トラウマの語源とその意味|虎や馬とは関係なし?

トラウマの語源とその意味|虎や馬とは関係なし? 雑学・豆知識

「過去の体験による心的傷害」としてよく用いられる「トラウマ」という言葉は、日常会話で頻繁に耳にします。

しかし、この言葉の実際の意味や、どのような語源から来ているのかについては、あまり知られていません。

一見、「トラウマ」という言葉は「トラ」と「ウマ」に分けることができるため、これら二つの動物に何らかのつながりがあるかのように思えます。

日本語に「馬鹿」という動物の名を組み合わせた言葉が存在することからも、これらの動物が何らかの意味を持っていると考えられがちです。

虎は通常、恐怖の象徴として描かれることが多く、「かつて虎に襲われたことが原因で動物全体を怖がるようになった」というストーリーも想像できます。

しかし、実際にトラウマという言葉の語源や真の意味はどうなのでしょうか。

この記事では、トラウマの語源とその意味を詳しく掘り下げていきたいと思います。

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トラウマという言葉の起源と意味の変遷

「トラウマ」という言葉は、元々ギリシャ語のτραύμαに端を発しています

この言葉は当初「傷」という意味で用いられ、その発音は現代の「トラウマ」と同じです。

ドイツ語でも「trauma」として採用され、そこでは同様に「傷」という意味が保持されました。

1917年、精神科医ジークムント・フロイトによって、物理的な傷が長期的な影響を及ぼすように、精神的な傷も心の障害を引き起こすという理論が提唱されました。

この理論に基づき、「精神的な外傷」を意味する「trauma」という用語が普及し、現代のトラウマの概念が形成されました。

トラウマの意味とその日本語への転用

日本では、この新しい意味合いが受け入れられ、「心の傷」としてのトラウマという言葉が一般的に用いられるようになりました。

英語におけるトラウマの用法

英語においても、「trauma」はドイツ語由来であり、物理的、精神的な傷どちらにも使用されるため、「physical trauma」や「mental trauma」といった形で区別されることがあります。

このようにトラウマという言葉は、日本語、ドイツ語、英語の間で微妙な意味の違いを持ちながら使用されており、その言語間の関係性は非常に興味深いものがあります。

トラウマの意味の変遷と日本語とドイツ語の関係

現代の日本の大学において、中国語、スペイン語、フランス語に次ぐ人気を誇るドイツ語は、かつて戦前の日本で「英語の次に重要な外国語」と位置づけられていました。

ドイツ語の日本における歴史

その時代の旧制高校では、最上位クラスが英語を、それに次いでドイツ語を第一外国語として学んでいました。

この選択には、第二次世界大戦中の日本とドイツとの同盟関係や、当時の国際政治が影響していたと考えられます。

日本でのドイツ医学用語の定着

特に、日本が西洋医学を取り入れる過程でドイツから多くの医師を招いた歴史があり、その結果としてドイツ医学用語が日本語に多数取り入れられました。

ドイツ語由来の日本の医学用語には、アスピリン、アドレナリン、アレルギー、オブラート、カプセル、カルテ、ギプス、コラーゲン、チアノーゼ、ツベルクリン、ノイローゼ、ヒステリー、ホルモン、ワクチンなどが挙げられます。

医学用語には外来語が多用される傾向があり、その多くは日本語に相当する言葉が存在しないため、そのまま使用されています。

特に、ドイツ語の発音はローマ字との類似性が高く、日本語に取り入れやすい背景があります。

この流れに乗り、精神医学における「trauma」も日本語へそのまま転用されたと思われます。

物理的な傷害には日本語で「ケガ」という言葉がありますが、精神的な傷に当たる言葉はなかったため、「トラウマ」という用語が採用されたと考えられます。

トラウマの語源にまつわる誤解

「トラウマ」という語の起源が虎や馬とは無関係であることは明らかで、単に音が似ているという偶然に過ぎません

日本語に似た外国語の名前は他にもあり、「エロマンガ島」や「スケベニンゲン」などは日本人にとって驚きの名前であるかもしれません。

まとめ

トラウマという言葉は、もともとギリシャ語に起源を持ち、その後ドイツ語を経由して日本語に取り入れられました。

興味深いのは、ドイツ語と日本語が全く異なる言語体系に属しながらも、意味や発音が似た単語がいくつか存在することです。

例えば、日本語でよく使われる「あっそう」はドイツ語で「Ach so(アッ ソー)」と言い、日本語の驚きを表す「なぬ!?」はドイツ語で「Nanu!?(ナヌ)」と表現されます。

これは単なる偶然の一致かもしれませんが、どこかドイツ語には日本語と共通する要素があるため、日本人に受け入れやすいのかもしれません。

このような共通性が、「虎馬」という言葉の背後にもあるのではないでしょうか。