妊娠中に起こりやすい体調不良の一つに、妊娠中高血圧があります。妊娠中の高血圧は危険な兆候であり、重症の場合は常位胎盤早期剥離や、胎児の発育不良・脳の障害がおこることもあるため、妊婦健診でも特に注意を払われます。
妊娠中高血圧の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、出産後には自然に落ち着いていきます。
ところが出産後、12週間を超えても高血圧が維持されることがあります。また、妊娠中は正常な血圧値だったのが、産後から高血圧になることもあります。これらの症状は妊娠中高血圧とは区別して、産後高血圧と呼ばれています。
高血圧には心不全、腎不全、動脈硬化、脳卒中などの深刻な合併症があり、予防と早期の発見、治療が欠かせません。今回は、産後の高血圧の原因と症状、治療法についてまとめました。
産後に高血圧になる原因とは?
産後高血圧の原因として、以下のようなものが考えられます。
妊娠中高血圧の回復が遅れている
妊娠中高血圧の症状が重かった場合、産後も回復が遅れ、高血圧の状態が続くことがあります。
過労やストレスによる自律神経の失調
育児の疲れや睡眠不足やストレスから自律神経が乱れ、高血圧を引き起こすことがあります。
本態性高血圧症
もともと高血圧の要因があったのが、出産を機に症状となって現れることがあります。過労やストレスのほかに、遺伝、アルコールや塩分の過剰摂取、肥満などの生活習慣にもかかわりがあります。
二次性高血圧症
まれに、他の病気が高血圧を引き起こしていることがあります。原因となっている病気の治療により完治する確率が高いため、正確な診断が重要です。
原因となる病気には、腎臓の疾患や、副腎のホルモン分泌の異常、甲状腺機能異常、高カルシウム血症など、様々なものがあります。
産後に高血圧になった時の症状?
高血圧には、特有の自覚症状がありません。無症状か、一般的な体調不良の症状が起こることがあります。
- 動悸
- 頭痛
- 胸痛
- 顔のほてり
- めまい
- むくみ
- 手足の痛み、しびれ
- 夜間の頻尿
- 呼吸困難
- 耳鳴り
そのため、高血圧かどうかを判断するためには、血圧計を使用しての血圧値の測定が必要です。
高血圧の目安は、心臓収縮時の最高血圧が140mHg以上、心臓拡張時の最低血圧が90mHg以上とされています。さらに、「最高血圧/最低血圧」が「160mHg以上/100mHg以上」以上で中度高血圧、「180mHg以上/110mHg以上」で重度高血圧といわれています。
血圧は変動しやすいので、時間を置いた2回以上の測定値を基に診断するのが望ましいです。また、血圧値はストレスにも左右されやすく、白衣高血圧(普段は正常な血圧値が、病院で測定するときだけ高血圧になる)や、仮面高血圧(普段は高血圧なのに、病院で測定すると血圧が低くなる)などの現象が起こることもあります。
病院で測定した血圧値より、家庭用の血圧計などで日々測定した値のほうが、脳卒中や心筋梗塞の予測に適しているという研究結果もあり、家庭での測定値には信頼性があるようです。
タイミングとしては、朝食の前後に2回血圧を測定するとよいでしょう。高血圧の合併症である脳卒中や心不全は、朝の時間帯に起こりやすいため、朝の血圧の管理が重要になるからです。
産後の高血圧を治療する方法は?
高血圧は原因が特定しにくく、深刻な合併症もあるため、予防と早期発見が大切です。しかし、高血圧は自覚症状がないか、一般的な体調不良の症状が出るだけで、発見が難しく、悪化するまで放置してしまう危険もあります。
1か月健診の時の血圧が高かったり、むくみやめまい、動悸などの症状が続くようであれば、医師に相談しましょう。
治療法、予防法としては、以下のものがあります。
二次性高血圧の場合
二次性高血圧の場合は、高血圧の原因となっている病気の治療を行います。
重度な高血圧の場合
重度な高血圧の場合は、降圧剤で血圧を下げる治療を行います。但し、母乳を与えてる間は、赤ちゃんへの影響があるため降圧剤は使用できません
降圧剤を使用しない場合
降圧剤を使用しない場合は、以下に紹介するような生活習慣の改善が重要になります。生活習慣の改善は、高血圧の予防にもなります。
生活習慣の改善:食事
高血圧の予防や治療を目的にした生活習慣の改善で、もっとも有効とされているのが食事内容の改善です。継続的な努力が必要になります。
塩(塩化ナトリウム)以外にも、重曹(炭酸水素ナトリウム)、化学調味料の「アミノ酸等」(グルタミン酸ナトリウム)などもナトリウム源となるので控えましょう。1日の塩分の摂取量を6g以下に抑えるよう心がけましょう。
カリウムは水に流れやすいので、生食か蒸す、焼く、スープにするなどの調理法がお勧めです。
生活習慣の改善:安静、睡眠
リラックスすることで交感神経の緊張状態がとれ、血圧を下げると考えられています。十分な睡眠をとったり、安静にすることで、血圧が下がる効果が期待できます。
生活習慣の改善:運動
運動の習慣は、身体の新陳代謝を高め、脂肪を燃焼しやすい体質になるため、高血圧の予防につながります。1回30分~1時間程度のウォーキング、軽いジョギング、ゆっくりとした水泳などを週3回以上行うと効果的です。
但し、高血圧の症状が中程度以上であったり、循環器系の持病がある場合は、血管に負担をかけ、症状を悪化させる危険もありますので、医師に相談しましょう。
生活習慣の改善:喫煙、飲酒
一日に日本酒にして1合以上の習慣的な飲酒により、高血圧のリスクが高まるという統計があります。また、喫煙をすると血管を収縮させ、血圧を上げる効果があります。
妊娠、授乳期以外でも、喫煙、飲酒を控えることで、高血圧のリスクを減らすことができます。
まとめ
産後高血圧は、原因も明らかにはなっていない上に、自覚症状があまりなく、見逃しやすい病気です。定期的な健診で血圧を測定するなど、早期発見ができるよう心がけましょう。
産後高血圧の治療や予防として、食事をはじめとする生活習慣の改善が重要になります。
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