不妊治療にあたって避けては通れない精液検査。
男性のほうが自分の生殖機能に対して敏感なことが多く、プライドが邪魔をしてなかなか検査に踏み切れないケースが多くあります。
しかし、不妊の原因は女性側と同じ割合で男性側にもあります。精子の異常を見逃していては、女性側がどれだけ頑張っても妊娠には至りません。
男性不妊が以前よりも広く知られるようになり、男性側の意識が変化してはいるものの、まだまだ認識不足の男性が多いのも現実。
妊娠を望むカップルは、精液検査の重要性や、検査方法の多様性を知って、ストレスの少ない方法で早目に検査を実施しましょう。
精液検査とは?
不妊治療をしている夫婦が必ず検査をする項目の一つが、男性側の精液検査です。
不妊の原因は男女半々の割合であることから、男性側の精液に問題がないかを確認する検査です。
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 男性不妊専門病院
- 不妊治療専門病院
主に上記の4つの看板を掲げている医療機関で実施されています。
しかし、病院の規模によっては実施していない場合もありますので、事前にHPか電話で確認をしておきましょう。
待合室などに女性が多い産婦人科での検査に抵抗がある男性は、泌尿器科での検査がおすすめです。「妊娠に関わることだから」と産婦人科に囚われる必要はありません。
精液検査キット
病院での検査に抵抗がある人、病院へ行く時間を取ることができない人は、簡易的ではありますが自宅で検査できるキットも販売しています
自宅で精液を採取して、指定の専門機関へポストから投函し、検査結果をメールで受信します。結果までに2~3日、費用も5000円程度の商品が多く、お手軽です。
治療までは対応していないので、検査結果によっては速やかに医療機関を受診してください。
参照元:ベビーライフ研究所HP
セルフチェックするタイプは、付属の顕微鏡やスマホで精子の有無や動きを自分で確認します。完全にプライバシーは守られますが、検査の仕方に不備が生じる可能性も高くなります。
いずれにしても病院ほどの精度はありませんので、異常を感じた際には必ず医療機関を受診してください。
顕微鏡付きのキットは価格が10,000円前後の商品が多く、病院での検査よりも高くなります。
参照元:テンガHP
精液検査のやり方や手順は?
ここからは、キットでの検査ではなく、医療機関での検査の内容について詳しく説明していきます。
精液をたくさん出すために禁欲を長くする、など信憑性の低い情報を信じるのではなく、医療機関の指示に従うようにしましょう。
病院で精液を採取
精液検査をする際は、自分で射精をして精液を提出しなければいけません。精液は時間の経過と共に劣化していきますので、病院で採取するのが一番良いと考えられています。
- 4~5日間の禁欲の後来院
- 手を洗う
- 病院内の専用の個室で採取(アダルトDVDなどの準備がされている)
- 提出
- 30分程で結果が出る
基本的には上記の流れなのですが、禁欲の日数は医療機関によって異なるので、受診した医療機関の指示に従ってください。
ごく稀に、専用の個室ではなく、トイレで採取を行っている病院もあります。
結果については混雑の状況なので時間が大幅に変わります。結果は後日と指定している病院もありますので、事前に確認をしておきましょう。
自宅で採取して持ち込む
病院に行く時間がない場合は、自宅で採取して持ち込みます。
- 4~5日間の禁欲
- 手を洗う
- 来院指定された時間から逆算して自宅で採取
- 採取した容器をタオルで包む
- 採取から2時間以内に医療機関に持ち込む
- 30分程で結果が出る
禁欲や結果までの時間は、病院で採精したときと同じく各医療機関によって異なります。また、採取から持ち込みまでの時間が早いところだと1時間と指定される場合もあります。
事前に、病院の指定している条件を満たせるかどうかを確認しておきましょう。
精液検査にかかる費用は?
医療機関での精液検査の費用は保険適用内か適用外かで大きく異なります。
保険適用内の検査
最も一般的な検査で、顕微鏡で精液の状態を確認する基本的な検査です。医療機関によって若干費用は異なりますが、3割負担で1,000円以下が平均的な金額です。
精液検査自体の費用は安いですが、初診料や再診料が追加されるので、窓口での支払金額はもう少し高くなります。
また、医療機関によっては基本的な検査も保険適用外となるケースがあるので、事前に確認が必要です。
保険適用外の検査
高度な顕微鏡で検査をしたり、より細かく精子の状態を確認したりする際は、保険が適用されません。
どこまで検査するかは各医療機関の方針や、精子の状態によって異なるので、こちらも事前に確認をしておく必要があります。
保険適用外の検査は5,000円程度のものから、50,000円を超える検査まで様々です。
あまりにも検査費用が高いようであれば、転院も視野に入れて病院選びをした方が良いかも知れません。
精液検査の結果からわかることは?
精液検査から分かることはたくさんありますが、不妊の原因が男性側にあるのかどうかを判断するのが最大の目的です。
精液の量や精子の運動率は、人によって異なりますが、同じ人であっても身体の状態や精神状態によって結果が大きく異なるのが精液検査です。
最低でも短期間で2回は検査をしないと、正確な精子の状態は分からないと言われています。
WHOで定められている精液の正常基準値
1回の射精で得られる精子の正常値の基準は、WHOにより下記のように規定されています。
- 精液量:1.5ml以上
- 総精子数:3900万以上
- 精子濃度:1500万/ml以上
- 総運動率:40%以上
- 前進運動率:32%
- 生存率:58%以上
- 正常形態率:4%以上
基準値を下回れば即不妊というわけではありません。精子の数が少なくても、元気に動きまわる精子の割合が多ければ妊娠の可能性は充分にあります。
一つの目安として、現在の精子の状態を把握する目的で行います。
総精子数が3900万未満の場合、精子の数が少ない乏精子症と診断されます。
乏精子症単体で不妊になるケースは少ないですが、運動率も低い場合は卵子と授精するのが難しくなります。
精巣機能を改善する薬の服用を経て、体外受精へステップアップしていくことになります。
総精子数がゼロ、つまり精液内に精子が存在しない場合、無精子症と診断されます。
無精子症の場合は泌尿器科などの専門病院で原因を特定するケースが多いです。
性病などが原因で精管が詰まっている場合、手術で改善される場合もあります。
先天的な原因がある場合は、精巣から直接精子を採取し、顕微授精へとステップアップします。
総運動率が40%未満の場合、精子の動きが悪い精子無力症と診断されます。
子宮内を泳ぎ切り、卵子の中に潜り込むためには、精子の数よりもむしろ運動率の方が重要となります。
40%未満でも、元気に動きわまっている精子が見つかれば希望は持てますが、全ての精子が動かない場合は自力での妊娠は難しくなります。
乏精子症と同じく、薬の服用を経て体外受精へとステップアップします。
正常形態率が4%未満の場合、奇形の精子が多い奇形精子症と診断されます。
精子の頭部や尾部に奇形があると授精しにくく、特に頭部の奇形はDNAの異常がほとんどなので、受精したとしても育たないケースが多くなります。
正常な精子を探し出して顕微授精するケースがほとんどですが、正常な形態の精子がゼロの場合は非配偶者人工授精しか手段がないと言えます。
その他分かること
主に精子の数や運動率、形を確認する精液検査ですが、下記のこともチェックされます。
- Ph:弱アルカリ性が正常(Ph7.2~7.8)
- 白血球数:100万/1ml以下
Phや白血球数が基準値と異なる場合、性病にかかっている可能性が高くなります。原因を調べた後、適切な治療を指示されます。
まとめ
男性は自分の精子に問題があると非常に強いショックを受けるケースが多いですが、例え無精子症でも適切な治療を受ければ妊娠可能です。
真実から目を背けて、ゴールの見えないタイミング法や人工授精を続けるよりは、原因を特定して対処する方が金銭的にも精神的にも負担が少ないと言えます。
また、男性側に原因があった際は、女性のサポートが非常に重要となります。相手の性格に合わせた接し方で、傷ついたプライドやショックを和らげてあげる気遣いが必要です。
肉体的にも精神的にも支え合って、赤ちゃんを授かる為に同じ方向を向いてあげることが大切です。
精子の寿命や質を高める為の方法について知りたい方は、下記のページを参考にしてみてください。