妊娠して、赤ちゃんがお腹の中にいる喜びに浸っているのも束の間、身体のことやこれからの生活のことなど、悩みは尽きません。
特に、どこで出産するのか、里帰り出産をするべきかしない方がいいのか悩んでいる妊婦さんも多いのではないでしょうか。
そこで、今回は里帰り出産のメリットやデメリットを解説し、いつから帰るのが良いのか、どんなことを準備しておくべきなのかなどの疑問を解消していきます。
里帰り出産とは?
里帰り出産とは、その名のとおり、結婚を機に実家を出て離れて暮らしていた女性が、妊娠してから、里(実家)に帰って出産することを言います。
また、出産前だけでなく、出産後にママと赤ちゃんが実家で面倒をみてもらう期間も含まれています。
里帰り出産の割合
出産する人の約4割が里帰り出産を選択すると言われています。
核家族化が進み、出産の前後に周囲に頼る人がいない環境である妊婦さんが増えたことで、里帰り出産を希望する家庭が増えたと言えます。
しかし、最近になって、一時期より里帰り出産の割合が減ったのは、都心など街の中心地以外では、出産できる病院が少なくなってきていることが原因でしょう。
さらに、イクメンという言葉が浸透してきたように、家事や育児を手伝ってくれるパパが増えたことや、自治体の育児サポートが上手く機能するようになってきたことも里帰り出産が減った原因となっています。
里帰り出産のメリット
産前は、お産のことを考えると不安でたまらなくなるし、産後は「産後うつ」という言葉があるくらい、ホルモンバランスの乱れから、精神的に不安定になりやすいものです。
そこで、子供の頃から慣れ親しんだ場所で、親しい人たちに見守られて産前産後を過ごせることは、ママにとって精神が安定するのにもってこい環境なのです。
また、お産の時も、緊張していると子宮口がなかなか開かないこともあるので、リラックスできる環境や何でもさらけ出せる家族がそばにいることで、お産をスムーズに進行させることができるのです。
実家が遠く離れた場所であれば、赤ちゃんが生まれてすぐに両親に合わせることはできません。
しかし、孫である赤ちゃんに会いたいのはもちろん、出産を終えた娘の顔を見て労ってあげたいと思うのも親心ではないでしょうか。
親にとっては嫁に出した手前、里帰り出産という機会でもない限り、娘と孫といっしょに過ごせることはなかなかないので、里帰り期間でめいっぱい親孝行しようと考えるママたちも多いようです。
産褥期とは、お産を終えた身体が、妊娠前の状態に戻るまでの期間のことで、一般的に産後6~8週までのことを言います。
産褥期に無理をすると、子宮収縮が上手くいかなかったり骨盤が歪んでしまったりして、将来的にも身体に悪影響を及ぼすため、産褥期の過ごし方は重要なのです。
しかし、安静にしなければならない、ということではなく、実家の両親に頼り過ぎて、何から何まで親の世話になった生活をしていると、自宅に戻った時に大変かもしれませんね。
里帰り出産のデメリット
里帰り出産であれば、パパが立ち合いで出産することは難しいし、赤ちゃんにもすぐに会うことができません。
そのため、パパとしての自覚が芽生えにくく、ママが赤ちゃんを連れて自宅に戻った時も、赤ちゃんのいる生活になかなか馴染むことができないのです。
パパが休みの日はなるべくママと赤ちゃんに会いに来る、毎日コミュニケーションを取るようにするなどして、パパの生活の中にママと赤ちゃんの存在を認識させましょう。
実は、ママの年齢が上がるほど、里帰り出産を選択しない人が増えていて、その理由の一つに挙げられるのが、ライフスタイルが変化することによってストレスを感じることです。
社会経験が長い女性ほどライフスタイルが確立されており、いくら生まれ育った実家といえども、世代が違うとライフスタイルの違いは否めません。
育児の大先輩として、自分の母親の存在はとても心強いもの。しかし一方で、育児について何かと親に口を出されてイライラしてしまうママも。
特に、自分の母親世代と今の子育てでは、さまざまなことが変わってきていることから、実の母親との育児に関する世代間ギャップに悩むママも少なくないのです。
実家にいればお金がかからないと思いがちですが、実はパパが休みの日にママの実家まで往復する交通費や、パパと連絡を取り合うコミュニケーション費などが余分にかかってくる費用もあります。
その上、パパの生活費も一人になったから減るわけでもなく、逆に食事が総菜や外食になって食費が増えてしまうことも。
さらに、実家に御礼をするのも忘れてはいけません。結婚を機に家を出た身であり、親しき中にも礼儀ありです。
赤ちゃんとママがいることで増える食費や光熱費などを考慮し、2万円×滞在月を御礼として支払うのが妥当でしょう。上の子がいる場合プラス5000円くらいが相場となっています。
関連記事:里帰り出産でお世話になった実家へのお礼は?【先輩ママの体験談】
里帰り出産はいつから帰るのがベストなの?
里帰りの時期としては、一般的に臨月に入る前から、産後の母子の1ヶ月健診が無事に終わるまでの約2ヶ月間と言われています。
しかし、妊婦さんの体調や実家の場所などによっても状況は変わってくるので、詳しく見ていきましょう。
里帰り先が遠方の場合
遠方の場合、移動中に陣痛が始まってしまうことのないように、妊娠9ヶ月頃には里帰りすることをおすすめします。
それに、お腹が大きくなるとじっと座ったままの姿勢も身体に負担がかかることから、乗り物に乗って長距離を移動することは難しくなってくるのです。
産後も、赤ちゃんへの負担や授乳ペースなどを考えると、首がきちんと座ってからの方が、ママも赤ちゃんも楽だと言えます。
移動は自家用車の方が、自分や赤ちゃんのペースで過ごせるし、重たい荷物を持たなくていいのでおすすめですが、ゴールデンウィークや正月の連休時は渋滞するため、避けた方がいいでしょう。
飛行機での移動には注意が必要
里帰り先まで飛行機で移動する人もいると思いますが、妊婦さんが飛行機に乗ることができるのは、一般的には臨月に入る前までです。
やむを得ない事情で臨月を過ぎて飛行機に乗る場合、ANA、JAL共に、出産予定日28日前から8日前だと診断書が必要となり、7日以内になると診断書以外に、医師の同伴が必要となります。
赤ちゃんは生後8日以降でないと飛行機に乗ることができません。それ以降は乗ることはできるのですが、上空では気圧や酸素濃度の変化から、健康な大人でも不快症状が現れます。
何か身体トラブルがあってはいけないので、赤ちゃんが初めて飛行機に乗るのは、1ヶ月健診が終わって健康であるとのお墨つきをもらってからの方が安心です。
赤ちゃんはママやパパの膝の上に乗せるのであれば料金はかかりませんが、首が座ってからチャイルドシートに乗せる方が安全と言えます。
その場合、赤ちゃん用の座席を確保する必要があるので、料金は支払わなければなりません。
お産にリスクがあると考えられる場合
妊娠経過中に、妊娠高血圧症候群と診断されている場合や、過去のお産が早産や帝王切開であった場合など、お産にリスクのある可能性が高い妊婦さんは、少し早めの妊娠8ヶ月頃には、里帰りした方が安心です。
妊娠経過によっては、総合病院でないと受け入れてもらえない症状の場合もあるので、里帰りを選択するなら、早めに行動することをおすすめします。
里帰り出産を経験された方へのアンケート
里帰り出産をされた20人の方に下記のアンケートに答えて頂きました。
やはり妊娠9ヶ月くらいからというのが一番多く、出産して病院を退院してからという方も3名いらっしゃいました。
出産前よりも、出産後の方が色々と大変なので、夫よりも親にサポートをしてもらうという方が気も楽なのかもしれませんね。
出産後1ヶ月というのが1番多く、1ヶ月検診が終わるまでは実家で過ごすという方が多かったです。
もっとも長く実家で過ごされた方は、産後3ヶ月というのが2名いらっしゃいました。
里帰り出産で帰る前に準備しておくことは?
出産をする医療機関を探す
今まで定期検診で通っていた病院から、里帰りする実家の近くの病院へ転院する人が多いと思います。
しかし、最近では妊娠初期から分娩予約をしていないと出産の受け入れをしてくれなかったり、里帰り出産を受け入れてくれなかったりする病院も多いです。
里帰り出産をすると決めたら、まずは実家の近くで病院を探し、電話などでお産の受け入れをしてくれるかどうか確認しましょう。
妊婦健診で通院している病院にも、里帰り出産する旨を伝えて、紹介状を書いてもらうのを忘れないようにしてください。
- 母子手帳
- 健康保険証
- 紹介状
- 印鑑
里帰りするのに必要な持ち物リスト
里帰り中に、ママや赤ちゃんに必要な物は、里帰り先で購入してもいいのですが、出産後はしばらく外出できないことを踏まえ、事前に自分で選んでおくといいですね。
ママと赤ちゃんの持ち物をそれぞれチェックしていきましょう。
- 入院セット
- 下着(産褥用、補正下着も含む)
- 授乳用ウェアや前開きのルームウェア
- 産後の外出用の服(季節を考慮する)
- 洗面用具や化粧品
- カメラ(赤ちゃんを撮影するため)
- スマホなど携帯の充電器
- 赤ちゃんの肌着、ベビー服
- ベビー布団
- チャイルドシート(退院時に車で移動する場合)
- ベビーバス
- 調乳グッズ
- 衛生用品(オムツ、おしりふき、赤ちゃん用爪切りなど)
ベビー用品の購入は、実家のお母さんではなかなか分かりづらいので、前もって準備しておきたいですね。
里帰り先まで車で移動できず、大きな荷物が運べない場合は、ベビーバスやチャイルドシートなどはレンタルで利用してもいいでしょう。
パパのために準備しておきたいこと
ゴミの分別ルールや、自治会費や光熱費の支払い方法、炊飯器や洗濯機など電化製品の使い方、通帳や印鑑などの貴重品の置き場所など、パパが一人で生活していく上で必要な家事のマニュアルを作っておくと、パパも安心です。
トイレットペーパー、洗剤、ティッシュなどの生活必需品や、インスタントやレトルト食品の買いだめをしておいてあげると、パパも助かると思います。
男の人は普段あまり買い物をしないので、スーパーやドラッグストアに行っても、何がどこにあるのか見つけられず、時間がかかってしまうのです。
さらに、万が一パパが体調を崩してしまった時のために、薬やOS-1などの経口補水液、栄養ドリンクなども準備しておくと、万全ですね。
ママが里帰り中に、寒い季節になって「コートどこ?」「マフラーや手袋は?」ということにならないように、里帰り期間の季節を考えて、衣替えをしておくといいです。
クリーニングに出していた衣類の受け取りも、あらかじめしておいてあげましょう。
赤ちゃんが自宅に戻った時のための準備
里帰りする前に、赤ちゃんを迎えるための準備をしておくと、自宅に戻ってきた時に慌てません。
ベビーベッドなどを置いて、赤ちゃんが過ごすお部屋の環境を整えることや、出産後はなかなか買い物に行けないので、ベビー服やオムツなども買っておくといいでしょう。
ベビー服は、自宅に戻ってきてからの季節やサイズを考慮して準備しましょう。オムツも、新生児用ではなくSサイズくらいにしておくといいです。
知っておくべき里帰り中の手続き
妊娠中や、赤ちゃんが生まれてからさまざまな手続きが必要となってきます。
特に、赤ちゃんが生まれてから1ヶ月以内にしないといけない手続きもあるし、手続きに必要な物もあることから、事前に知っておくと安心です。
里帰り先の病院で、何度か妊婦健診に通うことになるのですが、妊婦健診費用の助成は自治体の管轄であり、他の市町村の妊婦健診無料チケットは使えないのです。
とりあえず自費で支払って、後からお住まいの市町村に請求する形が一般的ですが、その際に使用しなかった無料チケットや領収書など、必要になってくる物もあります。
自治体によって異なることもあるため、事前に確認しておくといいでしょう。
関連記事:妊婦健診の補助券に関する疑問まとめ(余ったら?いつから?など)
出生届は、赤ちゃんを戸籍に登録するための手続きで、生後14日以内に提出しなければなりません。提出先は、住民票のある市町村役場の他、本籍地、里帰り先の市町村役場でも大丈夫です。
赤ちゃんの父母が届け出することが望ましいですが、代理人でもOKです。手続きには、病院で記入してもらった出生証明書と、母子手帳、印鑑が必要です。
子供が中学校を卒業するまで養育者に支給されるお金のことを、児童手当と言います。
児童手当の申請手続きは、生後15日以内にしなければならない上、申請が遅れてしまうと、遅れた期間分の児童手当が支給されなくなってしまうので、早めに手続きすることが望ましいです。
手続きは住民票のある地域の市町村役場でないとできないので、パパに頼んでおきましょう。
里帰りする前に、手続きに必要な印鑑や健康保険証、所得証明書、児童手当の振込先の口座番号が分かるものを用意しておくといいです。
赤ちゃんの健康保険への加入は、生後1ヶ月以内にパパやママの勤務先の窓口へ申請します。国民健康保険の場合は、申請先はお住まいの市町村役場となるので注意してください。
パパとママどちらか収入の多い方を扶養者として、扶養者が届け出をすることになります。どちらが扶養者になるか、出産前に話し合っておくと準備がしやすいですね。
子供の怪我や病気にかかる医療費を助成してくれる制度もあります。助成してもらえる金額や年齢制限などは、自治体によって変わってきます。
生後間もない頃から病気になることもあるので、万が一に備えて早めに手続きしておくようにしましょう。
出産にかかる費用を国が負担してくれるお金のことを、出産育児一時金と言い、現在では子供1人あたり42万円支給してもらえます。
病院が請求する場合と個人で請求する場合とがあり、受け取り方も、病院に支払ってもらうことができるので、出産費用を事前に準備しておく必要はありません。
ただ、請求や受け取り方は病院によって変わってくるし、個人で請求する場合には、里帰り前に書類を揃えておかないといけないので、事前に病院に確認しておくといいでしょう。
まとめ
里帰り出産は、必ずしもメリットだけでなく、デメリットもあることを忘れてはいけません。
里帰り出産をするかどうかは、デメリットを理解した上で、自分の生活環境やライフスタイルを考慮し、夫婦でよく話し合って決めるといいでしょう。
出産は人生の一大イベントなので、夫婦にとって、新しい家族である赤ちゃんにとって一番良い方法を選択できるようにしたいですね。
また、里帰り出産の心構えや準備物など、事前に知っておくことで、安心して赤ちゃんを迎えられるような環境を整えていきましょう。