ロタウイルス感染症とは?いつから感染?ノロウイルスとの違いは?

育児

ロタウイルスとは、主に乳幼児に感染性胃腸炎をもたらすウイルスです。乳幼児にみられる胃腸炎の原因として最も頻度が高いものですが、脱水や合併症などで重篤な状態になる危険性もあるため、決して軽んじてはいけない病気です。

ロタウイルスの感染経路などをはじめ、同じく感染性胃腸炎の原因ウイルスであるノロウイルスとの違いなどについてまとめました。

スポンサーリンク

ロタウイルス感染症とは?

ウイルス

ロタウイルス感染症(ロタウイルス感染性胃腸炎)とは、ロタウイルスが原因で引き起こされる感染症です。乳幼児期(0~6歳頃)に感染しやすい病気で、感染すると1~3日程度の潜伏期間を経て、下痢や嘔吐といった胃腸炎症状が出現します。

先進国、発展途上国問わずほとんどの児が5歳までに感染し、発展途上国では多くの子どもが命を落とす原因となっています。

主な症状

水のような激しい下痢や、嘔吐、発熱が続くため、特に月齢の低い乳児は容易に脱水となり、入院治療が必要となることも少なくありません。別名「白色便性下痢症」とも呼ばれるように、白色~黄白色の特徴的な便が約半数でみられます。

初めて感染したときに最も症状が重くなる傾向にあり、何度も感染している大人は感染しても無症状であったり、発病しても軽症で済むことが多いのが特徴です。

ロタウイルスは何回も感染するの?

ウイルス

ロタウイルスに感染すると、免疫ができます。免疫がつくられる病気はまたかかることはないと思われがちですが、ロタウイルス感染症は何度でも感染する可能性があります。

感染後にできる免疫は感染したウイルスの型に対するもののみであり、多くの型が存在するロタウイルスでは、感染後にできる免疫が不完全であるためです。

つまり型が違えば再感染する可能性は十分にあり、中には何度でも感染を繰り返したり、連続して感染する人もいます。

しかし初回の感染が最も重症になりやすく、2回目、3回目になるにつれて症状が軽くなっていく傾向にあります。

ロタウイルスへの初感染後、38%の人では2度目の感染を防ぐことができ、77%の人は次回感染しても発病せず、87%の人は発症しても重症とならないとされています。

感染力が極めて強い

ロタウイルスの感染力は非常に強力で、10~100個程度のウイルスが体内に入っただけでも感染すると言われています。衛生状態の良い先進国であっても、5歳までにほとんどの児が感染するのはそのためです。

ロタウイルスの寿命

ロタウイルスは体外でも安定して存在することができ、その寿命は数日~数週間程度で、場合によっては数ヶ月間もの間生存することがあると言われています。感染力を維持できる期間は、手の表面で数日間、器物の表面で1~10日間程度とされています。

ロタウイルスはいつから感染するの?

泣いている赤ちゃん

ほとんどの児が0歳から5歳までの間に1度は感染すると言われているロタウイルスですが、特に生後3ヶ月から2歳までの乳幼児が重症化しやすいとされており、日本ではロタウイルス感染症で入院した児の3割が0歳児で、4割が1歳児とされています。

生後3ヶ月未満の乳児では重症化することは少なく、感染しても無症状であるケースも多いのですが、これは母体から受け継いだ抗体の働きによるものや、母乳に含まれる免疫の効果が影響していると考えられています。

流行する時期

ロタウイルスが流行する季節は冬季~春季で、11月から5月にかけてみられ、特に2月から3月にかけて最も患者数が多くなります。

近年では毎年その時期になるとニュースでとり上げられるようになり、注意喚起や予防接種を促すポスターやパンフレットが出回るようになってきたため、ロタウイルスの認知度は高まってきています。

一方梅雨の季節から夏場にかけて多くみられる感染性胃腸炎は、細菌性の胃腸炎です。これらの感染性胃腸炎は感染症法では5類感染症に分類され、指定された医療機関は保健所に届け出る必要があるため、常に発生状況を把握できるようになっています。

感染しやすい場所

幼稚園

ロタウイルスの好発年齢的にも、保育園や幼稚園が最も感染拡大しやすい場所です。乳幼児に限らず、学校や高齢者の集う老人福祉施設などでも過去に集団感染の報告が上がっています。

これら集団生活を送る場はウイルスと接しやすい環境にあるため、感染のリスクが高いと言えるでしょう。

また不特定多数の人が料理を口にする飲食店などでは、調理従事者が感染源となって集団感染を引き起こした事例も数多くあります。

ロタウイルスの感染経路は?

おしゃぶりをする赤ちゃん

ロタウイルスの主な感染経路は、保菌者やウイルスの付着した部分に接することによる接触感染で、口からウイルスが入って感染をきたす経口感染です。

特に感染者の吐瀉物や糞便中には多量のウイルスが含まれており、患者の下痢便1ml中には1億から100億程ののウイルスが含まれているとも言われています。

吐瀉物や糞便のつきやすいトイレの便座は勿論のこと、患者が触れるトイレのレバー、ドアノブ、電気のスイッチなど、ありとあらゆるものにウイルスが付着し、そうした汚染部位に触れることで手に付着したウイルスが、口に入ることで感染をきたします。こうした感染経路のことを、糞口感染とも言います。

嘔吐した患者の唾液にはウイルスが含まれるため、当然キスや食器の共用などでも感染する可能性があります。赤ちゃんの場合指しゃぶりをしますので、その手で触れたものにウイルスが付着し、感染を拡大させる原因にもなります。

空気感染

患者の吐瀉物などが乾燥すると空気中にウイルスが舞い上がり、それを吸うことで感染してしまうことがあります。

咳やくしゃみなどをした際に唾液とともにウイルスが空気中に飛び散り、感染をきたす可能性もゼロではありません。

二枚貝などの汚染食品

牡蠣

ウイルスに汚染された食品(ウイルスが自然宿主とするもの)を摂取することによる感染経路もあります。ロタウイルスをはじめ、A型肝炎ウイルスやノロウイルスなどの感染源になる可能性がある食べ物は、牡蠣、ホタテ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの二枚貝です。

二枚貝はプランクトンを捕食すると同時にウイルスを取り込んで、中腸腺という器官に蓄えます。生、あるいは加熱調理が不十分な場合、より感染のリスクは高まります。

そのため生牡蠣は最もウイルス感染リスクの高い食品と言えますし、直接中腸腺の部分を食すことのないホタテの刺身も、洗浄が不十分な場合に感染源となることがあります。

ロタウイルスとノロウイルスの違いは?

ウイルス

罹患しやすい年齢

ロタウイルスは生後6ヶ月以上2歳未満の乳幼児が全体の半数以上を占めるのに対し、ノロウイルスは乳幼児から高齢者までのどの年齢層でも発症します。

流行する時期

流行のピークはロタウイルスが2~3月頃で、ノロウイルスは11~12月頃です。大抵、ノロウイルスよりもロタウイルスのほうが遅れて流行します。

症状の違い

ロタウイルスもノロウイルスも急性胃腸炎を引き起こすウイルスであり、嘔吐下痢症を発症させる点では類似しています。

ロタウイルスは、嘔吐(9割以上)、下痢(9割以上)、発熱(8割以上)の3主徴で、下痢の約半数に白色~黄白色便がみられます。症状の程度としては、嘔吐よりも下痢のほうが激しい傾向にあります。

一方ノロウイルスでは嘔吐(9割以上)、下痢(約7割)が主な症状で、発熱(2割以下)の頻度は低いのが特徴です。嘔吐の症状が強く、下痢は比較的軽いことが多いです。

潜伏期間

ウイルスが体内に入り感染が成立してから、症状が出るまでの期間のことを潜伏期間といいます。ロタウイルスの潜伏期間は1~3日(24~72時間)程度で、ノロウイルスの潜伏期間はそれより少し短い1~2日(24~48時間)程度です。

免疫抗体

ロタウイルスもノロウイルスも1度感染すればその型に対する免疫が獲得できますが、多くの型が存在するために何度でも感染するという点では共通しています。

しかし再感染を繰り返すごとに軽症になっていくロタウイルスとは異なり、ノロウイルスの場合は症状が軽くなる傾向にはないようです。

そのためロタウイルスが初感染の乳幼児期に発症することが多いのに対し、ノロウイルスでは初感染時のみならず、成人であっても激しい症状をきたします。

感染力

流行シーズンがあることからも感染力の強さがうかがえるノロウイルスですが、ロタウイルスはそんなノロウイルスよりもさらに強い感染力を持っています。また感染者が排泄するウイルスの量も、ノロウイルスを上回ります。

大人は感染しても症状が出ないことも多いですが、症状がみられなくてもウイルスは排出されます。

まとめ

ロタウイルスによって重い症状が現れるのは大半が乳幼児で、成人ではあまり問題視されないため、ノロウイルスよりも認知度が低い傾向にあります。

しかし例え症状がなくてもウイルスは排出されるため、本人が気づかないまま周囲に感染を拡大させる危険性があります。

乳幼児がロタウイルスに感染すると激しい症状の末に脱水をきたしやすく、ときに命にかかわることもあるため、流行シーズンは注意が必要です。

関連記事ロタウイルス感染症でみられる症状は?病院ではどんな検査をする?

関連記事ロタウイルスの予防接種(ワクチン)の種類/時期/副作用/費用など

参考リンク

国立感染症研究所感染症情報センター|ロタウイルス

国立感染症研究所感染症情報センター|ロタウイルス感染症とノロウイルス感染症との比較検討

サラヤ株式会社|感染症の種類と特徴

横浜衛生研究所|ロタウイルスによる感染性胃腸炎について

科学研究費助成事業データベース|ロタウイルスNSP4タンパクのエンテロトキシン活性の解明

さいとう小児科内科クリニック|ワクチン

NIID国立感染症研究所|ロタウイルス感染性胃腸炎とは

厚生労働省|ロタウイルスに関するQ&A

京都府|これだけは知っておきたいノロウイルス感染症の知識

タイトルとURLをコピーしました