赤ちゃんがお腹に宿ると食事など栄養の摂り方に気を使うものです。なかでもよく言われるのが葉酸の摂取の必要性。
とくに妊娠初期では胎児の先天異常のリスクを減らす効果が期待できるので、生まれてくるわが子のためにも葉酸をすすんで摂りたくなる母心が芽生えますよね。
でも、葉酸は良いものと理解していても実際の食生活でどのようにして摂取するのが良いのか?わからないことも多いのが実情です。
そこでお腹の赤ちゃんのために役立つ、食事での効果的な葉酸の摂り方をまとめてみました。妊活中のママも必見ですよ!
葉酸がお腹の赤ちゃんに必要な理由
まずは葉酸の働きについて理解を深めておきましょう。葉酸はフォラシンという化学名を持つ、植物に多く含まれるビタミンです。食品に含まれる葉酸は体内に吸収されると腸内細菌によってテトラヒドロ葉酸という補酵素に生まれ変わり、消化や代謝を担う酵素の働きをサポートします。
主な役割は核酸合成や細胞増殖、DNAの合成といった重要なポジションに関わるもので、顕微鏡レベルの活躍とともに、造血作用や皮膚や粘膜を丈夫にする働きも持ちあわせています。つまり、葉酸は胎児の神経系の機能や身体を形成していくうえで、なくてはならない栄養素なのです。
ここ近年、葉酸不足がお腹の赤ちゃんに先天異常である神経管閉鎖障害をもたらすことが明らかになりましたが、大人では不足から心疾患や巨赤芽球性貧血に発展するリスクもわかっています。また、胎児の時期に最も必要な栄養=葉酸を摂取することで、安定した子宮内の環境が作られて流産の危険性も少なくなります。
まさに体の基盤作りにかかせない葉酸は、これからママになる女性にも生まれてくる赤ちゃんにも必要不可欠なビタミンなのです!
葉酸が不足すると体に何が起こる?
- 赤血球が正常に作られなくなる。
- 巨赤芽球性貧血に陥る。
- 食欲が低下する。
- 口内炎、不正出血が現れる。
- 脳神経の発育を妨げる。
- 神経管閉鎖障害のリスクが高まる。
- 流産のリスクが高まる。
葉酸不足が胎児に先天異常の影響を与える!?神経管閉鎖障害って何!?
これから赤ちゃんを産むママたちが願うのは、やはり赤ちゃんが健康に産まれてきてくれることではないでしょうか。そこで、心配になるのが先天異常です。
先天異常は、お腹にいる胎児の段階で発育が妨げられて現れるもので、生涯に渡って修復が不可能な身体への影響を引き起こします。
発育が妨げられる理由には母体を通して遺伝的なものや栄養状態を含むマイナス環境が胎児に届くことがあげられます。そして葉酸の不足も同じように先天異常を誘発するリスクを高めるのです。
とくに注意したいのが妊娠初期です。妊娠4週目から5週目は、身体機能にかかわる神経管が作られる時期になるので、葉酸の不足が脳の発達にも大きな影響を与えるため神経管閉鎖障害に至る原因を作ります。
神経管閉鎖障害は下半身を自由に動かせない、頭蓋骨や脳が形成されないなど脳やせき髄を閉鎖不全に追い込んで、二分脊椎、脳瘤、無脳症、脊髄瘤、半身不随などを発症させます。
神経管閉鎖障害が起こるのは葉酸不足だけに限定されません。以下も発症原因に繋がりますので、妊活中のママは特に気を付けましょう。
- 糖尿病を患っている。
- 肥満傾向の体型。
- てんかん薬を内服している。
- 妊娠中にレントゲン撮影などで放射線被ばくをした。
- アルコールを普段からたくさん飲む習慣がある。
- ビタミンAを許容量よりオーバーして摂取している。
- 妊娠の初期段階で高熱発作があった人。
こうしてみていくと葉酸は体や神経系、血液を作るのにいかに重要な存在であるかがわかりますね。ヨーロッパやアメリカなどでも胎児の先天異常を予防するために葉酸の摂取を呼び掛けている背景からも、必要量はきちんと摂取するように心がけましょう。
効率よく葉酸を摂取するにはどうしたらいい?
葉酸は妊娠時に摂取を心がけたい栄養素だけに、これまで普段の食事でも気に留めなかった方も多いのではないでしょうか?
どんな食材に含まれるのかもわからない状況を打破するために、ひとまず必要摂取量や多く含まれる食品を知っておきましょう。
葉酸の1日あたりの必要摂取量の真実!
葉酸は胎児の成長期に多量に必要になります。そのため、成人女性1日あたりの摂取基準量に対して妊婦さんでは+240μgの付加量を加えることが推奨されています。
つまり妊活中あるいは妊娠の可能性がある場合は胎児の神経管閉鎖障害の予防のためにも、1日あたり400μg以上の葉酸を摂取することが理想的になります。
18歳~29歳 → 240μg(耐容上限量 900μg)
30歳~49歳 → 240μg(耐容上限量1000μg)
※妊娠中は上記に付加量+240μgになります。
しかし、ここで注意したいことも生じます。妊婦では1日あたり400μg以上の葉酸の摂取が推奨されていますが、実際に食品で換算するとかなりの量になるからです。
例えば焼き海苔だと全形で8枚、ほうれん草では約一束分が必要になります。また野菜からの摂取の場合加熱すると葉酸量が生の状態に比べると半減するのです。
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、食事から摂取する葉酸は腸内細菌を経由してから本来の機能が発揮されることも考慮して、食事からの葉酸+サプリメントなどの栄養補助食品からの葉酸の摂取を勧めています。
食事だけでは効率よく葉酸を摂取できない!?
葉酸が胎児の先天異常=神経管閉鎖障害を予防するという見解は、サプリメントによる疫学研究の結果わかったものです。そのため色々な情報サイトを見ていくと食事からの葉酸摂取は効率がよくないと記されているものが大半で、サプリメントに完全に頼る方向が妥当としています。
一方で、食事からの葉酸摂取で神経管閉鎖障害のリスクが低減できた例も報告されているので、当事者のママ側にとっては混乱するところです。サプリメントは薬ではないのですが、飲むのに抵抗があると話すママも多く見えます。
下記で食品における葉酸の上手な摂り方を紹介していますので是非参考にしてみてください。また、総合的に見ると妊娠初期での葉酸摂取に関しては、食事での不足分をサプリで補う形が良いと思います。
ただし、サプリメントや栄養補助食品は耐容上限量1000μgを超えやすいので摂取には十分気をつけてくださいね。
過剰摂取には気を付けて!
どんな栄養素にもいえることですが必要量を超えると体内で行き場がなくなり、過剰症を誘発します。上記の耐容上限量を超えないように適切量を摂取するようにしましょう。
- じんましん
- 発熱
- 葉酸過敏症
- 亜鉛の体内吸収を阻害する
妊娠中におすすめの葉酸を多く含む食品
あさつき、アスパラガス、焼き海苔、枝豆、ブロッコリー、モロヘイヤ、バナナ、アボカド、ほうれんそう、春菊、オクラ、納豆、きな粉、わかめ、いちご、エリンギ、かぼちゃ、えのきだけ、オレンジ、キウィフルーツ、干ししいたけ、マンゴー、抹茶、ごま
イクラ、牡蠣、ほたて、ゆでたまご、うに、たたみいわし、たらこ、芝エビ、カマンベールチーズ
でも、残念なことにレバーや鰻の肝は胎児奇形や水頭症のリスクを高めるビタミンAが豊富なため妊娠中の摂取には向いていません。上記にあげた食品などで対応して、できるかぎりレバーや鰻の肝を食べるのは避けておきましょう。
葉酸を上手に摂りいれる5つのポイント
では、葉酸の摂取量の目安と含まれる食品を知ったところで、効率よく葉酸を摂取するためのポイントをチェックしていきましょう。
食品で摂る葉酸は性質を理解して工夫して食べる!
葉酸の多い食品であっても、食べ方によって栄養素が損なわれるので注意が必要です。葉酸は熱に弱く水に溶けやすい性質を持つので、植物性のものはできるかぎりサラダなどにして生の状態で摂取するのが理想的です。
でも、生のお野菜はかさばるので量を多く食べられません。そんなときは腸内細菌を活性させる工夫をして、加熱した食品をいただきましょう。
葉酸は腸内細菌によって補酵素に変わる性質も持つので、善玉菌の活性に一役買う納豆などの発酵食品を一緒に食べると、加熱した食品でも補酵素に切り替わりやすくなり葉酸を効率よく摂取できます。
味噌やキムチなどもよいですが、納豆は妊娠中に不足しがちなビタミンKが摂取できるうえにタンパク質の吸収を高めるのでおすすめです!
ビタミンB12も一緒に摂る!
葉酸は単体よりも、同じ補酵素としての働きを持つビタミン12を一緒に摂ることで更に有用な働きが期待できます。
造血機能や細胞のアミノ酸代謝をフォローするので、血液そのものがサラサラの健康な状態が維持されて皮膚や粘膜が増強されます。細胞の生まれ変わりもスムーズになるので、美容のためにも意識して葉酸とビタミンB12をあわせて摂るようにしてみましょう。
※妊娠中のビタミンB12の1日あたりの摂取目安量は2.8μgになります。
時間栄養学を活用する!
時間栄養学とは食生活のリズムを整えることによって、摂取した栄養素を効率よく体内に吸収させる方法です。食べ物は酵素の力によって消化されて、必要となる体の各部位に運ばれます。
しかし不規則な時間軸で食生活を送っていると栄養を受け入れる態勢が整わず、せっかくの栄養が結果的に脂肪になるなど有効に使われなくなります。
とくに朝食抜きは最も体に負担をかけやすく、肥満体につながりやすい血糖値の急上昇をまねくので注意が必要です。食生活のリズムは本来、規則正しい食事時間のなかで消化・吸収・代謝がスムーズに行われるべく酵素が活性するメカニズムを持ちます。
摂取した葉酸をきちんとお腹の赤ちゃんに届けるためにも、1日3食をできるだけ決まった時間でいただくようにしましょう。
便秘をなくして腸内環境を整える!
葉酸はそのままの形では栄養分としてきちんと働きません。摂り込まれるといったん腸まで運ばれて、腸内細菌である善玉菌の合成によって吸収される過程を経て補酵素になり働きを発揮するのです。
そこで重要になるのが腸内環境です。お通じが溜まった状態になっていると、悪玉菌の温床になって葉酸が補酵素に変化できません。いつも快便の腸内環境を心がけて、善玉菌を活性させましょう。
妊娠をすると赤ちゃんを守るために子宮へ少しでも振動が伝わらないように、腸の蠕動運動が低下します。普段便秘に困らない人も妊娠中は頑固な便秘に陥りやすいので、水分をこまめにとるなどしてお通じを促しましょう。
食品添加物は摂らない!
忙しい主婦には強い味方の加工食品ですが、妊娠中には最も避けたい類に入る食べ物になります。パッケージの表示を見ると一目瞭然ですが、保存料や甘味料、着色料など品質を保持するために様々な食品添加物が使われています。
食品添加物は栄養素の吸収を阻害するので、とくに葉酸など特別な栄養が必要な妊娠初期では食べないようにするのが懸命です。少し手間ですが、ホームフリージングなどを利用して手作りの保存食材で対応しましょう。
まとめ
妊娠初期はつわりなどの症状が出るので食べるものが限定されがちです。
食べるのが難しい場合には葉酸サプリを飲む手段もありますが、化学合成されたものなのですべてをサプリまかせにするのはおすすめできません。サプリはあくまでも補助と考えて、葉酸が含まれる食品の中で食べやすいものを探してみましょう。
また、胎児の発育には葉酸以外にもカルシウム、鉄、ビタミンKの栄養素も積極的にとる必要があります。妊娠期の段階ごとに必要な栄養素に気を付けながら、トータルで栄養バランスが豊かになるようにメニューをたてていきましょう。