妊娠初期に、多くの人が悩まされるつわり。嘔吐を繰り返したり、常に船酔いしているような吐き気に襲われたり…人によって症状の出方や強さはいろいろですが、中には強いつわり症状が「妊娠悪阻」と診断され、治療や入院をする人もいます。
妊娠悪阻とまでは行かないまでも、つわりがあまりにひどい時は対処の一つとして点滴を打つ場合も。特に水ですらも口にすると吐いてしまうような時、脱水が進行しているような時は、素早く点滴で水分補給・栄養補給をする必要があります。
でもいざ点滴を打つとなると、成分や副作用など、いろいろ気になるものですよね。そこで今回は、つわりの時に打つ点滴の成分、副作用、そしてお腹の赤ちゃんへの影響についてまとめました。
つわり軽減で打つ点滴に含まれている成分は?
つわり時に打つ点滴の最大の目的は、水分補給と栄養補給です。そのため、脱水症状を改善するための成分や、栄養となるビタミンなどが主な成分となります。また、嘔吐がひどい時には、吐き気止めを点滴に含める場合もあります。
ここでは、「水分補給・栄養補給目的の成分」「吐き気止め成分」の2つの種類に分けて、具体的にどのような成分が点滴に含まれているのかを紹介します。
水分補給・栄養補給目的の成分
つわり中に打つ点滴の主な成分は、脱水症状や栄養不足を補うための水分やビタミン類。ここで紹介するのは一部で、他にもビタミンCやアミノ酸などを含めることもあります。
体の水分を補うためのものです。他の成分を混合する際の“ベース”にもなります。
脱水状態を改善するブドウ糖。ブドウ糖と聞くと“エネルギー源”というイメージを抱きがちですが、体全体に水分を補給する役割を担います。
ビタミンB1は、欠乏すると「ウェルニッケ脳症」という眼球障害や意識障害を伴う脳症を発症する危険性があります。重度のつわりで栄養不足に陥って発症するケースがあることから、欠乏症を予防するために、点滴でビタミンB1を補うことがあります。
ビタミンB6は欠乏するとつわり症状が強くなると言われています。そのため、点滴でビタミンB6を補い、つわりの軽減を狙います。結果、吐き気や嘔吐が治まる人もいるようですが、体質によっては効果を感じないこともあるようです。
吐き気止め成分
嘔吐を繰り返しているような場合、「プリンペラン」という吐き気止めを点滴に含めることがあります。吐き気止めにはいくつか種類がありますが、妊娠中に使用されるのはほぼこの「プリンペラン」のみです。
つわり軽減で打つ点滴による副作用は?
体にダイレクトに成分を取り入れる点滴だけに、副作用も気になりますね。ここでは、「水分補給・栄養補給目的の成分」「吐き気止め成分」のそれぞれの副作用について紹介します。
水分補給・栄養補給目的の成分の副作用
ブドウ糖やビタミン類などには、副作用はないと考えていいでしょう。ちなみに、「点滴で栄養を入れると太るのでは…」と心配する人もいるようですが、点滴で急激に太ることはほぼないので安心してください。
吐き気止め成分の副作用
吐き気止めの「プリンペラン」は、医師の指示の元で使用されれば妊婦であっても問題ない成分。ただし、次のような副作用が出ることもあります。
- 腹痛、下痢
- めまい、眠気
- 震え、こわばりなど
他に特徴的な副作用としては、焦燥感やそわそわする感じ、じっとしていられない感じを受けることも。また、頻度はまれですがアナフィラキシーショックを起こす人もいるようです。
いずれにしても、違和感や異変を感じたらすぐに医師に相談するようにしてください。
つわり軽減で点滴を打った場合の胎児への影響は?
妊娠中の点滴で特に気になるのは、お腹の赤ちゃんへの影響です。「水分補給・栄養補給目的の成分」「吐き気止め成分」のそれぞれは、胎児にどのような影響があるのでしょうか。
水分補給・栄養補給目的の成分の胎児への影響
水分やビタミンなどの栄養は、お腹の赤ちゃんへの悪影響はないと考えられます。
点滴で水分や栄養を取り入れると、お腹の赤ちゃんが成長しすぎてしまうのでは…という心配をする人もいますが、点滴によって急激に赤ちゃんが大きくなりすぎることはないと言えるでしょう。
吐き気止め成分の胎児への影響
妊娠中の吐き気止めで使われる「プリンペラン」は、胎児への危険性も低い成分。奇形・流産などとの相関性はないとの研究結果が出ています。
一方で、お腹の赤ちゃんへの影響はゼロではなく、一部の胎児に奇形が見られたとの報告も。相反する結果なのでどう捉えていいのか戸惑う人もいると思いますが、どんなに安全性の高い薬でも、リスクはゼロではないということでしょう。
もちろん、医師の指示の元で投与されているのであれば基本的には問題はない成分なので、過剰に不安を覚える必要はありません。「プリンペラン」を使った場合のリスクと有益性を比べた結果、有益性が勝っているとの判断で使用されているからです。酷いつわりによる脱水症状や栄養不足を放置しておく方が危険と言えます。
どうしても使用に不安を感じる場合は、医師に確認・相談してみてください。
まとめ
つわりの吐き気が点滴によって軽減するかどうかは、ビタミンB6やプリンペランが体質的に合っているかどうかによります。劇的につわりが軽くなる人もいれば、残念ながらあまり変わらないという人も。
ただ、点滴によって吐き気や嘔吐は改善されずとも、少なくとも脱水によるふらつきやだるさは改善され、体がかなり楽になると感じる人は多いようです。
また体験者に聞くと、“点滴を打っている状況”が精神的に落ち着いた…家でじっとしているよりは医師や看護師が側にいてくれると安心する…など気持ちの面での作用もあるようです。点滴によって、辛いつわり時期を上手に乗り越えられるといいですね。