母乳育児の場合、「初乳は大切だよ」と耳にすることがあります。しかし子供を産んだ経験がないと、「母乳といったい何が違うの?」と詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、初乳の大切さを知るために、初乳の基礎知識から、母乳との違い、もし初乳が出なかった時の対処法など、その他気になる疑問についてご紹介します。
初乳とは?いつまで出るの?
初乳は「黄金の液体」と呼ばれるほどのすごいパワーを持った乳汁です。
赤ちゃんにとってお母さんからの大切な贈り物である初乳が、どのようなものか、特徴や働き、初乳を飲むメリットやいつまで出るのかをまとめました。
初乳の特徴
初乳とは産後2~3日から出てくる、文字通り「初めてのお乳」のことを指します。この初乳は、お母さんが赤ちゃんを産んでから、最初の期間だけでる特別な母乳です。
少し黄色がかかった、バターのような濃厚なクリーム色をしています。触ってみると、少しとろみや粘りがあるのが特徴です。
初乳には、新生児を病気から守る大切な働きを担ってくれます。それまでお腹の中で守られてきた赤ちゃんは、免疫機能が未発達のまま産まれてくるからです。
しかし、免疫物質をたくさん含んでいる初乳を飲むことで、腸の粘膜を保護し、病気から守ってくれる働きがあります。
初乳の出る期間は、産後約1週間と言われています。これは個人差があり、5日くらいで出なくなる人もいれば、長い人で10日ほど出る人もいます。
初乳を飲むメリット
免疫成分は初乳によって母から子へと授けられます。初乳を飲むか飲まないかで、身体の強さに影響を与えることも。
また、胎便が早く出るように促し、結果胎便が排出されることで黄疸を軽くするという働きもあります。
WHO(世界保健機関)が「完全な栄養源」として新生児に初乳を与えることを推奨しているほどです。
初乳と母乳(成乳)の違いは?
同じママから出てくる母乳でも、初乳と成乳では栄養分の違いから、見た目の違いまで様々です。こちらではどのような違いがあるのかをまとめました。
初乳の成分
この初乳は少量でも栄養価が高いのが特徴です。また、赤ちゃんを守るための免疫成分が含まれていて、近年その驚きのパワーに注目が集まっています。
免疫にかかわるタンパク質で、初乳には成乳より多く含まれています。この免疫グロブリンAが体内に侵入してくるウイルスや細菌を防いだり、攻撃したりして赤ちゃんの身体を守っています。
外から入ってくるウイルスや細菌から身体を守ってくれる防御機能を備えたタンパク質です。
特に初乳に多く含まれていて、免疫機能だけではなく、鉄の吸収を良くして貧血を予防します。またビフィズス菌を増やして腸内環境を整えるなど、赤ちゃんの健康維持に必要な働きをしてくれます。
初乳にはビタミンA、D、Eやβ-カロテン、コレステロールや乳糖などが含まれて非常に栄養価が高いです。初乳が黄色っぽいのはβ-カロテンが豊富に含まれていることによります。
他にもビフィズス菌の増殖を増やしてくれるオリゴ糖も多く含まれています。
母乳(成乳)の成分
成乳は、初乳に比べて赤ちゃんの成長を助ける、炭水化物や糖分などのエネルギーになる栄養素や、体を作るたんぱく質を多く含んでいます。
その他にも赤ちゃんの身体の機能を維持するミネラルや、オレイン酸やリノール酸など、細胞を作る働きに必要な脂質が含まれています。そのため、母乳は初乳よりもカロリーが高いです。
成乳は白っぽくてさらさらしています。免疫成分は初乳に比べて少しずつ少なくなっていきますが、赤ちゃんにとって消化・吸収しやすい栄養の乳汁です。
飲み始めは消化しやすいように糖分やタンパク質、ミネラルの多い乳汁が出て、飲んでいくにつれて脂肪分の多い乳汁へと変わっていきます。
初乳が出ない時はどうすればいいの?
妊娠期間中から母乳が出るようにママの体では様々な準備が行われています。それでも体質や遺伝などで母乳が出にくいことも。
こちらでは初乳が出にくい原因や、初乳を出すための対処法をご紹介します。出が悪くても少しでも初乳が出るように、できる範囲でトライしてみましょう。
初乳が出る仕組み
初乳が出るようになるには、赤ちゃんがママのおっぱいを吸う刺激を繰り返し行われることが重要です。これを吸啜(きゅうてつ)刺激といいます。
この刺激によって母乳が作られるのを促すプロラクチンというホルモンが増加します。しかし、一度増えたプロラクチンは2時間後には量が減少していきます。
そこでまた赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらいプロラクチンの量を増やすことで、母乳が出るように促します。
初乳が出ない時の対処法
母乳が出るようになるのはどんなママも一苦労です。それでも初乳がなかなか出ないこともあります。
中には授乳していても赤ちゃんが寝てくれずに泣いてばかりだと、初乳の量が足りているのか不安や焦りが出てくることも。
こちらでは初乳が出ない時の対処法をまとめました。無理せず、できるものからチャレンジしてみてください。
プロラクチンの量を保つためにも、2時間おきに赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうようにしましょう。また、母乳は消化がいいので、赤ちゃんが泣くようであれば、1時間おきにでも授乳をするようにしましょう。
こうした産後直後から、赤ちゃんに授乳をたくさんすることで、4日以降から急激に母乳の量も増えていきます。
初乳の通り道である乳腺が開いていなければ初乳は出てきません。乳頭先を指でつまんで乳腺を広げてあげることで、つまりも解消できます。
また、繰り返し行うことで乳頭刺激にもなり、初乳が出るように促し、赤ちゃんが口に加えやすい形になります。
脂質の多い洋食の場合、脂分が乳腺に詰まって初乳が出ないことも。
乳腺炎のリスクもあるので、魚や野菜、豆類・海藻類などを使った和食を心がけるようにしましょう。そもそも栄養不足では母乳が作られにくくなります。
母乳は血液からできています。水分は1日2リットルを目安に飲むようにしましょう。
体内の血流を良くして母乳の出を良くしてくれるだけではなく、ママの体内の老廃物を排出してくれる働きもあります。
母乳育児ではどのくらい赤ちゃんが飲んでいるかわかりませんし、頻繁に泣いていると母乳が足りているのか不安になることもあります。
母乳が出ないからと言って不安や焦りが出てくると、ホルモンバランスが乱れて母乳が出ないといった悪循環に陥りやすくなります。
母乳を促すホルモンは夜間に活発になると言われています。そのためどうしても夜間授乳が必要なので睡眠不足になることも。
睡眠不足で疲れていると、ストレスを感じやすくなります。夜中の授乳で十分睡眠がとれなくても、お昼寝などの細切れ睡眠でも十分疲労回復できます。
扁平(へんぺい)乳頭や陥没(かんぼつ)乳頭といった、乳頭先が変形していると赤ちゃんがうまく口に加えることができないので、母乳が出ないことがあります。
そんな時は、市販の乳頭吸引器を使って乳頭を吸い出す方法もあります。
出典:amazon.co.jp
初乳に関するQ&A
こちらでは初乳に関する疑問をまとめました。
人によって初乳の出る量は違います。産まれたての赤ちゃんは、おっぱいを吸う力も弱いので、一度にたくさんの初乳を飲むことができません。それでも初乳は少量でも高い免疫効果を得られます。
乳糖やオリゴ糖である糖分が固形分の中で最も多く含まれています。
赤ちゃんのエネルギー源になるだけではなく、カルシウムやマグネシウムといったミネラルの吸収を促し、ビフィズス菌を増やして、腸内環境を整えてくれる働きをしてくれます。
産後すぐに出る母乳は初乳です。ほとんどが黄色からクリーム色で粘質性のものです。まれに出産前になると乳腺から透明の乳汁が出てくることがあります。
初乳をあげられなくても、元気に育つ赤ちゃんもいます。初乳を飲ませられなかったとしても、赤ちゃんに愛情を向けて、楽しく前向きに育児に取り組んでいきましょう。
初乳の中には、血液の成分が少し混じっています。まれに産後すぐに血が混じっていたとしても、しばらくすると出なくなります。傷などがないのに血液が出る場合は、医師に相談しましょう。
赤ちゃんが吸いすぎて、乳首が切れて血が出ることもあります。痛みで吸ってもらうのが苦痛になると、母乳の出が悪くなることも。早めに医師に相談しましょう。
産院によって対応が違うので、授乳が開始できる時期や、初乳を飲ませたいという意思をあらかじめ伝えておくといいでしょう。
初乳が出すぎて赤ちゃんが飲みきれない場合は、冷凍して保存するといいです。
ただし、赤ちゃんにはできるだけ新鮮な初乳を与えるようにしましょう。冷凍したものは早めに使い切るようにし、外出時や何かあった時のストックに。
初乳は少量でも十分に効果を発揮します。乳頭ににじみ出た初乳をなめるだけでも効果があります。
上の子がまだ授乳中であったとしても、ホルモンの働きで産後は初乳が出ます。授乳する時は、下の子優先で授乳をしてから上の子の授乳をしましょう。
乳腺が開いて、赤ちゃんへ授乳をする準備ができている証拠です。乳腺が詰まらないように出産まで乳頭をしっかりケアしましょう。
妊娠中に初乳が出ていたとしても、産後の初乳量に影響が出るわけではありません。
初乳は粘性質で乾くと、乳頭先にかさぶたのようになり、乳腺をふさいでしまうことも。乳腺炎を引き起こしやすくなるので注意しましょう。
お風呂に入った時などにかさぶたをふやかして、きれいに乳頭先をケアしましょう。
まとめ
初乳は生まれたばかりの赤ちゃんの身体を強くしてくれる、大切な栄養素がたくさん詰まったママからの贈り物です。
しかし初乳が出ないからと言って焦りは禁物です。初めから誰でも初乳が出るわけではないので、しっかり赤ちゃんに愛情を持って接して、いろんな方法をチャレンジしてみましょう。
あまり気負わず、リラックスする気持ちを持つようにしましょうね。