が悪いと、赤ちゃんにうまく吸ってもらえない部分ができてしまいます。また毎回同じ姿勢で授乳するのも、飲みムラができてしまいがちです。

授乳の間隔

授乳間隔をあけると母乳がうっ滞して乳房が張り、乳腺炎をきたしやすくなります。特に夜間は母乳が多く産生されますので、夜間授乳を怠ると乳腺炎の発症率が上がります。

産後の身体的疲労

疲れている女性

産後は体力が回復しきっておらず、また昼夜を問わない育児で睡眠不足にもなりやすく、お母さんの身体的疲労は大きいものです。

疲労や睡眠不足によって体の抵抗力も落ちてしまいがちですので、うっ滞性乳腺炎が悪化し、細菌感染による化膿性乳腺炎をきたしてしまうこともあります。

精神的ストレス

ストレスは免疫力を低下させることが知られています。慣れない育児やホルモンバランスの変化によって、産後は精神的ストレスが溜まりやすいです。

免疫力が低下すると、化膿性乳腺炎だけでなくあらゆる感染症をきたしやすくなります。

乳頭トラブル

感染性乳腺炎は、細菌が乳腺へと侵入することで生じます。乳頭の裂傷や白斑(白いできもの)、水疱、血豆などの傷口から細菌が感染し、乳腺炎へ発展してしまうケースも少なくありません。これらの乳頭トラブルは、乳頭が授乳の刺激に慣れていない授乳初期の頃に特に生じやすいです。

乳腺炎にならないための予防法は?

授乳中の女性

授乳回数を増やす

母乳の場合はミルクと違って、授乳の間隔を決める必要はありません。基本的には赤ちゃんが欲しがるだけあげても大丈夫です。乳腺炎の予防のためにも、授乳はなるべくこまめに行うようにしましょう。

特に夜間は生産される母乳の量が多いため、注意が必要です。夜起きて授乳するのは大変かもしれませんが、乳腺炎の予防のためにも頑張って授乳しましょう。

正しい姿勢で授乳する

正しい授乳姿勢で、赤ちゃんに全ての乳腺を均衡にムラなく吸ってもらうことが大切です。授乳の際の赤ちゃんの抱き方には、次のようなものがあります。

毎回同じ姿勢ではなく、ローテーションさせて飲み残しがちな乳腺をつくらないようにすることがポイントです。

横抱き

授乳する側の腕で赤ちゃんを横に抱く抱き方です。支えている腕の下にクッションなどを挟むと楽に授乳できます。

交差抱き(斜め抱き)

授 乳する側とは逆の腕で赤ちゃんの頭を支えるようにして抱きます。こちらも腕の下にクッションなどを挟むと安定します。横抱きでは前屈みになってしまうよう な背の高いお母さんに適しています。横抱きとは角度が変わるため、横抱きで飲み残しが生じやすい部位を吸ってもらえます。

脇抱き(フットボール抱き)

赤ちゃんを脇に抱いて授乳する方法です。赤ちゃんがお母さんの目を見ながらおっぱいを飲むことができます。乳首が短い、扁平乳頭、陥没乳頭などの人に向いている抱き方です。

縦抱き

こちらも乳首が短い、扁平乳頭、陥没乳頭などの人に向いています。頭がぐらつかないように、首の後ろをしっかりと支えてあげましょう。横抱きや交差抱きで飲み残しやすい部位を吸ってもらえます。

添い乳

お母さんと赤ちゃんが横向きに寝て授乳する方法です。赤ちゃんの大きさに合わせて、お母さんの腕やバスタオルで頭の高さを調整します。お母さんが身体を休めながら授乳することができますが、窒息を防ぐためにも一緒に眠ることは避けたほうがよいでしょう。

正しく乳頭をくわえさせる

授乳中の赤ちゃん

浅いと乳頭トラブルの原因に

授 乳の際くわえさせ方が浅いと、乳首に強い力が加わりさまざまな乳頭トラブルを生じます。乳頭に傷ができると授乳のたびに痛むため授乳が億劫になり、授乳間 隔があいてしまってうっ滞性乳腺炎を引き起こしやすくなります。また傷口から細菌感染をきたし、化膿性乳腺炎を引き起こす原因にもなります。

深く乳輪までくわえさせる

赤ちゃんの口の中には乳首が納まる乳窩(にゅうか)と呼ばれるくぼみがあるのですが、くわえ方が浅いとこの部分に乳首が届かないため、赤ちゃんはうまく母乳を吸うことができません。

赤 ちゃんにしっかりと母乳を吸ってもらうためには、乳頭を正しくくわえさせることがとても重要です。乳首だけを口に含ませるのではなく、しっかりと乳輪部分 まで大きくくわえて貰うようにしましょう。深くくわえさせることができると、赤ちゃんの上唇がめくれてアヒルの口のようになります。

乳頭のケアをする

一度乳首が傷ついてしまうと授乳のたびに痛んでとてもつらい思いをする上に、授乳のたび力が加わるためなかなか治りません。しかし最初のうちは授乳に不慣れだったり、乳首自体が授乳の刺激に慣れていないため、乳首が傷ついてしまうケースは非常に多いです。

できるだけ傷をつくらないように気をつけ、それでも傷ついてしまった乳頭はしっかりケアをして、できるだけ早く治すようにしましょう。

授乳後は保湿する

授 乳のあとは、赤ちゃんの唾液で乳頭がふやけた状態になっています。そのままにしておくと油分の失われた乳頭はカサカサになり、裂傷を生じやすくなったり傷 の治りが遅くなってしまいます。そのため授乳を終えたあとは、保湿クリームなどを使用して乳頭をしっかりと保湿しておきましょう。

このときピュアレーンやランシノーといった乳頭ケア専用のものを使用すると、赤ちゃんの口に入っても問題のない成分であるため安心ですし、授乳のたびに拭き取る必要もないので手間がかかりません。

乳頭保護器の利用

乳頭保護器とは、授乳の際に乳頭を覆うことで乳頭にかかる負荷を軽減するための器具です。授乳時の痛みが強い場合は、こうしたグッズを利用するのもよいでしょう。

色々なタイプが市販されていますので、お母さんと赤ちゃんに合ったものを探してみてください。

傷がひどい場合は病院へ

痛みがあるからと授乳間隔をあけたり、自己判断で断乳しようとすると乳腺炎を引き起こしてしまいかねません。傷がひどくなってきたり、痛みで授乳が困難な場合は必ず病院で診てもらうようにしましょう。

乳房を圧迫しない

胸元を押さえる女性

乳房を圧迫すると乳腺が圧迫されるため、うつ乳を引き起こし乳腺炎の発症リスクが高まります。授乳をしている間は身体を締めつけるきつい下着などは避け、授乳用のブラジャーを着用するようにしましょう。

十分に休息をとる

産後は体力の戻りが十分でなく、また睡眠不足などが重なって免疫力が低下してしまいがちです。赤ちゃんが眠っている間はお母さんも一緒に休むようにし、できるだけ休息をとるようにしましょう。

ストレスを適度に発散する

ストレスもまた免疫力を低下させることがわかっています。産後は慣れない育児で、かつ生活スタイルも変わるためストレスが溜まってしまいがちですが、なるべくリラックスできる時間を確保してストレスを溜め込まないよう心がけましょう。

急に断乳しない

赤ちゃん

ある日突然授乳を止めた場合、おっぱいがカチカチに張ってうつ乳状態となり、そのままにしておくと乳腺炎を引き起こしてしまいます。

望ましいのは卒乳(赤ちゃんの方からおっぱいを卒業したり、母乳が自然と出なくなること)ですが、どうしても都合で断乳しなければならないという場合は、乳腺炎の予防のために次のような工夫をしましょう。

授乳間隔を伸ばしていく

母乳は赤ちゃんが乳頭に吸いつく刺激によって産生されます。赤ちゃんが頻回に吸いつけばそれだけ母乳はつくられますし、授乳しないでいると母乳量は減っていき、やがては出なくなっていくものです。

しかし急に断乳すると、これまで通りつくられた母乳がおっぱいの中に溜まってしまい、乳腺炎を引き起こします。そのためあらかじめ断乳したい日よりも早くから授乳間隔を少しずつ伸ばしていき、母乳の分泌量を減らしていったほうが、よりスムーズに断乳できます。

適度に搾乳(さくにゅう)する

断 乳後、母乳がつくられている間はおっぱいが張ります。そのまま放っておくと乳腺炎になってしまいますので、はじめは1日1回のペースで搾乳(手で母乳を搾 ること)しましょう。ただし搾乳し過ぎると、その刺激によって母乳がつくられてしまいますので、適度に行うことが肝心です。

また搾乳の際に乳頭や乳輪の付近に触れると母乳の分泌を促してしまいますので、なるべく刺激しないように気をつけましょう。乳房全体を両手で包み込み、外側から内側へと大きくマッサージするようにして搾乳するのが効果的です。

水分の摂取量は適度に

母乳を出すとそれだけ体の水分が失われますから、母乳育児には十分な量の水分摂取が欠かせません。

しかし水分を摂ると母乳の産生量が増加するため、元々母乳の分泌量が多い人や、乳房が張りやすい人、断乳を試みている最中の人など、水分の摂取量を制限したほうが良い場合もあります。水分の摂取量は、自身のおっぱいの様子をみながら調整するようにしましょう。

まとめ

乳腺炎は母乳がうっ滞することで引き起こされます。乳腺炎にならないようにするためには、作られた母乳をしっかりと赤ちゃんに飲んでもらうことが大切です。

適切な授乳方法で日頃から予防を心がけ、赤ちゃんとの幸せな授乳タイムを過ごしてくださいね。

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参考リンク

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宋美玄オフィシャルブログ|乳製品や甘いもので乳腺炎になるの??

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