一昔前は、不妊と言えば「女性の問題」と考えられていましたが、現代では不妊の原因は男女半々であることが分かってきました。
女性側と同じだけ、男性側にも原因があるのです。
精子の問題、勃起の問題など、男性側の原因も様々ですが、今回は精子の寿命や質にスポットを当てて見ていきたいと思います。
男性は女性に比べると、妊娠や自分の生殖機能に対する知識や意識が低い傾向があります。
「ああしろ!こうしろ!」と命令をするよりは、女性側が精子についての知識を持ち、パートナーを良い方向へ導いてあげる方が妊娠への近道になるかも知れません。
特に妊活中の女性は、卵子の知識と同じぐらい、精子の知識も身につけましょう。
精子の寿命ってどのくらいなの?
妊活中の女性はタイミングを取る目安として、パートナーの精子の寿命を知っておく必要があります。個人差はありますが、平均的な寿命は下記の通り。
精子の寿命
- 精巣内:3~4日
- 膣内:4~8時間
- 子宮内:2~3日
- 洗浄濃縮後:2日
精子は毎日作られますが、精巣内で4日以上経過すると、夢精したり、分解されてタンパク質として体内に吸収されたりします。
また、精子は酸性に弱いため、女性の膣内(酸性)での寿命は短く、無事に子宮まで辿り着くと2~3日生きています。
人工授精時に洗浄した精子は寿命が数時間に減るとの情報も多いですが、実際には多少短くなるものの、差ほど変わらないと唱える医師が多いです。
いずれにしても、人工授精の際は顕微鏡などで精子の状況を確かめた後に実施するので、心配は無用です。
精子の寿命と、実際に卵子と出会って受精できる能力を持っている期間は少し異なります。
精子は射精直後には受精能力はなく、5~6時間を経てから受精可能な状態となります。その後、約1日半(36時間)が平均的な受精可能期間と言われています。
「精子は空気に触れると死滅する」という情報を聞いたことがあるかと思います。
陰茎がしっかりと膣内に入っていない状態で射精をした場合、精子が死んだのではないかと不安になるカップルもいるようです。
しかし、精子は直接空気に触れると死滅しますが、精液に包まれているので直接空気に触れることはまずありません。
精液が完全に乾燥すると精子も死んでしまいますが、性交中の精子(精液に包まれている)が空気に触れても問題はありません。
卵子の寿命
卵子の寿命は精子に比べるとかなり短く、卵巣から排卵されてから1日程度です。
精子と同じく、受精可能な期間は更に短くなり、排卵後6~8時間程しかないと言われています。
精子の寿命は年齢や体調と関係あるの?
卵子は加齢や生活習慣の影響を大いに受けて質が落ちることはよく知られていますが、毎日作られる精子はどうなのでしょうか?
精子の寿命と年齢の関係
男性は35歳を過ぎるとゆっくりと精子の質が下がることが統計的に分かっています。
しかし質というのは、精子の運動率や数のことを指していることが多く、寿命については明確な研究結果が出ていないようです。
年齢を重ねると精子の数が減り、動きが鈍くなるとはあるが、射精された後の精子の寿命は大きく変動しないと考えられています。
精子の寿命と体調の関係
精子の寿命という点では、年齢と同じく、体調もあまり関係ないと考えられています。
数や運動率などの質の面も、加齢ほど大きな影響を与えることはなく、どちらと言うと禁欲期間に左右されると考える医師が多いようです。
とは言っても、体調や精神の不調は性欲に関係することがありますので、男性だから体調に気を配らなくても大丈夫という捉え方はNGです。
精子の状態が気になる方は、精液検査で調べてみるのもひとつの方法です。
→ 精液・精子検査のやり方や手順は?費用は?結果からわかることは?
精子は禁欲した方が妊娠しやすいの?
精子の状態と禁欲には非常に深い関係があります。精液検査をする場合は、2~5日の禁欲を指定される場合が多いですが、妊娠をするための最適な禁欲期間は少し異なります。
禁欲して精巣にたくさんの精子を溜めた方が妊娠しやすいという認識を持っている方は多いかと思いますが、実際には禁欲のし過ぎは非常に危険です。
精子の状態が最も良いのは禁欲1日
精子は禁欲するほど質が下がると考えられ、毎日射精した方が良いと提唱する産婦人科医も存在します。
特に元々精子の数が少ない男性の場合、精子の数が最も多く、運動率が最も高いのは、前日に射精をした状態だそうです。
精子の状態が正常の男性の場合でも、1~2日の禁欲が最も妊娠しやすい精子の状態と考えられています。
禁欲10日で妊娠率はほぼゼロ
男性が10日間禁欲した後の性交での妊娠率は、ほぼゼロになるとの研究結果も出ています。精子の質は禁欲4日目あたりから急激に劣化し、数も運動率も低下します。
10日以上禁欲すると絶対に妊娠しないというわけではありませんが、統計的には妊娠率はかなり下がると考えて間違いないです。
禁欲の奨励期間は医師によって考えが異なりますが、一様に10日以上の禁欲はNGとしています。
妊娠希望の場合は4日に1度は射精を
妊娠を希望しているカップルの場合は、マスターベーションでも構わないので、男性側に最低4日に1度は射精をしてもらった方が精子の質が上がります。
理想は2日に1度とされていますが、義務化してストレスを溜めるよりは、4日以上の禁欲をしないように心がける方が良いと言えます。
精子の質を高める方法は?
数が多く、運動率が高く、正常な寿命を持つ精子を生み出すために心がけたい生活習慣をご紹介します。
現代社会の中で全てを実践するのは難しいかも知れませんが、一つでも取り入れられることがあれば実践してみてください。
身体の酸化を防ぐ食生活
精子は酸性に弱く、活性酸素を溜めて身体が酸性に傾くと質が下がります。身体の酸化を防ぐ下記の食品を毎日の食事に積極的に取り入れるようにしましょう。
- アーモンド(その他ナッツ類)
- ほうれん草
- アボガド
- かぼちゃ
- 山芋
- うなぎ
- ゴマ油
- コーン油
身体の酸化を防ぐ食品と共に、精子や精液自体に働きかける栄養素を摂取することも有効です。
- 亜鉛:牡蠣、ビーフジャーキー、卵黄、大豆製品、チーズなど
- アルギニン:鶏肉、豚肉、海老、マグロ、ごま、ナッツ類など
- マカ:サプリメントで補給
マカは特定の植物の成分なので、他の食品に栄養素として含まれていることはありません。マカに関してはサプリメントでの補充がおすすめです。
股間に熱を溜めない
精子は非常に熱に弱いので、睾丸の温度を上げる行動を控えるようにしましょう。
- 高温での長風呂
- 長時間のサウナ
- 膝の上にパソコンを置いて作業
- 風邪などで高熱を出さないよう注意
長風呂やサウナが息抜きになっている男性もいるかと思いますが、週に2回15分のサウナでも精子の質が低下するとの結果もあるようです。
完全にNGとしないまでも、妊活中は出来る限り控えてもらうようにしましょう。
禁欲は4日まで
先にも述べましたが、禁欲は精子の大敵です。妊活中は4日に1度は何らかの形で射精をするようにしましょう。
禁煙
男女共に言えることですが、タバコは生殖機能に多大な悪影響を与えます。
血流を阻害して、生殖器への栄養や酸素の供給量を低下させるだけでなく、DNAに損傷を与えることも分かっています。
ニコチン依存症にかかっていると禁煙は簡単ではありませんが、質の良い精子を生み出すためには、禁煙が一番有効かも知れません。
トランクスの着用
股間を締め付けると精子の製造に悪影響を与えるとの意見もあります。
医学的に検証されているわけではありませんが、股間の湿度や温度も下げてくれる風通しの良いトランクスは、確かに利点がありそうです。
トランクスを履いても、上からタイトなジーンズなどで締め付けては意味がないので、なるべくゆったりとしたボトムを選ぶようにしましょう。
妊娠しやすいタイミング・スケジュールは?
精子の寿命や受精可能期間が分かると、妊娠するための最適なタイミングが分かります。
排卵2日前が最も妊娠する確率が高い
精子と卵子の寿命を比べると卵子の方が短いので、精子が卵管に待機している状態で排卵されるのが最も妊娠しやすいタイミングと言えます。
精子が射精されてから受精可能になるまでに6時間かかり、その後36時間が最も受精の可能性が上がるので、排卵の42時間前が性交のタイミングとしてはベストです。
つまり、排卵予定日の2日前ということになります。
排卵付近はできる限りたくさんのタイミングを取る
排卵2日前が最も妊娠しやすいタイミングとは言っても、女性の排卵はちょっとしたストレスや身体の状態でずれることがあります。
排卵2日前を特定するのは難しいので、排卵予定日付近にできる限り多くのタイミングを取ると、それだけ可能性も上がります。
精子や卵子が健康であれば、排卵予定日6日前から36時間おきにタイミングを取れば妊娠をする、とも言われています。
ここまでの頻度は無理でも、排卵予定日2日前を含めた、前後2日間は押さえられると理想的です。
タイミング法については、下記のページで詳しくご紹介しています。
→ タイミング法とは?どういった方法で行うの?間隔や時間帯は?
まとめ
精子は卵子ほど加齢や体調の影響を受けませんが、男性は女性以上に生活習慣を改善する意識が低いです。
そういった意味で、精子の質が良くない男性が質を向上させるのは難しいとも言えるかも知れません。
毎日の食事や生活習慣を女性側が上手に管理し、パートナーの精子の質を上げるような生活を送らせてあげましょう。
また、生活習慣を改善させても妊娠に至らない場合は、男性の精液検査も必須です。
無精子症の場合などは、いくら家庭で努力をしても解決できませんので、必ずパートナーにも検査を受けてもらいましょう。